【104話】Caramelの女優
小夜「え…!!」
一斉に小夜を見た。
緋月「小夜っちどうしたの。」
すると、女性も驚いたような態度をしていた。
女性「…乱夢!?」
胡蝶・緋月・杉本「え…!」
その場で全員が固まる。
女性「…乱夢…と、友達…?どうしてここに…?」
小夜「…ママは、お仕事?」
女性「え、ええ。モデルのね。」
緋月「ちょっと待って。もしかして…」
緋月たちは女性の方を見た。
女性「えぇ、茉莉衣乱夢の母、茉莉衣結依よ。よろしくね。」
緋月「ええええええええ!!!」
緋月と胡蝶と杉本は驚いていた。
そう、小夜の母親はテレビなどで有名な女優である茉莉衣結依。
モデルもやっていたのだ。
杉本「なんと!!娘さんでしたか!!」
結依「えぇ。言ってなくてごめんなさいね。」
緋月「うわぁ、すっごい。本物の女優さんだ!」
結依「あなたたちは、乱夢のお友だちよね、乱夢がいつもお世話になってるわね。」
胡蝶「いえ、とんでもない。少し驚きました。まさかこんなところで出会うなんて。」
ようやく状況を把握しだした緋月たち。
結依「あら、杉本さん。もしかして…これからモデルの面接?」
杉本「えぇ。」
結依「乱夢たちが?」
杉本「いや、こちらの桜さんのみです。」
杉本は胡蝶を指すと、結依は少し考えた。
結依「うーん…、すごい美人さんだね。女装できそうね。」
胡蝶「じょ…女装…。」
結依「でも、今回のモデルの採用は3人じゃなかった?」
杉本「えぇ、勧誘はしましたが、面接まで持っていけるモデルがあまりにいないもので…。」
すると、結依は3人を見た。
結依「じゃあ、3人とも出しちゃえばいいじゃない。」
緋月・胡蝶・小夜「え。」
杉本「…そうですね!せっかくですし。」
結依「衣装も着られるでしょう。」
小夜「ちょっと待って…」
結依「大丈夫よ。あんた達ならモデルだって出来るって。」
緋月「ええ!いいの!?」
結依「もちろん!」
小夜「そんなぁ…。」
結依「1度、経験しておきなさい。あなたたちならきっと上手くいくわ。」
結依の提案で急遽モデルをやることになった3人。
杉本に案内され、面接を行ったあと、3人は控え室に案内された。
*
スタッフ「着替えまであと30分、現場入りまであと1時間です。ごゆっくり。」
そう言うと控え室の扉を閉めた。
胡蝶「はぁ…。」
控え室。
ドレッサーや畳などが置いてあり、ホテルの一室のようだった。
緋月「ねぇすごいよ、ここ。鏡がひっろーい!」
小夜「あんまはしゃがないの。」
緋月「えー、だって、来たことないんだもん。」
胡蝶「一般人勧誘のモデルの割に本格的だな…。」
小夜「どんなモデルだとしてもちゃんと用意されるんだよ。」
緋月「小夜っちは控え室入ったことあるの?」
小夜「子供の頃に少しだけ。母の付き添い。」
緋月「それ、小夜っちの方が付き添いじゃん!」
胡蝶たちは控え室を隅々まで見て回ると、やがて畳のあるところに座った。
胡蝶「しかし…とんでもない事になったな。」
緋月「俺っちたちがモデルなんて。」
小夜「思ってもいなかったな。」
本当は、胡蝶だけがCaramelのモデルをするはずだった。しかし、3人になったことから、胡蝶は少し楽になっていた。
胡蝶「だが、少し気が楽になった。」
緋月「ほんと?」
胡蝶「あぁ。1人で何も分からないモデルに放り出されるのと、友達と一緒に出るのでは訳が違う。」
緋月「えっへへ、胡蝶のくせにいいこと言うじゃん。」
胡蝶「くせにとは何だ。」
すると、小夜は2人の顔を伺うように言った。
小夜「あの…、今まであまり話してこなくて、ごめん。」
緋月「?」
小夜「母のこと。」
胡蝶と緋月は思い出したように反応した。
胡蝶「そうだな。少し聞いてはいたが、小夜から直接聞いたのは初めてだった。」
緋月「俺っちも。」
小夜「…もう分かると思うけど、あの人が俺のママ。茉莉衣結依。女優よ。」
緋月「茉莉衣結依さんって、確か、春くらいにやった『雨音と花と。』に出てなかった?」
小夜「うん。出てた。」
「雨音と花と。」とは、結依が主人公を務める恋愛ドラマだった。
放送当時には街の中にポスターや広告が貼られるほど人気だった。
緋月「主人公の役だった。」
胡蝶「そうなのか?」
緋月「うん。俺っち見たことある!」
胡蝶「でも、広告ではよく目にするな。」
小夜「あとは、去年の冬の映画『耳のいい母』とか。」
緋月「どんな役だったの?」
結依「主人公の友人、瀧川七海。」
結依の声が聞こえて振り返ると、控え室のドアは開いていた。
おそらく、結依が勝手に開けたのだろう。
結依「あの役は難しかったわー。」
緋月「あ、茉莉衣結依さん!」
結依「結依でいいわよ。あんたたちなら。」
緋月「じゃあ、結依さん!」
小夜「やめてよ、恥ずかしい。」
結依「いいじゃない。」
胡蝶「ところで、結依さんは何をしてるんですか。」
結依「あーそう。3人に話があってね。」
結依は3人の輪の中には入った。
結依「まず最初に…3人とも、急なモデルの参加に付き合ってくれて、ありがとうね。」
小夜「…うん。」
結依「早速なんだけど…3人は一緒に写りたい?それとも、別々がいい?」
結依の問いに緋月が質問をした。
緋月「どっちでも大丈夫なんですか?」
結依「えぇ、杉本さんから聞いたのよ。『あの3人は仲が良さそうだから、一緒の写真に写った方が映えそうだ。』って。」
胡蝶「それは、有難いことですね。俺たちが決めようか。」
小夜「そうだね。」
3人は目を合わせた。
胡蝶「結依さん、一緒に写っても大丈夫ですか。」
結依「えぇ。じゃあ決まりね。」
緋月たちは嬉しそうにしていた。
緋月「やったぁ、みんなで写れるよ。」
小夜「…ところで。ママは、Caramelのモデルになったの?」
結依「えぇ。今回だけね。来月号のCaramelの表紙に、私が写らせていただくの。」
胡蝶「表紙なんですか?」
結依「そうよ。私も撮影が楽しみよ。それに…少しだけ雑誌の中身の部分に関わるから、撮影に協力できそうよ。」
結依はニコニコしながら3人の顔を見た。
胡蝶「わざわざ、ありがとうございます。」
結依「いいのよ。せっかく来てくれたんだし。それに、滅多にできない体験よ。楽しみなさい。」
3人「はい!」
そんな話をしているうちに、スタッフが控え室に訪ねてきた。
スタッフ「桜暦さん、茉莉衣乱夢さん、藤本緋月さん。お着替えの時間ですよ。」
緋月「今行きます!」
3人は隣のルームへと案内された。
結依「……。」
部屋を出ていく3人。
静かに見守る結依。
結依「…乱夢。良かったわ。」
そう言うと、結依も控え室を出ていった。




