【120話】ストラップの仕掛け
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緋月「…なんか、この道進んでも進んでも皆がいないよ…?」
円香「うわあん…。」
緋月たちは、けもの道を進んでみるが、一向に奥へ辿り着かなかった。それどころか、どんどん暗くなっている気がした。
緋月「…うぅ、迷子…?」
円香「そんなはずないよ…、だって。」
円香が後ろを振り返った。
しかし、来た道はもう暗くなっていて見えなかった。
円香「そんな…!」
緋月「戻れないよ…。」
緋月たちは仕方なく前へ進む。
すると、2人は後ろから急に肩を叩かれた。
緋月「うわあああああああ!!」
円香「きゃあああああああ!!」
悲鳴を上げる2人。腰が抜けて座り込む。
後ろには、小夜が立っていた。
緋月「ひいいぃ、お化けぇぇえ!!!」
小夜「誰がお化けだ。」
小夜は緋月の頭を軽く叩いた。
緋月「あたっ!」
円香「あれ、乱夢ちゃん!?」
緋月「…え?」
小夜は腕を組み、2人を見下ろしていた。
緋月「さ、小夜っち!!!」
緋月が抱きついてきたのを払い除ける。
小夜「…お前ら、道間違えてどうする。」
緋月「へ?」
小夜「だから、道間違えてるんだよ!」
*
遡ること10分前。
小夜「…。」
小夜は、先生から許可が降りるとすぐに森に入った。
小夜「意外と、怖くないな。」
ホラー好きではあるが幽霊など全く信じない小夜にとっては、そこまで怖くはなかった。
スタスタと歩いていく小夜。
すると、突然カラスが鳴き始めた。
小夜「!?」
さすがの小夜もビビってしまった。
小夜「…カラスか。」
すぐに冷静さを取り戻すと、進んで行った。
しばらくすると、小夜は前に緋月たちを見つけた。
小夜「ひっきー、円香…?」
すると、緋月たちは道を進んだ。
小夜「…あいつらも、何だかんだ怖くなさそうだな。」
そう言い真っ直ぐ進んでみると、小夜は狭いけもの道を見つけた。
小夜「…?」
けもの道は、真っ直ぐだったが、広い道は少しだけ曲がって真っ直ぐあった。
小夜「確か…ひっきーたちはこっちに進んだよな…?」
小夜はけもの道の方を見た。
*
小夜「…ということ。」
緋月・円香「反省します…。」
小夜は、緋月たちを連れて道を引き返した。
不思議と、道が明るく思えた。
緋月「…なんか、小夜っちが来ると全く怖くないね。」
円香「…うん。」
小夜「何か言ったか?」
緋月「いえ、なんでも。」
小夜たちは、再度あの分岐点まで向かった。
森の奥へ着くと、緋月たちは札を取り、すぐに最初の場所へ戻った。
3人だったので、迷うことなく戻ることが出来た。
森の入り口。
女性の先生「あ、藤本くんのペア…と、茉莉衣さん到着!!」
皆の拍手で迎えられた。
ほとんどの生徒が戻ってきていた。
女性の先生「じゃあ、前の列で並んでね。」
緋月「はーい。」
緋月たちは再び列に並んだ。
男子生徒1「おい藤本、さっきの話。どうなったんだ?」
緋月「え?」
男子生徒はこっそりと耳打ちした。
男子生徒1「委員長か、茉莉衣か。決めたんだろうな?」
緋月「うるさい!!!」
緋月が男子生徒のほっぺを摘んで伸ばす。
笑っている男子生徒。
不思議そうにしている小夜と円香だった。
*
肝試しが終わると生徒たちは旅館に戻り、風呂などを済ませた。
小夜は部屋をこっそり抜けると、旅館の中の公衆電話を見つけた。
小夜「…。…。」
相手が電話に出た。
聖雷《もしもし。》
小夜「あ、聖雷?俺だよ。」
聖雷《小夜!!》
小夜「そんな大声で、どうした。」
聖雷《あのね…、僕たち、とんでもないものを見てしまったんだ。》
小夜「…詳しく、聞かせてくれるか?」
すると、聖雷はミミズクのストラップで緋月たちを監視していること、まどかという人がストラップを盗んだことを全て話した。
小夜「…そんな事があったのか…。」
聖雷《隠してたことは、本当にごめん。観光したかったから…。》
小夜「それはもう大丈夫だ。…しかし、円香がミミズクのストラップを盗んでいるとは…。」
聖雷《小夜もそれらしいことは見たんだっけ。》
小夜「あぁ。バッチリと盗んでた。…やっぱりあれは、夢じゃなかったんだな。」
小夜と聖雷は悩んでいた。円香からどうやってストラップを返してもらおうか。
小夜「無理に犯人だと決めつけても良くない気がする…。」
聖雷《でも、見たんでしょう?》
小夜「あぁ。だが、円香は何の目的のためにひっきーのを盗んだ。」
すると、電話越しで影楼たちの声が聞こえてきた。
影楼《お、小夜じゃん。》
小夜「影楼、なんでいるの。」
影楼《いたら悪ぃか?》
小夜「…今、聖雷と話してるの!」
聖雷《ねぇ、影楼くん。円香って子がひっきーのストラップを盗む理由、なんだと思う?》
影楼《ん?…と、緋月のストーカーとか?》
小夜は鼻で笑った。
小夜「そんな訳…。」
少し考えてみると、小夜には思い当たる節があった。
小夜「……あるかもしれない。」
聖雷・影楼《え。》
小夜「…あれは、博物館でのこと。ひっきーと円香は一緒の貨幣博物館に行って、俺は別のところに行った。円香はひっきーの方を選んでいた。」
聖雷《…それで。》
小夜「肝試しの時は、ひっきーにやたらくっついていた。」
影楼《緋月の奴、何もしなかったのか?》
小夜「うん。いつも通りだった。」
影楼たちは呆れた。
影楼《あのバカ、本当に使えねぇな。》
小夜「でも、やっぱり円香はひっきーと一緒にいたがってた。それって、やっぱり。」
影楼《そうかもな。》
影楼は、少しニヤニヤしているように思えた。
胡蝶《少なくとも、小夜は少し円香という奴を警戒した方が良さそうだな。》
小夜「うん。そうしてみるよ。」
聖雷《…まぁ、とにかく。今は多分まどかさんのポケットにストラップがあるんだ。できるだけ監視してみるよ。》
小夜「おう、ありがとな。」
聖雷《明日、帰ってくるんだよね?》
小夜「あぁ。」
聖雷《気をつけてね。じゃあね。》
小夜「おやすみ。」
小夜は電話を切った。
明日は、修学旅行3日目。最後の日だった。
何事もないようにと祈って部屋へ戻った。




