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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【132話】あと3ヶ月

 お参りが終わると、すぐ横にある絵馬のコーナーで休憩をした。


小夜「絵馬か。」

緋月「有名人が書いたのとかないかな?」

影楼「ねぇだろ。」

胡蝶「この神社は有名なところではないからな。」


 おみくじを見つける影楼。


影楼「お。」

聖雷「おみくじ?」


 次々におみくじに興味を示す。


緋月「へぇ。」

小夜「やってみれば?」

影楼「俺が?」

小夜「うん。試しに、さ。」

影楼「う…。」


 影楼が小夜に押されて仕方なくやってみることに。


小夜「ほら。」

影楼「…やってみるぞ。」


 影楼がお金を払い、おみくじを引いた。


影楼「(開けて)…大吉。」

緋月「いきなり大吉!?」

胡蝶「運がいいな。」

影楼「どうだ?お前らもやってみろよ。」


 満足そうな影楼。続いて4人も引いてみる。


小夜「(開けて)…凶…。」

緋月「小夜っち、凶!?」

胡蝶「俺も凶だった。」

影楼「はっはっはっは、だせぇ。」

緋月「あっはは、2人ともかわいい!」

胡蝶「刻むぞ。」


 わちゃわちゃする4人。

 聖雷も恐る恐るおみくじを開けた。


聖雷「(開けて)僕は、吉だった!…。」

緋月「やったね!」

胡蝶「まずまずだな。」

影楼「凶よりかはいいかと。」

小夜「影楼。」


 みんなでおみくじを見せ合う。

 そんな中、緋月はおみくじを隠していた。


小夜「ひっきーは?」

緋月「えっへへ。」

影楼「吉か?」

胡蝶「早く、見せろ。」


 緋月はおみくじを自慢するように開けて見せた。


小夜「…って、大凶じゃないか!」

緋月「そうなんだよ…ね…。」


 分かりやすく落ち込む緋月。

 慰める聖雷。


緋月「受験落ちたらどうしよう…。」

小夜「…大丈夫だよ。」

胡蝶「貴様…俺たちをバカにしておいて。」

小夜「まあ、おちつこう。」

影楼「結局は、努力だろ?」

緋月「…。」

影楼「あんなにバカみたいに勉強頑張ってたんだから、受かるだろ。」

緋月「…うう…ありがと…。」

影楼「まあ、大凶だったらさっきお参りしたことも叶わないかもしんねぇな。」


 影楼が水を差す。


緋月「…。」

聖雷「ねぇ、みんなはさっき、なんてお願いしたの?」


 聖雷の言葉に一瞬で空気が変わる。


小夜「俺は…受験受かりますようにってお願いした。」

聖雷「いいね。」

緋月「そうだね、それが一番だね!」

胡蝶「俺は…剣道で、強くなりたいって。」

聖雷「胡蝶、かわいいね。一生懸命で。」

胡蝶「…。」

聖雷「影楼くんは?」

影楼「俺は…。」


 影楼は言いづらそうにしていた。


緋月「あれれ?」

聖雷「どうしたの?」

影楼「…いや、…お願いして、なかった…。」

緋月「えへへ。かげろっち、忘れちゃったんだね。」

影楼「…あぁ。」

胡蝶「ふっ。」


 胡蝶が全てを察したように鼻で笑った。


影楼「…胡蝶、てめぇ…。」

聖雷「僕は、森がずっとなくなりませんようにってお願いした。」

小夜「…。」


 聖雷の願いごとで、一斉に宿のことを思い出す。


緋月「…。」

胡蝶「…ついに、新年が明けちゃったな。」

小夜「…そうだね。」

聖雷「…。」

緋月「あと、3か月で。」

聖雷「宿が、なくなる。」


 5人の間に沈黙が流れる。


緋月「…もう、3か月しかないのか…。」

影楼「仕方ねぇだろ。」

緋月「うん。でも、寂しいな。」

聖雷「それは、皆そうだよ…。マーリンさんが魔法を失って、シユウが山を守って…。僕たちは、それぞれ生きて行かないといけないんだ。」

胡蝶「それぞれ、か…。」

小夜「宿がなくなるのは3月だよな。マーリンさんが魔法を失うのは。」

胡蝶「同じ、3月だ…。」

聖雷「…。」


 聖雷は下を向いた。


緋月「シユウと、マーリンさんとお別れか…。」

聖雷「でも、2人ともちゃんと会えるよ。森に行けば、毎日会えるもん。」

胡蝶「聖雷。」


 聖雷は黙った。


胡蝶「もうすぐ、現実を突きつけられる。逃げられるのは今のうちだ。」

聖雷「わかってる。でも…。」

小夜「聖雷にとって、2人の家族を失うのはかなり大きいことだ。」

聖雷「…。」


 聖雷はまた黙ってしまった。


緋月「みんな、3月に宿がなくなったら離れ離れになるんだ。だったら、今を楽しむしかない。」


 すると、緋月はあることを思いついた。

 

緋月「…みんな。いいこと考えた。」

聖雷「?」

緋月「3月に、マーリンさんが魔法を使えなくなる前に、何かプレゼントを用意しようよ。」

胡蝶「サプライズか?」

緋月「なんでもいいんだ。なにか、恩返し出来ないかな。」

聖雷「うーん…。」

小夜「…マーリンさんにとって、1番のプレゼントってなんだろう。」

 

 5人は考えた。

 

影楼「何か物をあげるより、気持ちの方が嬉しいかもな。」

胡蝶「そうかもしれないな。」

緋月「どうやって感謝を伝えようか。」

聖雷「マーリンさんにとって、1番幸せで嬉しいのは、僕たちが自立することなのかな。」


 聖雷の言葉で、全員が黙った。

 

聖雷「…違うかな?」

緋月「……そうかもしれないね。」

胡蝶「自立…か。」

緋月「どうやって、伝えよう。」

聖雷「マーリンさんがいなくても、僕たちはしっかりやっていけるよって、伝えないといけないね。」

緋月「…じゃあ、これからはいつもよりもマーリンさんに僕たちができるよっていうのを見せつけよう。」

聖雷「お手伝いは、もっと頑張らないとね。」

胡蝶「風呂掃除、サボんなよ。言われなくてもやろう。」

緋月「うん。」

 

 こうして、5人はマーリンに感謝を伝えることにした。

 

*

 

 

 帰り道。

 

緋月「じゃあね。」

 

 小夜と別れた宿のメンバー。

 

聖雷「…ひっきー。 」

緋月「なあに?」

聖雷「…ありがとね。」

緋月「うん、いいよ。」

胡蝶「マーリン様に感謝を伝える作戦。緋月がいなかったら思いつかなかったかもしれない。」

緋月「…がんばろうね。」


 3人が話していると、影楼が入ってきた。

 

影楼「なぁ。」

3人「?」

影楼「…お前ら、この先の居場所はあんのか。」

緋月「…。」


 沈黙。

 

胡蝶「……俺は、剣道をして生きていく。父さんの跡を継ぐんだ。」

聖雷「そっか。続けるんだね。」

胡蝶「宿を出ていったあとは父さんと一緒に暮らすんだ。」

緋月「決まったんだ、良かったね…。」

影楼「…。」

緋月「俺っちは、高校次第かな。」

影楼「聖雷は。」

聖雷「…。」

 

 行く先の進路が決まっていないのは、聖雷だけだった。

 

聖雷「影楼くんは、どうするの。」

影楼「俺は森で暮らす。」

緋月「魔法がなくなっても?」

影楼「当たり前だ。マーリンさんの魔法が無くなっても、森が消える訳ではねぇだろ。…昔から、この森で暮らしてんだ。」

聖雷「そうだよね。」

影楼「愛の………石碑もある。」


 4人は森をしばらく歩き続けると、宿の前に着いた。

 

緋月「じゃあ、かげろっち、じゃあね。」

影楼「あぁ。」

聖雷「またね。」

緋月「約束、忘れないでね。」


 影楼と別れた。

 宿へ帰る3人。

 

緋月「ただいまー。」


 宿の中へはいると、すぐにマーリンが迎えた。

 

マーリン「おかえりなさい、楽しかった?」

緋月「うん!小夜っちも元気にしてたよ!」

マーリン「そう、なら良かったわ。」


 聖雷は、下を向いてずっと考えていた。

 胡蝶はさりげなくフォローをしながらリビングへ向かっていった。

 

 宿のリビング。

 

マーリン「お参りはしてきた?」

緋月「うん!」

マーリン「なんてお願いしたの?」

緋月「それはね…。ひ!み!つ!」

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