【番外編】お盆休み (小夜)
この番外編は、本編とはあまり関わりがありません。お盆休みのみんなの過ごし方として、ワンシーンを切り取って書きました。
【小夜編】
8月14日。車の中。
音夢「たーのしーみだな〜!」
明日香「あはは、そうだね。」
明日香が助手席で結依と話している。
邑樂明日香。音夢の母であり、結依の妹である。
小夜「あとどれ位でつくの?」
結依「1時間くらいあとよ。まだまだね。」
明日香「あっちに付いたら、お母さんにうちの服着てもらうんだから〜。」
明日香はシングルマザーで、アパレルで働いているのだ。
この日は、車で結依たちの実家へ向かっていた。
車で3時間。かなりの距離だったが、4人もいれば時間を忘れるほどだった。
*
しばらくすると、車を止めた。
どうやら、着いたようだ。
結依「着いたよー。」
音夢「うーん…。」
音夢は目を覚ますと、小夜に連れられて車を降りた。
祖母「やあやあ、いらっしゃい。アスカ、ユイ。…それと。」
音夢「音夢だよ!ひさしぶり!」
音夢は祖母に抱きついた。
家の前で、祖母に挨拶をする結依たち。
祖母「まぁ、元気だこと。何年生になったのか?」
音夢「2年生だよ!」
明日香「お母さん、元気だった?」
祖母「あたしゃ、元気だよ。ネムに負けないくらいね。」
機嫌がいい祖母。すると、祖父もやってきた。
祖父「おう、ネムか。おっきくなったなぁ。」
音夢「じじ(祖父)だ!」
祖父「ラムはいないのか?」
祖母「いやねぇ、あそこにいるじゃない。」
祖母は小夜を指した。
小夜「じじ、乱夢だよ。お久しぶり!」
祖父「お!?あんなに大きくなったのか。今は…6年生くらいか?」
小夜「もう中学生だよ。」
結依たちが笑った。
結依「お母さん、お父さん。3日間よろしくね。」
祖母「えぇ。中に入って。お昼ごはんを食べましょう。」
音夢「わーい!!」
4人は祖母の家に入っていった。
*
昼ごはんを食べると、家事を手伝った。
祖母「そこのタオル、取ってくれるかしら。」
結依「うん!」
結依が棚にあったタオルをとって祖母に渡した。
祖母「それじゃあ、2階の掃除を頼もうかしら。」
明日香「2階かぁ、懐かしい!」
結依「私たちが出ていってから全く使ってないの?」
祖母「そうねぇ。時々じじが物置に行くくらいだよ。」
結依「そっか、物置もあるんだった。」
祖母「物置はあとででいい。ホコリがたーんとあるからな。」
明日香「了解!」
結依と明日香は2階へ上がって行った。
祖母「よろしく頼むよ。」
家の前の畑。
音夢と小夜と祖父がいた。
音夢「これ、なあに?」
祖父「持ってみな。」
音夢「う、うん。」
音夢が鍬を持ち上げてみた。
重くて持ち上がらなかった。
音夢「うわっ…重ぃ…!」
小夜「重そう…。」
祖父「はっはっは。そりゃ、重いだろう。」
小夜「これって、何?」
祖父「鍬だ。畑を耕す道具だ。」
音夢「へぇ…。じじ、これもてるの?」
祖父「あったりめぇだ。」
祖父は鍬を持ち上げてそこらへんの土を耕してみせた。
音夢「じじ、すごーい!!!」
小夜「わー!」
祖父「これはねね(祖母)も持てないからな。ワシがやるしかないんだ。」
音夢「音夢も大きくなったらやる!!」
祖父「いつでもワシたちの家に泊まりに来ていいぞ。」
音夢「うん!」
祖父が音夢の頭を強く撫でた。
祖父「よし、次は収穫するぞ。軍手つけて。」
小夜と音夢は軍手をつけた。
祖父「ナスを収穫するぞ。」
小夜「ナス?やったー!」
祖父「ラムが好きだもんな。」
音夢「音夢も好き!」
祖父「今日はねねに言って、夜ご飯カレーにしてもらえ。」
小夜「うん!」
音夢「みんな喜ぶよね!」
小夜「そうだね!」
小夜たちは喜んだ。
*
夜。
祖母「さぁ、出来たよ。」
テーブルに、人数分のカレーが並べられる。
音夢「わぁ!」
結依「美味しそう!」
カレー中には、ナスやオクラ、ジャガイモ、玉ねぎや肉が入っていた。
明日香「オクラ…?」
祖父「うちでとったんだよ。」
音夢「音夢がとったの!」
小夜「ナスもね。」
みんなで元気にいただいますをすると、食べ始めた。
明日香「このオクラ、おいしい。思ったよりもカレーと合うんだね。」
祖母「最近育て始めたオクラだよ。昔は無かっただろ?」
明日香「そうだね。野菜の種類増やしたんだ!」
祖父「でももう無理だわい、畑が狭い。」
音夢「じじんちのナス、大好き!」
祖父「そうかそうか。」
音夢はスプーンでカレーを掬うと、祖父に食べさせた。
祖父「美味しいなぁ。」
音夢「えへへ。」
祖母「そういえばね、昼、アスカたちが2階の物置を掃除してくれたんよ。」
祖父「あの物置か?」
明日香「うん。すっごい埃臭かった。」
祖父「そうかそうか、ワシの…釣り道具は無かったか?」
結依「無かったよ。」
祖父「あれ、どーこやったっけなぁ…。」
結依「ちゃんと整理しないからだよ。2階の部屋もほぼスカスカだったから、釣り道具を置いておけばいいのに。」
祖母「そうよ。どうせ使わないのよ。」
祖父「…あと、あの…バケツもどこやったっけなぁ…。」
祖母「じじ、すぐ忘れちゃうんだから。困っちゃうわ。」
みんなで笑いあった。
結依「でも、懐かしいものも見つかって良かった。」
明日香「小学校の時の図工の作品とか、中学の時の卒業アルバムとか。」
祖母「持って帰ってもいいのよ。」
タイマーが鳴った。祖母が止めに行く。
結依「うん。そうする。」
音夢「卒業アルバム?」
小夜「音夢も、卒業したらもらうのよ。」
音夢「へぇ…。」
そして、祖母が戻ってきた。
祖母「ご飯食べたら、お風呂入っていいわよ。湧いてるからね。」
小夜・音夢「うん!」
*
夜9時頃。
お風呂から上がり、窓から外を眺めながらアイスを食べていた。
音夢「畑、いっぱいだね。」
小夜「田舎だからね。」
音夢「ねぇ、お姉ちゃん。田舎って、なあに。」
小夜「街がなくて、木や畑がいっぱいあるところだよ。」
音夢「そうなんだ!」
すると、結依と明日香が入ってきた。
明日香「今日は疲れた?」
音夢「ちょっと。」
明日香「アイス食べたら歯磨いて、寝なさい。」
音夢「うん。」
結依「あんたたち、畑でいっぱいお手伝いしてたもんね。」
小夜「それなりにね。」
結依は大きく伸びをした。
結依「あ〜。こんなにゆっくりできるのは久しぶりだなぁ。」
明日香「芸能界、厳しいでしょ。」
結依「もう色々とめんどくさいよ。だから、休みが終わったらまた忙しくなるかと思うと嫌になる。」
音夢「ゆーさんとお姉ちゃんの本、みたよ。」
明日香「あ、あれね。Caramelね。」
小夜「あ、あはは…。」
音夢「お姉ちゃんとゆーさんが写ってたの。すごくキレーだった!音夢も写ってみたい!」
結依「いつかそのうちね。」
明日香「音夢ったら、机の上に飾ってるんだから。」
小夜「ありがとう。」
アイスを食べ終わると、歯を磨き、眠りについた。
15日、16日と日が経つといよいよ帰る日になっていった。
*
祖母「気をつけて帰るんだよ。お受験、頑張ってね。」
小夜「うん!ありがとう。」
祖父「また来るんだぞ。」
音夢「ねね、じじ、ありがとう。また来るね。」
音夢たちは車に乗った。
窓から手を振る小夜と音夢。
明日香「また夏に帰ってくるよ。それまで元気でね。」
祖母「いつでも帰っておいで。」
祖父「服屋の方もがんばるんだぞ。」
明日香「うん。」
祖母「あと、ユイ。」
結依「なあに?」
祖母「あんたの番組、いつも見てるわい。応援してっから、挫けるんじゃないよ。」
結依「お母さん…ありがとう!」
車を走らせて、祖母たちの家を出た。
家の前で、祖母たちが手を振ってくれていた。
家が見えなくなると、小夜たちは後部座席で、ゆっくりと眠りに落ちていった。
音夢の手には、祖父からもらったナスのストラップ。
大切に握られていた。




