【140話】再び一緒に
2月のとある日。
聖雷「ねぇ、ホントにいっぱい食べていいの?」
檸檬「うん。遠慮しないで。」
街の中にあるファミレス。
聖雷と檸檬は食事をしていた。
聖雷「いただきまーす!!」
聖雷は、カレーやパスタなどをたくさん食べた。
檸檬「お腹壊さないでね。」
聖雷「うん!」
聖雷が食べている中、檸檬はゆっくりと食事をしていた。
檸檬「本当に、よく食べるね…。」
聖雷「お腹空いてたんだ。」
檸檬「ちゃんと食べてないの?」
聖雷「うんうん、宿で出る食事は木の実とかだから、あまりパスタとかは食べないんだ。新鮮だと思って。」
檸檬「そういうことね。」
聖雷「そうだね。」
檸檬「そうなんだね。」
しばらく経つと、聖雷が食べ終わった。
聖雷「うわー、お腹こんなにふくれてる。」
檸檬「妊婦さんみたいになってるね。」
聖雷「兄ちゃんのおかげだよ。久しぶりにパスタとかカレーを食べたよ。」
聖雷がお腹を擦りながら満足していた。
檸檬「…聖雷。」
聖雷「なに。」
檸檬「来年から…一緒に暮らさないか。」
聖雷「えっ。」
聖雷は、固まった。
檸檬「僕が研究所で働いてからもう2年になるから、だんだん収入が安定してきてね。…聖雷と一緒に暮らしても今なら大丈夫だと思うんだ。」
聖雷「…。」
檸檬「ほら、前に言ってただろう?一緒に暮らしたいって。あの時に叶えられなかったから。」
聖雷「…。」
檸檬「…ダメかな。」
聖雷「僕、兄ちゃんと一緒に暮らしたい。…でも、シユウと離れたくない。」
檸檬「シユウちゃん?」
聖雷「うん。」
檸檬「シユウちゃんも、一緒に連れてくることはできないの?」
聖雷「……うん。」
檸檬「?」
聖雷「3月で…シユウも僕も離れ離れになるから。」
聖雷は、下を向いて考えていた。
聖雷「どっちみち、宿でももう暮らせないんだ。」
檸檬「そうなの?」
聖雷「兄ちゃんにも、この前話したっけ。…宿が無くなるって。」
檸檬「…なんとなくは。」
聖雷「シユウが森を守る神様になるから、一緒にはいられないんだ。」
檸檬「でも、聖雷はその後どうやって生きていくんだ。」
聖雷「分からない。」
檸檬「…。」
聖雷は黙ったあと、少し間を空けてまた話した。
聖雷「…僕、まだ兄ちゃんと暮らさない。」
檸檬「……。」
聖雷「シユウと、一緒にいたいから。…ごめん。」
*
夕方。
マーリン「はい。」
胡蝶「ありがとう。」
マーリンは胡蝶にラップに包んだ木の実を渡した。
緋月「俺っちも食べたーい。」
マーリン「緋月ちゃんは夜ご飯でね。」
緋月「胡蝶、ちょっとちょうだいよー。」
胡蝶「あげねぇぞ。草でも食ってろ。」
緋月「ぶー。ひどいなぁ。」
胡蝶「当たり前だろう。」
マーリン「今日も頑張ってね。」
胡蝶「あぁ。行ってきます。」
胡蝶は、カバンを背負うと宿を出ていった。
緋月「さーて、胡蝶も行っちゃったし、部屋で遊ぼうかなぁ。」
マーリン「分かったわ。ご飯が出来たら呼ぶからね。」
緋月「はーい。」
緋月が部屋へ行こくと、入れ違いで聖雷が帰ってきた。
マーリン「あら、おかえりなさい。」
聖雷「……ただいま。」
聖雷がリビングへ入ると、寝ていたシユウも寄ってきた。
シユウ「にゃ。」
聖雷「…。」
聖雷はシユウを抱き上げた。
聖雷「シユウ…。」
シユウ「?」
マーリン「…何かあったのね。」
聖雷「…。」
マーリン「お兄さんと…喧嘩した?」
聖雷「いや。」
マーリン「じゃあ、迷っていることがあるのね。…座って。」
マーリンは、リビングのテーブルの周りに聖雷を座らせた。
聖雷「…。」
マーリン「何があったの。」
聖雷「……あのね。」
聖雷は檸檬とあったことを話した。
聖雷「兄ちゃんと暮らしたいけど、僕はシユウと一緒に暮らしたいんだ。」
マーリン「そういうことね。」
聖雷「だから、兄ちゃんと一緒に暮らすのをやめたんだ。」
マーリン「…でも、あなたは3月からシユウなしで生きていくのよ。兄さんの好意に甘えなさい。」
聖雷「でも。」
シユウは、膝の上でずっと聖雷を見ていた。
マーリン「シユウは、宿を存続できるだけの能力は無いけれども、だからといって死ぬ訳では無いわ。森の神として、ずっとそこに滞在しているだけよ。」
聖雷「そしたら、僕はシユウと一緒に森で暮らす。」
マーリン「それは宿があったからできた話よ。水道もガスもないし、万が一のことがあっても誰も助けられない。」
聖雷「それでも、シユウといたいんだ。」
マーリン「人間には、難しい話よ。…森で本当に生活できるのは、動物である私たちのみよ。」
聖雷「影楼くんはどうなるの。」
マーリン「あの子は、森に小屋があるけど、ちゃんと街に出て働いているの。稼いでいるから、何かあっても何とかできるの。」
マーリンと聖雷が言い合いをしている。
聖雷「もう…。」
マーリン「…あなたは、お兄さんと暮らすべきよ。」
すると、シユウが膝元を離れてテーブルの上に乗った。
聖雷「?」
シユウ「…聖雷。」
マーリン「シユウ。」
シユウ「………我は、……森の神に…なったら、一緒に…暮らせない…。」
聖雷「え。」
シユウ「……我の…願いは…聖雷が幸せになることだ…。」
聖雷「…。」
シユウ「だから…兄さんと…一緒に暮らしてくれ…。」
シユウは、一通り喋るとやめた。
聖雷「……。」
マーリン「シユウの言う通りよ。」
聖雷「…。」
マーリン「あなたは、これから森を離れて生活するの。だから、兄さんと暮らしなさい。」
聖雷は、首を縦に振った。
*
後日。
聖雷「……。」
電話をかける聖雷。そして、相手が電話に出た。
檸檬《もしもし。》
聖雷「兄ちゃん。」
檸檬《聖雷か。どうしたの?》
聖雷「お仕事中にごめんね。」
檸檬《大丈夫。休憩中だからね。》
聖雷「僕、決めたよ。兄ちゃんと一緒に暮らす。」
檸檬《…無理してない?》
聖雷「うん。宿のメンバーと話し合って決めたんだ。」
檸檬《分かった。ありがとう。3月からでいいかな。》
聖雷「うん!」
聖雷は、檸檬と一緒に暮らすことを決めた。




