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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【138話】寮生活への第一歩

 とある日の朝。


緋月「…2人とも、朝から本当にありがとうね。」

胡蝶「平気だ。」

聖雷「…この部屋、これからなにもなくなるんだね。なんだか寂しくなるね。」

緋月「大丈夫だよ。宿にはちゃんと遊びに行くから。」


 3人は、ダンボールが積んである緋月の部屋を見て言った。


*



 昨日の夜。

 廊下で電話をする緋月。


緋月「うん、…うん…分かった。…ありがとう。」


 緋月は電話を切った。

 リビングへ戻ると、3人が待ってくれていた。


聖雷「…どうだった。」

緋月「うん。大丈夫だって。」

胡蝶「許可はとれたか。」

緋月「うん。少しだけ、もめたけどね。」


 電話の相手は、母だった。

 緋月は、高校の近くにある寮への引っ越しをしようとしていたのだ。


マーリン「お金のことは大丈夫?」

緋月「うん、最初はお母さんが払ってくれるんだ。…あとは高校生になったら俺っちがバイトで稼ぐんだ。」

マーリン「そうね。」

聖雷「ひっきー、バイトするのかー。」

緋月「何のバイトするのかはまだ未定だよ。」

聖雷「僕は、自然を守るバイトをしたいな。」

胡蝶「あるのか?それ。」


 3人は笑いあった。


聖雷「部屋はもう片したの?」

緋月「ばっちし。ダンボールだけだよ。」

聖雷「じゃあ、明日運びに行けるね。」

胡蝶「かなりあるのか?」

緋月「そんなにないよ。3人で十分に運べるくらい。」


 緋月が進学する氷室高校では、寮を借りられる制度があった。

 高校の近くにある寮には、2月から住むことができるのだった。


緋月「引っ越し業者さんは、10時におうちのを引き取りにくるみたい。」

聖雷「それに合わせて宿から出ればいい?」

緋月「そうだね。」

マーリン「3人とも、引っ越し業者さんに迷惑かけないようにね。」

3人「うん!」


*



 電車に乗る3人。

 それぞれダンボールを持っていた。


胡蝶「…こんなに原始的だとは思わなかった。」

緋月「仕方ないでしょー!」

聖雷「ダンボール、3つだけでよかった…。」

緋月「ぎゅうぎゅうに詰めたもんね。」


 電車ではすぐの距離に高校と寮の最寄駅があった。

 胡蝶は電車のモニターを見た。


胡蝶「…9時半か。まあまあな時間だな。」

緋月「寮についたらすぐ業者さん来るね。」

聖雷「ちなみに、寮ってどんな部屋なの?」

緋月「あまり広くはないよ。風呂とトイレは共同だし、キッチンとか電子レンジはフロアごとにあるんだ。ベッドとか、小さい冷蔵庫と水道は部屋にあるよ。」

聖雷「へぇ、僕も住みたい!」

緋月「みんなで遊びに来てもいいよ。」


 そうこうしているうちに、駅についた。

 

 降りて、改札を潜ると、緋月を先頭に寮まで行った。


*



緋月「…ただいまー。」


 寮の緋月の部屋。

 

胡蝶「おぉ、ものが無いな。」

緋月「まだ1回しか来てないからね。」

聖雷「ここに置くね。」


 ついに3人は部屋までついた。まだ引っ越し業者は来ていなかった。

 荷物を下した。


聖雷「こんな感じなんだー。」

胡蝶「意外と快適そうだな。」

緋月「そうだね。狭いけど。一人なら十分さ。」

聖雷「クロゼットもちゃんとあるね。」

緋月「最低限の収納はできるよ。ものが多いと収まりきらないけど。」


 部屋は2部屋ほどで、あまり広くなかった。しかし、荷物がないため、広く感じられた。

 

緋月「ここから、また家具が来て狭くなるんだ。引越し業者さんが来る前に、楽しんでおこう。」

 

 緋月は、床に寝そべった。

 

胡蝶「はぁ。子供みたいだな。」

聖雷「えへへ、まだ僕たちは子供だよ。」

胡蝶「やれやれ。」

 

 2人も寝そべった。

 

緋月「新しい部屋って気持ちいいね。」

聖雷「そうだね。…ひっきーが宿に来た時も、こんな感じだったよね。」

胡蝶「そうだな。」

 

 3人は、緋月が宿に住み始める日を思い出した。

 

緋月「…えっへへ。懐かしいなぁ。」

胡蝶「あの頃は俺らも仲が悪かったな。…今も良くは無いけど。」

緋月「そうだね。」

聖雷「認めちゃったんだ。」

緋月「…宿に初めて来た時、聖雷っちたちが初めての友達で、すごく嬉しかったんだよ。」

聖雷「そうなんだ。…胡蝶は友達じゃないの?」

緋月「胡蝶は幼なじみって感じかな。」

胡蝶「そうか。」

緋月「くだらないことも笑い合える友達と一緒に暮らせるって幸せなことなんだね。」

聖雷「そうだね。」

 

 一息ついていて、思い出に浸っていると、外にトラックが止まる音がした。


聖雷「来たんじゃない?」


 窓からのぞいてみると、引っ越し業者が来ていた。


緋月「今行きまーす!」


 3人は玄関へ向かった。


*



 引っ越し業者が緋月の家の荷物を運んでくれたため、すぐに部屋に緋月のものが届いた。

 部屋はダンボールで埋まっているので、狭く感じた。


聖雷「これで全部?」

緋月「うん!」

胡蝶「さて、どのダンボールから片付けるか。」

緋月「うーん。」

胡蝶「大きい家具は、これか?」


 胡蝶は部屋にある一番大きいダンボールを指した。


緋月「多分、それは机。」


 ダンボールを開けると、折り畳み式の机が入っていた。


聖雷「幅も大丈夫そうだね。」

緋月「まず、これを組み立てて小物を置いた方がいいね。」

胡蝶「了解。」


 3人は、緋月の指示通り、ダンボールを次々に開封し始めた。

 机、卓上ライト、蓋つきケースなどをおき、その中に小物を詰めていく。

 学生ということもあって、教科書や本、文房具が多かった。


 作業は5時間にも及んだ。


*



 気が付けば、夕方になっていた。


聖雷「…とりあえず。」

緋月「できたーーー!」


 部屋にあったダンボールは1つもなくなっていた。

 家具や小物は並べられ、最低限生活できるような部屋になっていた。


緋月「聖雷っち、胡蝶。ありがとう。」

胡蝶「おう。」

聖雷「お互い様だよ。」


 緋月は部屋を一周した。


緋月「うん、問題ないね。」

胡蝶「これで、今日は寝られるか?」

緋月「うん!」


 3人は床にあるクッションに座り込んだ。


胡蝶「…一日で、こんな量の荷物を片したのか…疲れたな。」

聖雷「そうだね。結構頑張ったね。」

緋月「2人のおかげだよ。」


 綺麗になった部屋に満足した3人。


聖雷「…よし、今日はもう帰ろうかな。」

緋月「もう帰っちゃうの?」

胡蝶「あぁ。」

緋月「…そっか。一緒の家じゃないんだね。」

胡蝶「そうだな。」

緋月「…なんか、寂しいね。」


 2人は立ち上がり、帰ろうと準備した。


胡蝶「じゃあな。」

聖雷「ちゃんと食べてね。」

緋月「うん。」

聖雷「また来るよ。」

緋月「…うん。」


 胡蝶たちは、寮を出て行った。

 手を振って送る緋月。

 見えなくなるまで送った後。


緋月「…。」


 誰もいない部屋で、一人。

 いつもよりも寂しく感じた。


緋月「…一人で暮らしていくって、こんなにも寂しいんだ…。」


 宿で自分の部屋に一人でいるのと、寮で一人いるのとは違った。

 緋月は、寂しさを紛らわすために、寝ることにした。

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