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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【135話】菱湖での仕事

 

*



 数十分後。


影楼「檸檬さん。できました。」

檸檬「もう?」


 檸檬が書類を確認した。すべて正確に打ってあった。


檸檬「…完璧だよ。すごい。」

影楼「そうですか?」

檸檬「やっぱり、理事長が言ってた通り、仕事が早くて正確だ。」

影楼「え。」

檸檬「影楼さん、自分ではあまり分かっていないかもしれないけど、すごい才能を持っているよ。人が驚くような。」

影楼「…そ、そうなんですか。」

檸檬「うん!」


 檸檬は、できた書類を机の上に置くと、軽くのびをした。

 

檸檬「…じゃあ、きりもいいし…理事長が戻って来るまで一旦お昼休憩にしようか。」

影楼「分かりました。」


 ローズが戻るまで休憩になった影楼。

 

檸檬「…ねぇ、影楼さん。」

影楼「?」

檸檬「…聖雷、元気にしてる?」

影楼「はい。」

檸檬「ちゃんと食べてるかな。」


 檸檬とプライベートの会話になった。


影楼「いつも元気に宿の手伝いをしてます。」

マリー「レモンくん、聖雷くんのことが心配で心配で仕方ないもんね。」

檸檬「ちょっと、マリー。」

マリー「影楼くんは、聖雷くんと一緒に暮らしてるの?」

影楼「いや…友達ってところです。」

檸檬「聖雷にも大切な友達ができたんだ…。嬉しいよ。」

マリー「やっぱ、あんたはお兄さんね。」


 他愛もない話をしていると、ローズが帰ってきた。


ローズ「あら…終わったの?」

檸檬「あ、理事長。」

ローズ「はい?」


 檸檬が影楼の打った土壌調査の表を見せた。


ローズ「…うん、よくできてるわ。」

檸檬「ですよね。作業も早かったし、正確だ。かなりのスキルを持っていますよ。」

影楼「ありがとうございます。」

ローズ「打ち込みの方は問題なさそうね。」

檸檬「…あ、そういえば、理事長。白田研究所の件は、どうなりましたか。」

ローズ「あ、そう。…そのことも話そうと思ったんだ。」


 ローズは、影楼を含めた研究員を近くに集めた

 すると、1枚の紙を差し出した。

 表紙には、「菱湖の水質汚染について」と書かれていた。


影楼「…?」

ローズ「白田研究所から、さっき依頼が届いたわ。」

檸檬「依頼内容はなんですか?」

ローズ「菱湖の水質調査。土と水を提出よ。」

マリー「期限は。」

ローズ「3日以内。できるわよね。」

2人「はい!」


 マリーと檸檬は影楼を見た。


マリー「…ということは…。」

影楼「え…?」

檸檬「影楼さんも!」

ローズ「もちろんよ。湖も近いし、今日中にできれば明日には調査結果を提出できるわ。」

影楼「菱…湖?」

マリー「車で数分でつくよ。比較的大きい湖かもね。…いったことないの?」

影楼「はい。」

マリー「じゃあ、結構勉強になるかもね。」

檸檬「いい検体ができそうですね!」

ローズ「えぇ。…準備なさい。あと20分で行くわよ。」

2人「はい!」

影楼「は、はい。」


 3人は準備をすると、研究所を出た。


*



 数分ほど車で移動すると、菱湖についた。

 静かな湖のほとりには、小さな小屋が立っていた。

 周りは自然公園で、ランニングをする人たちや、休憩所になっていた。


影楼「…すっげぇ…。」

ローズ「来たことなかった?」

影楼「…はい。」

ローズ「うちの研究所では、湖とか森とかで調査をするのよ。…近くにある自然はすべて調査したわ。」

影楼「ここ、意外と近くにあるのに来たことなかったです。」

ローズ「うふふ、いい機会になってよかったわ。」


 すると、マリーがやってきた。


マリー「理事長、影楼くん。許可下りました。」

ローズ「わかった。じゃあ、行くわよ。」

影楼「はい。」


 湖に浮かぶ一隻の小船。檸檬もいた。

 そこへ向かって3人は歩いた。


影楼「これから、あれに乗るんですか。」

マリー「うん。小船に乗って、その遠沈管に詰めるの。」

ローズ「酔わないから平気よ。そこまで揺れないわ。」


 影楼は、行きからずっと調査用のバッグを持っていた。

 中には菱湖でとった水などを全て入れられるようになっているらしい。


檸檬「こっち~!」

マリー「はいはーい!」


 檸檬にのいる小船に乗った。

 

マリー「じゃあ、よろしくね~。」

影楼「…乗らないんですか?」

ローズ「マリーは浅瀬の調査よ。」

檸檬「僕は機械を使って温度とか生物を調べるんだ。」


 マリー以外の3人は小船に乗ると、オールで漕ぎ始めた。


マリー「がんばってねー!」


 湖の真ん中の方まで来ると、船を漕ぐのを止めた。

 

檸檬「ここらへんで、調査するよ。…道具を出して。」

影楼「はい。」

 

 影楼は、バッグの中から色々な道具を取り出した。


檸檬「そしたら、この遠沈管にひもを付けて…。」


 檸檬は影楼にやり方を教えた。


ローズ「いいわ、そんな感じよ。」

檸檬「それで、ひもの先に重りを付けて…水の中に落として。」

影楼「はい。」


 重りのついた遠沈管は湖の底に沈んでいった。


影楼「…これでいいんですか?」

檸檬「うん。あと、別の遠沈管で水をすくってね。」

影楼「分かりました。」


 検体の採取が終わると、すぐにまた船を漕いで陸を目指した。

 檸檬はその横で機械に検体を通していた。


ローズ「仕事はもう終わりよ。」

影楼「そうですか。」

ローズ「もっとやりたかった?」

影楼「いや…。でも、楽しかったです。」

檸檬「影楼さん、正直でいいね。」

ローズ「最初は少し怖がっていたのにね。」

檸檬「い、言わないでくださいよ~。」

影楼「そうなんですか?」

ローズ「まぁ…大人っぽい子だからね。影楼くんは。」

檸檬「…うん。ちょっと怖いけど。」

影楼「えぇ…。」


 陸について、小船を降りた。

 それに気が付くと、マリーが迎えてくれた。


マリー「おかえりなさーい。」

影楼「検体、できました。」

マリー「ご苦労様!」

檸檬「かなり水が澄んでたよ。」

マリー「最近、あんま雨が降ってないからね。」


 檸檬は、機械に通した後の検水と検土を渡した。


ローズ「これで、白田に送れば大丈夫ね。」

檸檬「はい!」

マリー「ということは…影楼くんの仕事は終了ね。」

ローズ「わざわざ、ありがとね。」

影楼「いえ。」

ローズ「とりあえず、研究所に戻りましょうか。」


 4人は車に乗った。



*



 研究所の研究室。


檸檬「ふぅ、ただいま~。」


 荷物を下すと、檸檬は箱をローズに差し出した。


檸檬「理事長、これ。白田研究所に今日出しますね。」

ローズ「よろしくね。」


 仕事が一段落つくと、3人の研究員たちは影楼の方を向いた。


ローズ「…影楼くん。どうだったかな。」

影楼「楽しかったですよ。普段できない経験ができて、環境についても勉強できて。」

檸檬「良かった。」

ローズ「あなたが、森で暮らしているっていうから、自然や環境についてのことを本格的に教えてあげたかったのよ。」

影楼「…そうなんですか。」

マリー「うん。…理事長、もう、本当のこと言っちゃいましょうよ。」

ローズ「…そうね。」


 ローズは、黙ったまま少し影楼を見つめた。


ローズ「……影楼くん。単刀直入に言うわ。…あなた、水無月環境研究所の研究員にならない?」

影楼「え。」

檸檬「いきなりだから、まだ答えは出せないと思うけど。…君は、間違いなく研究員に向いている。僕がそう誓うよ。」

マリー「そうね。…書類とか、仕事の面だけじゃなくても…色々やりやすかったわ。」

ローズ「あなたのような、器用で慎重な人に、研究員になってもらいたいのよ。」

影楼「俺でも、いいんですか。」

ローズ「こっちは大歓迎よ。でも、あなたはまだ10代よ。たくさんの未来の決定権はある。これから大人になって、色んな人に職を紹介されて、自分に合う仕事を探していくのよ。…だから、決して強制はしないわ。」

影楼「そうですか…。」

ローズ「ただ、我々も、ここまで研究員としての活躍が期待できる人は初めてなの。やっと見つけたのが影楼くんなのよ。」


 すると、檸檬は自分の机の引き出しの中から資料を取り出した。


檸檬「これ。」


 檸檬は資料を影楼に渡した。


檸檬「これ、結構前につくった、環境研究所のパンフレット。」

影楼「あ、ありがとうございます。」

檸檬「うちの研究所が書いてある内容は少しだけど、よかったらみてね。」

マリー「基本的に、ゆるーくこんな感じでやってるかな。3人しかいないけど。」

檸檬「仲の良さは自信あるよ。」

マリー「たまに酔いつぶれて暴れる人いるけど。」

ローズ「マリー…。」

マリー「ごめんなさーい。」

 

 ローズは咳払いをした。

 

ローズ「…影楼くん、よーく考えてから来るのよ。」

影楼「…わかりました。今日は一日、ありがとうございました。」

 

 影楼は、水無月環境研究所の研究員になることを勧められた。

 ゆっくり考えて、答えを出すことになった。

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