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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【過去編】聖雷と影楼の出会い(2)


*

 

 宿のリビング。

 

聖雷「あ、マーリンさんおかえり!」

マーリン「ただいま。」

 

 聖雷がフロアで待っていると、マーリンが帰ってきた。

 

マーリン「山道の危ないものを撤去してきたわ。…これで、聖雷が森の中で遊んでも怪我しないわ。」

聖雷「ほんと?やったー!」

 

 聖雷はシユウと一緒に喜んだ。

 

マーリン「ちゃんとお留守番できた?」

聖雷「うん、…あのね!今日、やどに男の子がきたの。」

マーリン「え。」

聖雷「かみが長くて目がむらさき色の男の子。」

マーリン「そうなの!?」


 マーリンは心配した様子だった。

 

聖雷「…でも、すぐにげちゃった。ぼくが話しかけたら、でていっちゃったんだ。」

マーリン「その子は…私のことを探していたんだね。」

聖雷「たぶん、そうだとおもう。」

マーリン「聖雷、あまり詳しくは話していなかったね。」

 

 すると、マーリンは台座に座った。

 

マーリン「その子は、影楼っていうのよ。」

聖雷「カゲロー?」

マーリン「聖雷より、2つくらい上かしら。」

聖雷「そうなんだ!」

マーリン「聖雷と出会ったあとね、もう1人、森で子供を見つけたのよ。それが影楼。影楼は森に秘密基地をつくっていたの。そこで暮らしているのよ。」

聖雷「ひみつきち?」

マーリン「えぇ、小屋みたいのをね。私は影楼に森で生きていく上での知識を教えているのよ。」

聖雷「どんなことを教えているの?」

マーリン「うーん…。例えば、木の実のとりかたとかね。」

聖雷「ぼくも知ってるよ!」

マーリン「でも、聖雷は危ないからだめよ。木を登るのにはまだ幼すぎるわ。」

聖雷「ぶー。」

マーリン「あの坊やには小屋を一人で作るだけのスキルがある。だから、教えようと思ってたのよ。」

聖雷「ぼくも、大きくなったらやる!」

マーリン「そうね。…そうだ!」

 

 マーリンは聖雷に笑いかけた。

 

マーリン「聖雷、シユウ。今から影楼の小屋に行きましょう。」

聖雷「えぇ。」

マーリン「会わせてあげるわ。」

聖雷「……いく!」

 

 マーリンは聖雷とシユウの肩を撫でると、一緒に宿を出た。

 

*

 

 

 影楼の小屋。

 椅子に座り、思考をめぐらす影楼。

 

影楼「うぅ…びっくりして逃げてしまった。…にしても、あの少年は…宿の人か?」


 机の上にある自分で描いた森の地図を眺めながら、宿の位置を確認した。

 

影楼「…やっぱり、謝りに行こう。マーリンさんの居場所をつかめるかもしれないし。」


 影楼が小屋を出ようとした。

 その時、ドアがノック音が聞こえた。

 

影楼「!?」

 

 外から聞こえてくるのは、マーリンの声だった。

 

マーリン「影楼、ちょっといいかしら。」

 

 影楼はすぐにドアを開けた。

 

影楼「マーリンさん!」

 

 ドアの向こうにいたのは、マーリンと、さっきの少年と猫だった。

 

影楼「あ!」

 

 少年と目を合わせると申し訳ない気持ちになった。

 

少年「…。」

影楼「…さっき、人だよね。」

少年「うん。」

影楼「ごめんなさい…。逃げちゃって…。」

少年「うん、へーき。」

猫「にゃん。」

 

 影楼は頭を下げた。少年は笑っていた。

 

マーリン「ふふ、2人とも初めましてよね?この子が聖雷よ。子猫がシユウ。」

聖雷「せいやです。よろしく!」

影楼「よろしく…。俺、影楼。この小屋で暮らしてる。」

 

 すると、マーリンが懐から袋を取りだした。

 

マーリン「土おこしが終わったみたいね。種を植えましょう。聖雷たちも一緒に。」

 

 袋には種と苗が入っているようだった。

 

聖雷「ぼくもいいの?」

マーリン「えぇ、やるわよ。」

影楼「…うん。」

 

*

 

マーリン「まず、土を掘って。」

聖雷「うん!」

 

 聖雷がスコップを持ち上げて土を掘ろうとするが、スコップが重くてよろけてしまう。

 

聖雷「うわぁ!」

 

 すぐに支える影楼。

 

影楼「大丈夫?」

聖雷「うん。…ありがとう。」

 

 聖雷と一緒スコップを持ち、穴を掘る。

 

マーリン「いいわね、そのくらいよ。それじゃあ、苗を植えるわ。」

聖雷「うん!」

マーリン「この種は、なんの実がなるかわかる?」

 

 マーリンは苗の先の種を聖雷たちにみせた。


聖雷「すいかかな…?」

影楼「リアンの実。」

マーリン「正解よ。」

聖雷「かげろうくん、すごい。」

影楼「リアンの実は、小玉のメロンくらいの大きさで、甘くてまろやかな味が特徴なんだ。そのまま食べてもすごく美味しいぞ。」

聖雷「そうなんだ!」

 

 影楼はマーリンから苗を受け取ると、土の中に埋めた。

 

聖雷「ぼくもやる!」

 

 聖雷も一緒に埋めた。

 

マーリン「これで、種を周りに少し巻いて、と。」

 

 マーリンは種をパラパラと巻いた。

 

マーリン「水をあげないとね。池の水を持ってきてくれないかしら。」

聖雷「らじゃ!」


 聖雷はじょうろを持っていくと、水を汲んだ。

 

マーリン「…聖雷、ちょっと抜けてるけど、すごく頑張り屋さんなのよ。お兄さんになったつもりで接してあげて。」

影楼「うん。」

マーリン「影楼も、いつでも甘えてきていいからね。」

 

 マーリンは影楼の頭を撫でた。

 

影楼「別に…!俺はいい。」

マーリン「ふふふ。」

 

 聖雷が戻ってくると、苗を埋めた場所に水をあげた。

 

聖雷「おおきくそだちますように。」

シユウ「にゃー。」

聖雷「実がなったら、シユウもいっしょに食べようね。」

シユウ「にゃ!」

 

 マーリンは、聖雷と影楼に微笑みかけた。

 サバイバルの知識を教える者が増えたことや、二人が仲良くなったことに安心した。

 

 その後今まで通り、聖雷は宿で暮らし、影楼は小屋で暮らした。

 お互い、あまり会うことは無かったが森で一緒に暮らしている仲間として支え合っていたのでした。

 

 

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