【10話】マーリンからの課題
緋月が宿に入ると決めて数日後。
すごく天気が良かった。
海が干からびるんじゃないかと思うくらいの暑さだった。
聖雷の部屋のベランダで、緋月と聖雷が溶けたように寝そべっていた。
シユウは部屋の中で寝ていた。
緋月「あーちぃ。」
聖雷「うぅ…。」
すると、外から足音がした。
緋月「ん?誰か来るよ!」
聖雷と緋月がベランダの柵に身を乗り出すと、宿の前に小夜が来ていた。
聖雷「あ!小夜だ!」
小夜は宿の中に入っていった。
聖雷と緋月は急いでフロアに行った。
*
小夜「こんにちは。」
フロアにいたマーリンが小夜に気づく。
マーリン「あら、小夜ちゃん。また来てくれたの?」
小夜「はい。なんか、気になって。」
聖雷と緋月が階段を駆け下りてくる。
フロアにいる小夜を見つけた。
緋月「小夜〜!」
小夜「あれ、来てたの!?」
緋月「俺っち、もうここで暮らすことになったからね。契約上はまだだけど。」
小夜「暮らす?」
聖雷「うん。部屋ができるまでは僕の部屋に泊まってるよ。」
マーリン「ふふ。緋月が暮らすことになっても、遊びに来てもいいのよ。全然。」
小夜「はい。お言葉に甘えて…。」
すると、胡蝶がフロアに来た。
胡蝶が小夜に気づく。
胡蝶「む。」
小夜は胡蝶に気づいた。
小夜「宿の方ですか…?」
胡蝶「ああ。」
小夜「初めまして。小夜と申します。ただ、友達と遊びに来ただけです。」
胡蝶「胡蝶。よろしく頼む。」
胡蝶と小夜が挨拶をする。
緋月「小夜、あのクソとすぐ仲良くなってる。俺っちのときはどんだけかかったと思ってんだ。」
胡蝶「…聞こえているぞ。」
緋月「あっごめん。俺っちってば、本音が漏れちゃった。」
胡蝶「一生しゃべらなくしてやってもいいんだぞ。」
緋月が胡蝶をからかいはじめる。
それにつっかかる胡蝶。
聖雷「ま、まぁ…。」
小夜「いつもこんな感じなの…?」
聖雷「うん。胡蝶とひっきーは昔からの知り合いみたい。」
小夜「へぇ。」
聖雷「でも、今日は賑やかだな。」
マーリンが胡蝶と緋月を割ってはいるように4人の前で話をする体制に入った。
マーリン「聖雷。胡蝶ちゃん。緋月ちゃん。小夜ちゃん。あなたたち4人に話があるの。」
マーリンの言葉に、話をやめた。
マーリン「緋月ちゃんが正式に宿に入るにあたって、4人に課題を与えようと思うの。」
聖雷「課題?」
マーリン「ええ。ちょっとしたゲームのようなものだわ。」
緋月「おぉ!ワクワクしてきた!」
マーリン「もちろん、報酬もあるわよ。」
聖雷と緋月はワクワクしながら話を聞き、
胡蝶と小夜は冷静に話を聞いている。
マーリン「宿に入ることに関して全く関係ない小夜ちゃんを巻き込んでしまって申し訳ないわ。でも、一緒にやってあげて頂戴。」
小夜「はい…。」
緋月「そんで、課題ってどんなの?」
マーリン「森の中に暮らす、“影楼”という人物を探して宿までつれてくることよ。」
聖雷「…!」
緋月「誰だ?」
マーリン「いきなり知らない人の名前を言われても難しいだろうから、影楼についての情報をいくつかあげるわ。まず、影楼は池の近くに家を建てている。ただし、家にいることはあまりない。つまり、どこにいるかはわからないわ。
緋月「池なんてあったの?」
聖雷「うん。あるよ。」
胡蝶「だが、結局は探せってことだな。」
マーリン「あと、影楼は警戒心がかなり強いのよ。知っている人じゃないと無闇に近づかない。本当に怪しまれたら、縄で縛られてしまうかもしれないわ。」
小夜「えぇ…。縛られる…。」
胡蝶「その話を聞いてる限り、影楼ってやつを宿に連れてくるのさえ難しい気がするが。」
マーリン「私の名前を出して宿に連れて行く分には大丈夫だと思うわ。もしあなたたちが宿に連れてくることに成功したら、宿の改築をさせて貰えるわ。」
緋月「おお!俺っちの部屋ができるんだ!」
マーリン「まぁ、影楼から見ると誰も知らない人たちがいきなり来るのも嫌だろうから、聖雷をメンバーに入れたのよ。」
聖雷「そういうことなんだ。」
小夜「影楼を、聖雷は知っているの?」
聖雷「うん。昔からの知り合いだよ。あまり会ったことないけど。」
緋月「それは心強い。」
4人は希望が見えてきたのか、自信に溢れていた。
マーリン「期限は明日までだわ。出来なかったら宿の改築は出来ないわね。」
マーリンの課題に、4人は覚悟を見せた。
緋月「俺っち、頑張ります!」
聖雷「影楼くんと会ってくる!」
胡蝶「了解。」
小夜「はい。」
4人は顔を見合わせると、森へ向けて走り出した。