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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【112話】リフレッシュ休暇

 8月のある日の夜。


緋月「ただいま・・・。」


 緋月は宿へ帰ってきた。

 それに気が付いて聖雷が迎え入れる。


聖雷「おかえり!ひっきー、どうしたの?」

緋月「疲れちゃった…。」


 緋月は疲れている様子だった。


聖雷「ゆっくり休んで。」

緋月「うん…。」


 聖雷は緋月の荷物を持ち、部屋まで連れて行った。

 部屋につくと、すぐに布団に入った。


緋月「ごめん、聖雷っち。ありがと。」

聖雷「おやすみ。」




 緋月の部屋からリビングへ降りると、マーリンと胡蝶がいた。


マーリン「緋月ちゃんは?」

聖雷「相当疲れているみたい。すぐ寝ちゃった。」

胡蝶「ご飯はいいのか?」

聖雷「食べられなさそう。」


 胡蝶とマーリンは心配していた。


聖雷「まぁ、仕方ないね。最近、勉強漬けだろうし。」

胡蝶「いつも昼くらいに出て行って、この時間に帰ってくるからな。」

聖雷「たまには、休んでもいいんじゃないかな…。」

マーリン「そいうわけにいかないのよね…。」


 マーリンは夕飯をテーブルの上に並べ始めた。


マーリン「ほら、夕飯の時間よ。」

聖雷「はあい。」


 並べられていく皿のボーっと眺める聖雷。

 

マーリン「あ、そうだ。」


 マーリンは一回手を止めた。


マーリン「みんなで、お出かけしてきたらどうかしら。」

聖雷「え。」

マーリン「1日くらい、休まなきゃ。どうかしら?」


 聖雷と胡蝶は少し考えた。


聖雷「いいかも。でも、どこに行こうか…。」

胡蝶「リフレッシュするのなら、自然があるところだな。」

聖雷「宿出ればすぐだよ。」


 マーリンも一緒に考えた。


マーリン「そうね…海とかは。」

聖雷「いいね!でも、去年行ったから、今年は川がいいな!」

胡蝶「そうだな。」


 お出かけの話がどんどん弾む。

 すると、リビングのドアが開いた。


聖雷「よし、じゃあ、川でバーベキューだぁ!」

緋月「ほんとーーーー?」


 一斉に緋月の方を見た。


胡蝶「あれ。緋月、寝たんじゃあ…。」

緋月「えっへっへ。起きちゃった。」

聖雷「大丈夫なの?」

緋月「俺っちはへーき!」


 緋月を心配していたマーリンたちはほっとする。


マーリン「よかったわ。」

緋月「ねえねえ、バーベキューいくの?」

胡蝶「まだ決まっていないけどな。」

緋月「嘘つき。決まってるくせに。」

胡蝶「(溜息)」

緋月「もちろん、みんなでだよね?」

胡蝶「そのつもりだ。」

緋月「マーリンさんは?」


 緋月は夕食の準備をしているマーリンを見た。


マーリン「そうね…私はいけないわ。」

聖雷「なんで!」

マーリン「森を守らないといけないもの。この森を出たら宿を隠せなくなっちゃう。」

聖雷「そっか…。」


 残念そうにする聖雷。


マーリン「…ほら、冷めないうちに食べて。」


 気が付くと、テーブルには料理が並んでいた。

 緋月はテーブルの周りに座るとすぐにご飯に手を付けた。


緋月「いったっだっきまーーす!」

胡蝶「は、早い。」


 慌てて聖雷と胡蝶も座り、一緒に食べ始めた。

 ガツガツと食べる緋月。

 マーリンは安心して微笑んでいた。

 

*

 

 

 お出かけの当日。

 

聖雷「早く、遅れちゃうよ!」

 

 緋月が慌てて出かける準備をしていた。

 聖雷と胡蝶は玄関付近でそれを待っていた。

 宿の中は相変わらずバタバタとしていた。

 

緋月「ちょっと、まって〜。」

胡蝶「寝坊するからだろう。」


 緋月は宿を出る10分前に起きたので、準備をしていなかった。

 

聖雷「はぁ…。いつも通りだね。」

シユウ「にゃん。」

聖雷「そろそろ、入ろっか。シユウ。」

 

 聖雷は、大きなトートバッグの口を開いた。

 中に入るシユウ。

 

聖雷「(シユウを撫でる)ちょっとだから、我慢してね。」

シユウ「にゃん!」

胡蝶「トートバッグで大丈夫なのか…?」

聖雷「うん。シユウが大人しくしてれば…。」

胡蝶「そうか。」

 

 ようやく準備が終わった緋月。

 

緋月「ごめん、おわったぁー。」

胡蝶「遅い。…忘れ物はないだろうな?」

緋月「ばっちし!!」

聖雷「マッチは?」

緋月「持った!」

聖雷「トングは?」

緋月「持った!」

聖雷「レジャーシートは?」

胡蝶「俺が持ってる。」

聖雷「財布は?」

緋月「…あ!」

胡蝶「おい。」

 

 緋月が財布を取りに再びリビングに行こうとする。

 すると、マーリンが現れた。

 手には緋月の財布。

 

マーリン「ふふ、忘れ物よ。」

緋月「マーリンさん。ありがとう!」

マーリン「気をつけて行ってくるのよ。」

聖雷「うん…。ごめんなさい、マーリンさん。」

マーリン「どうしたの。」

聖雷「一緒に、行けなくて…。」

マーリン「そんなの、大丈夫よ。坊やたちが楽しんできて帰ってくるなら、私は嬉しいわ。」

 

 3人はマーリンに手を振った。

 

聖雷「じゃあね、行ってきます!」

緋月「ばいばーい!」

 

 こうして、3人は森の中を歩き始めた。

 

*

 

  

 街の中。

 駅へ向かって進む3人。

 

緋月「ひっさしぶりだなぁ、遊ぶのなんて。」

胡蝶「たまにはリフレッシュしないとな。そう思って今日があるんだ。精一杯楽しんでくれ。」

聖雷「2人は、お金の方大丈夫なの?」

緋月「うん、へーき。多くはないけどね。」

胡蝶「俺は、父からもらってる。聖雷こそ、大丈夫なのか?」

聖雷「微妙かな…。僕たちが住んでる宿には、お金というものを必要としないからね。街中に落ちてたのを拾って集めてる。」

 

 すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

小夜「みんなー!」

 

 振り返ると、小夜と影楼がいた。

 

緋月「小夜っちー!」

小夜「おはよう。」

影楼「よォ。」

聖雷「よっす!」

胡蝶「思ったよりも早く合流できたな。」

小夜「そうだね。よかった!」

 

 待ち合わせ前に5人になった緋月たち。

 駅へ向かい、電車に乗ることになっていた。

 

影楼「お、そーいやぁ。これ。」


 影楼は、ビニール袋を持っていた。

 

聖雷「何これ。」

影楼「野菜。バーベキューのためにバイト先でもらってきた。」

緋月「かげろっち、やるぅ!!」

 

 緋月がハイタッチを要求する。渋々相手をする影楼。

 

聖雷「じゃあ、駅まで行こうか!」

影楼「おう。」


 5人はまた歩き出した。

 

*

 

 

 駅へ着くと改札を通り、電車へ乗る。

 この日は、あまり混んでいないようだった。

 

聖雷「少しでつくから、立ってていいよね。」

緋月「うん!何駅?」

胡蝶「2駅だな。」

小夜「うん。…ん?」

 

 小夜が聖雷のトートバッグをじっと見た。

 

小夜「う、動いてる!?」

影楼「は!?」

 

 聖雷は、小声で2人に言った。

 

聖雷「実はね…ほら。」

 

 トートバッグの口を少し開くと、中にはシユウが入っていた。

 

小夜「シユウ…。」

影楼「気の毒だな。」

聖雷「仕方ないよ。シユウも連れてくには、これしかない。」

シユウ「にゃん。」

小夜・影楼・聖雷「!!」

 

 猫の声が電車に響く。

 咳払いや、笑いで必死に誤魔化す3人。

 

影楼「…あっぶねぇ…。」

胡蝶「アウトだぞ。」

聖雷「し、シユウ。もうすこしだから、我慢して〜。」

 

 5人は、電車に乗って2つ隣の駅へ向かった。

 川までは、あとすこしだった。

 


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