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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【125話】いじめと登校拒否


 私の机のを囲むようにして群がる女の子たち。

 

小夜「…え、なに。」

女の子2「あ、まりいだ!」

女の子1「来たね。」

 

 私が近づくと、すぐに女の子たちは笑いながら避けた。

 机を見ると、落書きがされていた。


女の子1「えへへ、おはよう。おそかったから、ラクガキしちゃった。」

小夜「なんでこんなことするの。」

女の子3「あんたがうざいからだよ。」

女の子2「この前のおまじない、デタラメって言ったじゃない。そういうこという人はサイテーだよ。」

女の子3「サイテー!サイテー!」

 

 女の子たちから睨まれた。

 机には、「しね」「さいてい」「バカ」などが書かれていた。

 

小夜「…。」

 

 私は筆箱から消しゴムを取り出すと、落書きを消し始めた。

 

女の子1「そんなものでおちないよ、だって、ボールペンつかったもんね。」

女の子3「ボールペンもってきたこと、先生に言ったらゆるさないからね。」

小夜「…。」

 

 女の子たちは笑っていた。

 泣きたいのを堪えながら、私は水道に向かって逃げるように走っていった。

 

女の子1「あー、いい気味ね。」

女の子3「でも、机の中になにもはいってなかったよ。かくそうとおもってたのに。」

女の子2「毎回もってかえってるんでしょ。ガリ勉だもんね。」

女の子3「きもちわるーい。」

 

 女の子たちからの嫌がらせはエスカレートしていった。いつしか、クラスのみんなが私を嫌うようになった。容姿や性格をからかうような内容から、親があまり学校に顔を出さないことで、「お前は親から嫌われている」とか、「ダメな子供だった」とか、散々言われた。

 

 そして、だんだんと学校に行くことが億劫になっていった。

 

*

 

 

 茉莉衣乱夢、10歳。

 

 朝。いつも通りにごはんを食べ終わると、ランドセルを持って玄関へ向かった。

 後から家政婦が追いかけてきた。

 

家政婦「あら、もう行くの?」

小夜「うん。」

家政婦「そっか。気をつけてね、お嬢様。」

小夜「…行ってきます。」

 

 この頃から、私は1人で学校に通い始めた。

 家を出ると、私は走って学校とは反対方向へ向かった。

 

小夜「よし、ここまで来たら大丈夫かな。」

 

 ランドセルを降ろすと、帽子を中に入れ、ランドセルにカバーをつけた。

 そして、家とは離れた公園のベンチに腰かけた。

 

小夜「……何日目かな、学校いってないのは。」

 

 私は、木室さんの目を騙して学校に行ったふりをしていた。幸い、学校からの連絡はほぼ行ってなかったからバレることは無かったが、クラスメイトに合わないかとヒヤヒヤしていた。

 学校に行っていない間は、図書館や児童館のプールに行ったりして、時間を潰した。

 

*

 

 夕方になると、他校の生徒がよく帰宅していた。

 

小夜「…そろそろ、帰ろうかな。」

 

 私は、家に向かって歩こうとした。

 すると、かなり先に見慣れた人たちが歩いてきた。

 

小夜「…!」

 

 それがクラスメイトだと気がつくと、咄嗟に近くの塀の裏に隠れた。

 

女の子1「ねぇ、これからうちに遊びに来ない?ママが買ってくれたおかし食べようよ。」

女の子2「いいの?やったー!いくいく!」

女の子3「わたしも!」

男の子1「どんなおかし?」

女の子1「フランスせいの高級おかしよ。」

男の子2「よくわかんないけどうまそー!おれもいくー!」


 楽しく話しているクラスメイトたち。

 すると、女の子の態度がいきなり変わった。

 

男の子1「…まりいってさ、おじょうさま気取りでうざいよな。」

男の子2「たしかに〜。」

女の子2「最近(学校に)来てないけどね。」

女の子3「わたしたちがいっぱい嫌がらせするからかな?とうとうにげちゃったのかも。」

男の子2「にしても、頭いいみたいな態度、ムカつく。」

女の子3「ほんと、〇ねばいいのに。」


 クラスメイトたちは笑っていた。

 

小夜「………。」

 

 なんで、私だけがそう言われるのか。

 理解が出来なかった。

 

女の子2「こんど学校に来たらクラスみんなでいじわるしてやろうよ。」

女の子3「いいねー!」

男の子2「さんせい!だって、まりいなんか好きなやつ、だーれもいないもんね!」

男の子1「あいつ、隣のクラスからも嫌われてるよ。」

女の子1「味方がだれもいないのね。かわいそうに。」

 

 クラスメイトたちは去っていった。

 隠れていた塀から出ていく小夜。

 

小夜「……。」

 

 泣くのを堪えながら、とぼとぼと家へ帰って行った。

 

 それから、私は学校に行くことがほぼ無くなった。テストや終業式はちゃんと行って、授業には全く参加しなかった。朝起きて、木室さんを騙して外で遊び歩き、夕方には帰ってきて勉強をする。

 幸い、教科書などは家にあったので勉強が追いつかないことは無かった。

 

 そんな生活が続いていく中、とうとう木室さんや母に不登校であることがバレてしまった。

 

家政婦「お嬢様、ちょっといいかしら。」

 

 木室さんに呼ばれて、私はリビングのソファに座った。

 

家政婦「お嬢様、この前の通知表のことですが…。」

 

 木室さんから通知表を渡された。

 

家政婦「欠席と出席の日数のところ。よく見て。」

 

 そこには当然、学校にほぼ行っていないことが分かる日数が書かれていた。

 

家政婦「行ってなかったの…?」

小夜「…。」

家政婦「担任の先生が、間違ったのかしら。」

小夜「それは…。」

家政婦「…なにか、言ってないことがあるの。」

小夜「…。」

 

 私は黙って俯いた。

 

家政婦「お嬢様、正直に言ってください。お母様も心配してますよ。」


 私は、本当のことを言った。

 学校に通っていないこと、近所で暇を潰して過ごしていることを。

 

家政婦「……そうだったのね。」

小夜「勉強もちゃんとやってるし、悪い人たちとつるんでもいないから。」

家政婦「お嬢様が、非行に走るとは思ってませんわ。でも…学校に行くことがそんなに嫌なのであれば、私に嘘をつかないで、ちゃんと言うべきよ。」

小夜「ごめんなさい…。」

家政婦「とりあえず、事情は分かりました。自由に登校しなさい。お母様だったら、そう言うかしらね。」

小夜「…。」

家政婦「このことは、あとでお母様に電話してみます。お嬢様も、一緒に言いましょう。」

小夜「はい。」

 

 木室さんは、登校拒否をすることを許してくれた。

 私が嫌がらせを受けていることは言わなかったが、なんとなく察してくれたのかな。

 

 その日から、私は家か図書館で過ごした。

 学校の先生から郵送されたプリントなどを活用して、勉強も1人できちんとやった。

 

 その結果、きちんと小学校を卒業することが出来た。周りのクラスメイトたちからの嫌がらせは止まらなかったけれど、無事に卒業できたんだから、大丈夫だろうと思っていた。

 

 卒業式は、母と木室さんが来てくれた。

 母はどうしても変装をしないといけない理由があったけれど、木室さんは私のことを「よく頑張ったね」と褒めてくれた。

 

 

 やがて、中学生になった。

 


*

 

 

担任「おはようございます。今日もがんばって行きましょう。じゃあ、授業の準備。よろしくな。」

 

 また今日も始まった。

 中学校では、小学校の時に嫌がらせのリーダーのような存在の女子は違うクラスだった。そして、中学に上がってから落ち着いたらしく、嫌がらせを受けることは無くなっていった。

 

小夜「…。(一時間目は化学か。)」

 

 特に仲のいい友だちもいないので、普通に授業を受けることになった。

 

 しかし、俺はあまり気が進まなかった。

 長年、授業を受けていなかったせいか、家でしか勉強に集中できなくなっていた。

 周りの人たちに気を取られてしまうようになっていたのだ。

 

 中学も、不登校ぎみになっていた。

 

女子1「次の授業、第一理科室だよね。一緒にいこ?」

女子2「うん!」

 

 女子たちは、入学式を終えたあとからすぐにクラスの中でグループができていた。

 

 不登校ぎみなのもあって、俺はクラスメイトからはあまり良く思われてなかった。

 

 中学2年生になると、学校では高校受験のことを言われ始めた。

 進路指導もあるから、学校へ行かないといけないことも多くなった。

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