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グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


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54 やくそく!

 まぁ、これで危険はなくなった。ゆっくりとお話が聞けるな。ちょっと得意気な雷人は無視しよう。


「これでお前を助けてくれるヤツは居なくなったぜ。さあ、キリキリ喋るんだな!」

「もう全て喋った! 俺はお金のためにやっていただけだ。何も知らねぇ」

 金のためにやっていた? 確かにそうだろう。この頬傷のおっさんは下っ端――ただフロント企業を任されただけのちょっとだけ偉くなった下っ端だろうな。


 で、その下っ端さんが欲を出して手を出したのが、今回の薬、か。


 まぁ、知らないってのも本当なのだろう。


 でもさ、知ってることもあるよな。


「知らない? じゃあ、どうやって薬を受け取っているんだよ。おかしいよなぁ」

 そうなんだよな。相手の素性を知らなかったとしても薬の入手方法は分かっているはずだ。それに、だ。コイツらみたいな暴力を糧として生きているようなヤツらが、いくら金になるからって、そうほいほいと相手を信じて薬を受け取って売りさばくとは思えないんだよな。


 まぁ、実際に広めたのは竹原で、それには竹原なりの思惑と理由があったんだろうが、今、その辺りのことは、どうでもいい。どうでもは良くないが、もうけじめをつけて終わったことだ。


 今はコイツだ。


 何故、言わない。


 何故、言えない。


 おかしいよな。


 義理人情で誰かを庇ってるから言えない、なんてタマじゃないよな。


 となると言えないのは、それだけヤバいからか?


 それとも本当に知らないのか?


 何処からか突然薬が降って湧いたように置かれていて、さらにお金を用意してくれる? んなことはないよな。


 だってさ、コイツら、薬の効果を確認するために医者に連れて行っているんだからな。つまり、医者は関係者だってことだ。そいつとの接点があるのに、知りませんは通らないよなぁ。


 しかし、そうなると言えない理由は何だ? こういう輩は裏がありそうな話なら逆にそれをネタにして強請りそうなものだが、うーん。口を割らないのは、それだけヤバいか、こいつ自身の弱みを握られているか、か。思っていたよりも口を割らせるのが難しそうだな。


 ん?


 と、そこで外の方が騒がしくなる。


 うー、うー、とサイレンの音が近づいてきている。


 ……。


 サイレン?


 って、警察か!?


 いくら路地裏の怪しいビルだって言っても何発も拳銃の発砲音が響けば通報されるか。って、不味くないか。こんな状況で警察と出くわすのは不味い。いくら正当防衛だって言ってもそれが通じるかどうか分からない。下手すれば,コイツらの仲間だと勘違いされて捕まるかもしれない。


 だが。


 だが、だ。


 ここまで来て逃げるのも、な。


 ……。


 いや、ここらで終わりにしても良いのか。


 湖桜高校(クラウン)に絡んできた連中は全て倒した。もう充分だろう。


 そうだ。終わって良いんだよな。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 とまぁ、そこで終わりに出来たら賢いんだろうなぁ。


 俺は馬鹿だからな。ああ、大馬鹿さ。とことん最後までやらないと気が済まないんだよ。


 こんな中途半端で終われるかよ。


「おいおい、さすがに不味いって逃げようぜ」

 ドレッドへアーが雷人の服の袖を引っ張っている。


 あー、コイツらが居たか。まだ残っているとか、うん、邪魔だな。


「雷人、そいつを連れて逃げろ」

「おい。お前はどうするつもりだ」

「吐くだけ吐かせるつもりだ。まぁ、警察のご厄介になるつもりはないから、ある程度で切り上げてすぐに逃げるさ」

「しかし……」

 雷人は何処か納得出来ないという様子で俺を見る。

「あー、俺と戦う約束だろ? 俺は俺がした約束は破らないんだよ。だから、行きな!」

「ちっ、分かったぜ」

 雷人がドレッドへアーを連れて事務所を出る。


 これで後は……。


「たいっちゃん、『俺』には言わないのかなー?」

 カオル先輩か。


「カオル先輩なら適当にやって、適当に逃げられるでしょ」


 さて、と。


「と言うワケでキリキリ吐きやがれ。お前も警察のご厄介になるのは嫌だろう?」

 俺はポケットに手を突っ込む。中に入っているのはいつものようにボールペンだ。こいつを使って、この野郎をどう脅してやろうか。


 サイレンの音はかなり近くなっている。もう殆ど時間は残されていないだろう。


 さあて……って、ん?


「たいっちゃん、ちょっと待ってね」

 カオル先輩が頬傷のおっさんに近寄る。そして、何かをささやく。何だ? なんて言った? 良く聞こえなかったぞ。


 頬傷のおっさんの顔がみるみる青ざめていく。


 何だ? 本当に何を言ったんだ?


「たいっちゃん、逃げようぜー。心当たりが的中だったからさー」

 心当たり?


 ……。


 まぁ、これでこのおっさんから情報を得なくても良くなった……のか?


 ……。


 うーん、何だか、いや、もう時間がない。ここはカオル先輩を信じて逃げよう。

「カオル先輩、後で話を聞かせてくださいよ。っと、それでそいつはどうしますか?」

 そいつというのはご機嫌な様子で気絶している竹原だ。


「うーん、置いていこうよ」

「へ?」

「だってさー、事情を説明する人が必要っしょ」


 ……。


 確かに。


 じゃあ、サクッと逃げますか!

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