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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【98話】ムカデの練習


 小夜たちの中学校の校庭。

 3-Aは体育の時間だった。

 

 チャイムが鳴ると生徒たちが整列しだし、体育の先生がやってきた。

 

 先生の周りで体育座りで座って話を聞く生徒たち。

 

体育の先生「みんな聞いていると思うが、3年生の学年種目はムカデ競走だ。クラス別で戦うことになるぞ。」

 

 体育祭でムカデ競走をすることに決まった3年。女子→男子とムカデで先頭の人のタスキを渡したレースだった。

 クラスメイトたちが口々に意見を言う。

 賛否両論だった。

 

体育の先生「先に女子のムカデが走って、次に男子のムカデが出発するんだ、いいか?」

 

 生徒たちが返事をする。

 

体育の先生「それじゃ、練習開始!」

 

 クラスメイトたちは男女別になり、ムカデの足を用意し始める。

 その横で、体育座りをしている男子生徒。

 緋月だった。

 

緋月「ムカデかぁ…。」

小夜「ひっきーもやるんだよ。」

 

 小夜が緋月の手を引っ張ろうとする。

 

緋月「分かってるよ…。」

小夜「動かないとでしょ。」

緋月「お、小夜っち、珍しくやる気あるね。」

小夜「いや…別に。」

 

 緋月が小夜のほっぺをつんつんする。

 小夜は払い除ける。

 

小夜「最後だし…さすがにやらないと。」

緋月「そうはいってもさー。俺っちムカデ苦手だから倒れちゃう。」

小夜「まぁ、わかる。」

緋月「転んだら痛いし。」


 すると、クラスメイトから緋月が呼ばれる。

 

男子生徒「藤本ー、男子こっちだぞー。」

緋月「今行くー!!」

小夜「…仲良さそうだね。」

緋月「まだ、良くはないけど。…じゃあ、行ってくるね。」

小夜「うん。」

 

 緋月は男子の所へ向かった。

 小夜も女子の所へ向かうと、ムカデの練習が始まった。

 

──────────────────────

 

 A組男子。

 

男子生徒1「よし、まずは配列を決めるぞ。」

男子生徒2「おー!」

男子生徒3「みんな、集まって。」

 

 体育委員の男子生徒を中心にムカデの配列を決めようとする男子。

 

緋月「(…俺っち、前はやだな…。)」

男子生徒2「前の先輩方がやってたの見てたけど、先頭は野球部だったぜ。」

男子生徒4「ガタイ良い奴がいいよな。」

男子生徒3「そうだね。」

男子生徒2「じゃあ、俺にするか?」

男子生徒4「うーん……柔道部のあいつでもいいかもな。…な?」

男子生徒5「え、俺?」

男子生徒3「それとも、体育委員がやる?」

男子生徒2「いいね!」

男子生徒1「擦り付けるな…。」

 

 男子生徒たちがふざけつつ、先頭の押しつけあいを始めた。

 

緋月「(…うーん、全員先頭出来そうなのになぁ。)」

男子生徒6「あ、そうだ。…お前、やってみろよ。」

 

 男子生徒6が話しかけたのは、緋月だった。

 

緋月「え!?」

男子生徒6「そうだよ、藤本くらいなら行けるでしょ。」

男子生徒2「そうだなー。」

緋月「え、ちょっと、勝手に…」

男子生徒1「藤本でいいかー?」


 男子生徒たちはほぼ全員が賛成した。

 

緋月「…そんなぁ…。」

 

 緋月が途方に暮れていると、男子生徒たちはとっくにムカデの足をつけ終わっていた。

 

男子生徒2「おい、藤本。早くしろよ〜。」

男子生徒3「先頭だろー?」

 

 仕方なく先頭につき、足をつける。

 

緋月「くそぉ…。(こういう時だけ団結するんだから…。)」

 

 男子たちの練習は始まった。 

 

──────────────────────


 A組女子。

 

女子生徒1「どうしよっか。順番。」

女子生徒2「私後ろやる!」

女子生徒3「2は去年後ろだったもんね。あたしは2の前がいい!」

女子生徒4「5と6と私で並んでもいい?」

女子生徒7「先頭はやだ…。」

 

 口々にものを言う女子生徒たち。

 

小夜「(はぁ…。どうして、女子というものは皆仲良い人同士で固まりたがるのか。)」

女子生徒2「じゃあさ、背の順とかでいいんじゃね?」

 

 すると、女子生徒からの視線が一斉に小夜の方を向く。

 

小夜「あ…。」

女子生徒5「さんせーい!」

女子生徒4「何事もやってみなきゃね。」

女子生徒7「いいね。」

女子生徒2「やっぱ背の順が1番いいかもね。」

女子生徒1「そうだね、それがいいかも。茉莉衣さん、先頭よろしくね。」

小夜「え…。」

 

 この時間の練習でムカデの先頭になった小夜。

 女子もこれでムカデの練習に取り組むことになった。

 

*

 

 

 やがて学校が終わり、夕方になった。

 帰り道。

 

小夜「ひっきー。」

緋月「あ、小夜っち。」

 

 教室を出て、学校を出ようとすると小夜に引き止められた。

 

小夜「一緒に帰らない?」

緋月「言われなくても!話そ!」

 

 2人は帰り道の途中にある公園で少し話して帰ることになった。

 

*

 

 公園のベンチに座る2人。

 

小夜「…疲れちゃったよ、今日は。」

緋月「俺っちも。体育祭の練習、まさかあんな事になるとは思ってなかったよ〜。」

 

 2人とも、生徒たちの意見で先頭になったので、どっと疲れていた。

 

小夜「…ひどいよね、勝手に決められて。」

緋月「先頭って、なんかこう、後ろに引っ張られるし、どこにも掴まれないから怖いんだよね。」

小夜「うん…。絶対筋肉ムキムキの人の方がいいのに、なんで俺なんか…。」

緋月「ほんとだよね。」

小夜「でも、最後の体育祭だからってみんな張り切ってる。そこで断るのは良くないのかも…。」

 

 そんなことを話していると、公園の外で知っている人を見かけた。

 胡蝶だった。


緋月「あ、胡蝶。」


 胡蝶はこちらに気がついたらしく、向かってきた。

 

小夜「買い物?」

胡蝶「あぁ。影楼に頼まれてな。」


 胡蝶の手にはビニール袋。

 

緋月「かげろっちが買い物とか、変なのー。」

胡蝶「別にいいだろ、買い物くらい。」

緋月「チッ…。(舌打ち)」

 

 険悪な雰囲気になるが、小夜が止める。

 

胡蝶「それで、小夜たちは学校帰りか?」

小夜「うん!」

緋月「体育祭の練習の話をしてたんだ。」

胡蝶「そろそろか。」

小夜「うん。ムカデ競走をやるんだけど…。」

 

 小夜は胡蝶に今日あったことを話した。

 

小夜「…ということなの。」

胡蝶「なるほど…。」

緋月「どうやったら、上手くいくかな…?」

胡蝶「そうだな…。自分たちのできる所を生かしたらどうだ…?」

小夜・緋月「?」

 

 胡蝶は少し考えると、話し始めた。

 

胡蝶「例えば、小夜は頭が回る。作戦を考えて体育委員やクラスメイトに話してみたらどうだ?」

小夜「…。」

胡蝶「ムカデ競走ってスピードや団結が大事だろう?なら、それを伸ばすための作戦が必要になってくる。…小夜ならできるさ。」

小夜「ありがとう。」

胡蝶「緋月は…。」

緋月「うん!」

 

 一瞬の沈黙ができる。

 

緋月「…俺っちは…ないの?」

胡蝶「まだなにも言ってないだろう。…緋月は、誰にも負けない頑固さを持ってる。その意志があれば、クラスメイトをまとめたりやる気にされることは出来るはずだ。」

緋月「なるほど!」

胡蝶「頭は回らないが。」

緋月「…うぅ。」

 

 すると、緋月は立ち上がった。

 

緋月「よし、それじゃあ、明日の練習からやってみなくちゃ!」

小夜「そうだね。」

 

 緋月はテンションが上がり、目を輝かせた。

 小夜は胡蝶に礼を言うと、各々が帰路についた。

 

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