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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【121話】円香のやさしさ


 3日目の朝。

 

小夜「ふぁー。」

 

 朝起きると、皆がまだ眠っていた。

 小夜は朝早く起きて顔を洗い、着替えを済ませてからベランダからの景色を眺めていた。

 

小夜「…今日で修学旅行が終わりか。」

 

 すると、女子生徒たちが起きてきた。

 

女子生徒1「…ん、おはよぉ…。」

 

 欠伸をしながら起きてくる女子生徒。

 

女子生徒2「おはー…。あれ、もうみんな起きてる?」

円香「今起きた…。おはよ…。」

 

 全員が起きると、ゆっくり支度をし始めた。

 

女子生徒2「そういえば、昨日の夜物音めっちゃしなかった?」

女子生徒1「え、なにそれ。全然聞こえなかった。聞こえた?(小夜に)」

小夜「いや。」

円香「あっ…それ、私かも。」

女子生徒1「え?」

円香「昨日の夜、ちょっとだけ夜起きたんだ。」

女子生徒2「そっかー。」

 

 他愛もない話をして準備が終わると、朝食を食べに行った。

 

*

 

 

担任「13:00にここに集合だ。それまで自由に回るように。」

 

 担任の指示で、各自観光する生徒たち。

 ここは、紫弦堂。近くには紫弦公園があった。

 

緋月「紫弦堂の中をみてみよっか。」

小夜「そうだな。」

円香「紫弦堂は、今までみた建造物の中では新しい方だよ。40年くらいしか歴史がないからね。」

緋月「そうなの?」

円香「本当はここのモデルになった“帝紫堂”っていうのがもっと遠くにあったの。でも、火事で燃えちゃって。それでリニューアルしてここに立てたのが紫弦堂。」

緋月「さっすが円香っち。」

 

 話をしながら紫弦堂の中をまわる3人。

 

緋月「ここは、なにをするところなんだろう。」

円香「昔の偉い人たちが集まるところだよ。」

小夜「でも、40年前だろ?そこまで昔じゃないな。」

円香「そうだね。帝紫堂の時はもっと使われていたけど、火事で燃えたとしてもその形を残したくて紫弦堂を作ったんだろうね。」

 

 中は、すごく広い木造の部屋だった。

 

小夜「ここは入っちゃダメだな。」

緋月「土足厳禁だね。」

円香「見て楽しむんだね。」

 

 そして中を全部周り終わると、紫弦堂を出た。

 

緋月「…どうしよう、10分で見終わってしまった…。」

円香「そうだね、どうしようか。」

緋月「じゃあ、しばらく紫弦公園で待つか。」

小夜「そうだな。」

 

 紫弦堂の前にある紫弦公園でしばらく待つことになった。

 公園のベンチで座って、話をしていた。

 

円香「あ、あそこの建物。あとでご飯食べるところだよ。」


 ベンチから丁度見える位置にある建物は、バイキングだった。そこでお昼を食べることになっていた。

 

緋月「よーし、俺っちが先に偵察してやるぞ!」

円香「え、どこ行くの。」

 

 緋月が立ち上がり、リュックを背負った。

 

緋月「バイキングのところ。どんなメニューがあるのか見てくるよ!」

 

 緋月は走り去っていった。

 

小夜「はぁ…、ひっきー、本当に元気だな。」

円香「面白いなぁ。」

小夜「そんなにか?」

円香「うん。緋月くんと乱夢ちゃんが居てくれると、毎日が楽しいの。」

小夜「それは良かったね。」

 

 すると、円香は少しもじもじとした。

 

円香「ねぇ…乱夢ちゃん。」

小夜「なんだ。」

円香「その……乱夢ちゃんは……好きな…人とか…いるの…?」

小夜「好きな人?…特に興味はないな。」

円香「えぇそんな。」

小夜「え。」

円香「いや、なんでもない。…興味ないんだ。」

小夜「あぁ。それどころじゃないからな。」

円香「余裕ないの?」

小夜「いや。人間関係が面倒なだけだ。」

円香「そっか…。」

 

 すると、緋月が戻ってきた。

 

緋月「小夜っちー、円香っちー。」

小夜「どうした。」

緋月「バイキングの中に、すごく美味しそうなプリンがあった!」

小夜「いいな。」

 

 すると、緋月たちは男子生徒に呼ばれた。

 一旦集合場所に行こうと誘われた。

 

 円香たちは立ち上がって行こうとした。

 小夜は、立ち上がった時に円香のカバンから、チラッとミミズクのストラップがあったのが見えた。

 

小夜「…。」

 

 緋月たちは集合がかかると、すぐに集まった。

 そして、バイキングで昼食を済ませた。

 

*

 

 

 紫弦堂からバスに乗り、和同道駅に着き、お土産屋に寄ると、新幹線に乗った。

 修学旅行も、あとは新幹線出帰るだけだった。

 

緋月「ちぇー、また2時間も乗るのか。」

小夜「仕方ないね。」


 緋月たちは3人席で座っていた。

 すると、小夜がリュックからあるものを取り出した。

 

小夜「UNOやる?」

緋月「おお、いいね。」

円香「う、の?」

 

 小夜はカードを切って始めようとした。

 

円香「ねぇ緋月くん。うのってなんなの?」

緋月「え、円香っち、UNOしらないの?」


 円香は首を縦に振った。

 

緋月「まじか!教えてあげないとね!」

 

 緋月たちは円香にルールを教えながらUNOを楽しんだ。

 そして、3戦ほどやった後。

 

円香「あははは、やっぱり面白いね。」

緋月「気に入ってもらえたかな。」

円香「うん!」

 

 そして、UNOをしまうと少し休むことにした。

 

緋月「ふぁー、ちょっとだけ、寝ようかな。」

 

 緋月は欠伸をすると、目を瞑り始めた。

 小夜はその隙を逃さず、円香のバッグを見た。

 

小夜「…。」

 

 おそらく、緋月のミミズクのストラップはまだバッグに入っている。

 返してもらう最後のチャンスだった。

 小夜は唾を飲んだ。

 

小夜「…。」

 

 円香は、少しうとうとしていた。

 

小夜「…あの、円香。」


 すると、円香はなにか気がついたように起き上がった。

 

円香「あ…!」

 

 小夜の声はかき消され、円香はなにやらバッグをいじり出した。

 

小夜「…どうした?」

 

 小夜が冷静に話しかけると、円香はバッグから何かを取りだした。

 そして、緋月を起こした。

 

円香「ねぇ、緋月くん?」

緋月「んん?どうしたの?」

円香「これ、返すの忘れてた。ごめんね。」

 

 円香の手には、ミミズクのストラップだった。

 

緋月「ん?あぁ、借りてたの?」

円香「うん。ちょっとだけ、糸が解れてたから直したの。」

緋月「うん、さんきゅー!」

 

 緋月はミミズクのストラップを受け取ると、リュックに再度付けた。

 

小夜「……。」

 

 円香は、ストラップを盗んでいなかった。ただ、ミミズクのぬいぐるみの糸が解れていたのを直しただけだった。

 

小夜「……よかった。」

円香「?」

小夜「いや、なんでもない。」

 

 安心した小夜。

 

*

 

 

 新幹線を降りると、生徒や先生たちは解散した。

 緋月と小夜は電車に乗るために円香と別れた。

 

円香「一緒に回ってくれて、ありがとう。じゃあね!」

緋月「じゃあね!」

小夜「ばいばい。」

 

 小夜と緋月は電車に乗ると、席に座った。

 

緋月「…やっと宿のみんなと会えるんだ。元気にしてたかな?」

小夜「大丈夫だと思うぞ。」

緋月「そうだよね。聖雷っちたち、電話越しでも元気が伝わってきたもん。」

 

 すると、緋月がリュックについているミミズクのストラップを見た。

 

緋月「円香っちがさ、このストラップを直してくれたんだ。このことも聖雷っちたちに言わないと…。」

 

 緋月は、ストラップをじっと見た。

 

小夜「どうしたの?」

緋月「…なんかこれ…。」

 

 緋月が見つめていたのは、ミミズクの目の部分。

 

緋月「わっ!動いてる!」

小夜「えぇ?」

 

 再びミミズクの目を見てみると、カメラが僅かに動いていた。

 

緋月「…ってか、これ。カメラじゃない?」


 小夜は、黙ったままだった。

 

緋月「…聖雷っち、また変なの俺っちに渡したな!?」


 最寄り駅に着くと、緋月が早く帰ろうと言った。

 緋月は、聖雷に事情を聞くつもりでいた。

 ヤレヤレ、と呆れる小夜。

 

 2人はこうして修学旅行を楽しんだのであった。

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