【127話】勉強会…?
11月。
学校行事もほぼ終わり、受験一筋になった。
そんなある日。
緋月「ねぇ、小夜っちー!」
小夜「どうしたの?」
放課後。荷物を持って帰ろうとする小夜を緋月が引き止めた。
緋月「緊急事態だ!!!!」
小夜「え?」
緋月は切羽詰まった様子で言った。
緋月「勉強を…教えてくだせぇ…!!!!」
小夜「は、はぁ…。」
小夜が承諾すると、緋月が喜んだ。
小夜「でも、今日は俺の家はダメだよ。音夢が来るんだ。」
緋月「そうなの?」
小夜「他の部屋もあるけど、あんまりおすすめしない。」
緋月「じゃあ、宿まで来てくれない?」
小夜「いいよ。」
緋月「あ!…でも、今日はかげろっちがちょっと内職するって言ってたな。」
小夜「リビングは?」
緋月「聖雷っちたちが使ってるかも。図書館にするか。」
2人が話していると、後ろから円香が近づいてきた。
円香「なーにしてるの?」
小夜「あ、円香。」
緋月「円香っち~。助けて~。」
緋月が円香に泣きつく。
緋月「小夜っちから勉強を教えてもらいたいんだよ…!」
円香「うふふ、なにそれ。」
小夜「場所の問題なんだ。」
円香「場所?」
円香は、少し考えた後笑顔で言った。
円香「今日なら…うち、大丈夫だけど…。」
緋月「え!」
*
通学路を歩く3人。
小夜「本当にいいのか。」
円香「うん!」
緋月「円香っち、神様!」
円香「いいえ。ちょうど私もみんなで勉強したかったし。」
結局、円香の家で勉強することになった緋月と小夜。
しばらく歩くと、円香の家が見えてきた。
円香「ここだよ。」
小夜「おぉ…!」
閑静な住宅街に、綺麗な一軒家。円香家だった。
円香「ちょっと待っててね。」
円香は先に家に入っていった。
家の前で待つ2。
小夜「騒がず、おとなしくするんだぞ。」
緋月「ウン。」
緋月は緊張しているようだった。
小夜「なんで、そんな緊張しているんだ…。」
緋月「マドカノイエ、ハジメテ…。」
小夜「はぁ…。」
円香が戻ってくると、手招きをして家の中へ招いた。
小夜「お邪魔します。」
玄関には、円香の母がいた。
緋月「は、初めまして…。」
小夜「初めましてじゃないでしょ。」
円香母「ふふ、いらっしゃい。ごゆっくりどうぞ。」
靴を脱ぐと、円香の部屋にすぐ入った。
円香の部屋。ピンク色の家具や、大きな鏡があり、いかにも女の子らしい部屋だった。
緋月「うわぁ…すっごく、綺麗…。」
円香「当り前よ。」
緋月「俺っちの部屋とは全然違うね。」
小夜「汚いもんね。」
緋月「うぅ。」
円香「緋月くんのおうち、そんなに汚いの?」
緋月「ま、まぁね。」
小夜「そういえば、ピアノはないのか?」
円香「ピアノはリビングにあるよ。」
緋月「へぇ~。」
円香「さぁ、そこらへんに座って。」
1つのテーブルの周りに3つの座椅子。
小夜と緋月は座った。
円香「ジュース持ってくるね。何がいい?」
小夜「じゃあ、お茶で。」
緋月「コーラ!」
円香「わかった!」
円香は一旦部屋から出た。
緋月「さて、勉強しますか。」
小夜「どこが分からないの?」
緋月「ここ。イオン式のところ。」
教科書やテキストをカバンの中から取り出し、テーブルの上に広げ始めた。
円香が飲み物を持って戻ってきた。
円香「お待たせ。
テーブルの上に飲み物を置くと、円香も勉強道具を広げ始めた。
小夜「この式は分かる?」
緋月「うーんと…。」
3人は各自勉強に取り掛かった。
黙々と円香と小夜がテキストを解いていた。
しばらく静かにしていると。
緋月「ふぁぁ~」。
大きな欠伸をする緋月。
すると、円香の家の本棚に目を向けた。
緋月「これ!」
円香「?」
緋月が円香の本棚から本を取り出した。
緋月「占い?」
円香「うん!」
緋月「へぇ~。」
パラパラとページをめくっていく。
小夜「勉強はどうしたんだ。」
円香「いいじゃない。ちょっとくらい。」
緋月「ねぇ、誕生日占いだって。」
円香「本当ね。やってみる?」
緋月「うん!」
3人は円香の占いの本に覗き込んだ。
緋月「あった!」
緋月は辞典のように自分の誕生日のページを引いた。
円香「5月2日はね、女性人気が高い。協調性がある。だって!」
緋月「俺っちにぴったりじゃん!」
小夜「嘘つけ。」
円香「あはは、でも似合ってるよ。」
緋月「…性格の影響もあって、他の生まれ日の人と比べて運気が高いって。」
小夜「すごいかもな。」
緋月「これって、あたるの?」
円香「信じる人には、ね?」
緋月「円香っちのも探すぞー!」
3人は時間を忘れて本に夢中になった。
1時間くらい、占いについて話した。
緋月「ねぇ、誕生日占い以外はどんなのがあるの?」
小夜「確かに気になるな。」
円香「例えば…。」
円香は本棚を見た。また本を取り出した。
円香「これは、心理テスト。」
緋月「心理テスト?」
円香「んーとね、これから2人に質問をするから、思ったように答えてね。」
緋月「はーい。」
円香「犬を飼うことになりましたが、あまり懐いてくれません。そんな時は次のうちどうしますか?」
円香は心理テストの答えのところを隠して2人に本を見せた。
円香「①おやつで気を引く②優しく声をかけて撫でて…」
緋月「1!!!」
小夜「早いぞ。」
円香「えへへ、③一緒に遊ぶ④犬が自分から近づいてくるまで待つ。」
緋月「1!!」
円香「私は3かな。乱夢ちゃんは?」
小夜「4だな。」
円香「じゃあ、結果発表!この心理テストではみんなの精神年齢が分かります。①を選んだ人は10歳、②は20歳、③は40歳、④は60歳なんだって!」
緋月「ええええぇぇ、俺っち10歳!?」
小夜「年相応だな。お前は。」
円香「私と乱夢ちゃんは大人だね。」
緋月「ずるいよ!俺っちだけ置いてきぼりなんて!」
小夜と円香は笑った。緋月の不満そうな顔をしている。
緋月「もう!」
緋月がこれと違う心理テストを探した。
緋月「じゃあ、これはどうだ!」
こうして、3人は心理テストにどっぷりとはまってしまった。
次々に捲られていくページ。
いつしか、テーブルの上には占いの本だらけになっていた。




