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グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


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56 つながる!

 次の日、カオル先輩は学校に来なかった。


 そして、その次の日も来なかった。


 ……。


 ……。


 えーっと。


 二手に分かれて後で合流しようって話だったよな。あの時は、その方が逃げられる可能性が上がると思って納得した。納得してしまった。


 で、何処で合流するんだ?


 合流先を聞いていなかった!


 焦ってうっかりしていたよ。俺らしくないうっかりミスだ。


 こうなってしまっては心当たりをまわるしかない。そう思って、その日に立ち寄ったコーヒーショップ、初めて出会ったCDショップ、新田先輩と戦ったライブハウスの跡地……とにかく思い当たる場所を巡ってみる。だが、その何処にもカオル先輩は居なかった。出会えなかった。


 で、だ。まぁ、学校で会えば良いかと思って学校に来てみれば、その本人が登校していない。


 カオル先輩って、そういえば、もともとあまり学校に来ないって感じだったか。いや、でもさ、あんな出来事があった後で合流出来なかったのに、学校に来ないなんてことがあり得るか? あり得ないよなぁ。


 何かがあったのか?


 俺は無事に逃げ切れたが、まさか警察に捕まったのか? あのカオル先輩が? それこそあり得ないよなぁ。それに、だ。警察に捕まっているなら、その話が学校に来てそうなものだ。だが、教師陣の動きを見ても、何かあったような感じではない。通常営業だな。


 せっかく手がかりを掴んだと思ったのに、その答えを知っているカオル先輩が登校してこないとか――いや、もしかしてわざと俺に会わないように隠れている……のか? あり得そうだな。


 それだけ例の事件の裏に居る人物に会わせたくないってことか? 誰だ? 俺が知っている人物なのか?


 うーん、分からない。


 しかし、これで手詰まりか。カオル先輩が学校にやって来るまで待つか? 確かにそこまで焦っているワケじゃない。待つのも有りだ。


 だけど、ああ、だけどさ。


 このままにしておくのは不味い気がする。何というか前世で培われた危険に対する勘というか、そういったもの全てが待つな、攻めろと告げている。


 でも、どうするのか? どうすれば良いのか?


 このまま全てを忘れて、手に負えない事件だったと諦めて逃げ出すか? 俺は、所詮、何処にでも居る普通の高校生だからな。ちょっと、前世の知識があって、ちょっと喧嘩に強くなった程度だ。漫画の主人公みたいに特殊能力が扱えたり、俺をバックアップしてくれるような秘密の組織があったりはしない。


 孤独で普通な高校生だ。


 ん?


 孤独?


 ……。


 俺はA組の教室を目指す。


「江波、ちょっと良いか?」

 そう、困った時の江波えもんだ。

「何ですか、有馬君」

 こちらへと振り返った江波は、何処か呆れたような顔をしていた。少し不機嫌そうでもある。あれれー、俺、何かやったかなぁ。


「例の件だけどさー」

「どの例の件かな。有馬君には色々と突っ込まれて方向修正大変で困ってまるから、分からないよ」

 んー。


 敵の敵は味方って感じで共闘していたと思ったんだけどさ。俺、何かまずったか。


「江波は黒幕が誰だったのか知ってるのか?」

 江波が肩を竦める。知らない、もしくは答えたくない、か。

「そうか。ところでカオル先輩が学校に来ていないみたいだけどさ、会う方法ってあるかな?」

「普段からあまり学校に来ない人でしょ。気分で学校に来てるんだよね。だったら、学校に来るまで待てば良いと思うけど?」

 ……江波はカオル先輩のことを知っているんだな。さすが、というか、まぁ、今回の事件を把握するためにも調べるか。

「いや、来ないのはおかしいんだよ。このままだと不味い気がする。だから教えて欲しい」

「……はぁ」

 俺を見ている江波が大きなため息を吐き出す。


「自宅とか知らないか?」

「それはやめた方が良いかな。そうそう、そういえば、今度の日曜に駅前広場で市長演説があるって聞いたなぁ。面白そうだよね。うん、僕が言えるのはそれくらいかな」

 ん?


 市長演説?


 それが何だって言うんだ?


 いや、この話の流れで江波が事件に関係のないことを言うとは思えない。話題を無理矢理変えるために話したってことはないだろう。


 となると、それが鍵なのか。


 しかし、日曜まで待つのは……いや、そこまでは大丈夫ということか。


「サンキュー、江波。頼りになるぜ」

「朝刊に載らない程度に頑張ってください」

 不吉なことを言う江波と別れる。


 そして日曜。


 俺は駅前広場で市長演説が始まるのを待っている。


 今期の市長は市の発展に精力的で、しかも男前だってこともあり、かなり人気のようだ。すでにかなりの人だかりが出来ている。前が見えないくらいだ。いやー、俺は引き籠もっていたからね、新しい市長のことなんて全然知らなかったんだけどね。


 って、ん?


 俺はそこで見たことのある顔を見つける。この間の刑事だ。私服だが間違いない。


「こんにちは、刑事さん」

 演説が始まるまでの暇つぶしがてら話しかけてみる。

「ああ、こないだの坊主か」

「刑事さんも市長の話を聞きに来たんですか?」

「いや、オフでは……いや、それよりも坊主、なんで俺が刑事だと思ったんだ?」

 ん?


 この人、刑事だよな? 警備の警察官じゃないよな。私服で隠れて守っているとかじゃないよな。


 そうだよ。なんでここに居る?


 何だ?


 この市長演説で何か起きるのか?


「警官が敬礼していたから、多分、そうかなーって思っただけです」

「そうか。お、坊主。市長のありがたい演説が始まるようだぞ」

 そう言った刑事の顔は、ありがたいと思っているような感じではなかった。胡散臭いものを見る顔だ。


 俺も現れた市長を見る。


 その顔を見る。


 ……。


 ……あ。

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