残酷でしてよ
最近、兄貴の様子がおかしい。
前からおかしかったけど、今の兄貴はもっとおかしい。でも、前よりはマシかもしれない。でも、おかしい。
以前はデブで気持ち悪くて引き籠もっている最悪だった。最近は少し痩せて普通ぽくなったけど、でもでも、無理。
最近、痩せて調子に乗っているからか気軽に声をかけるようになってきたし、本当に無理。
おかしい。
もうどうしようもないくらいに追い詰められていたのに、おかしい。
多分、湖桜高校に通い始めてからだ。
「ね! そう思うでしょ」
「思わない」
この子は私の親友のチエちゃんだ。
「いや、チヨだからね。親友だって言うなら名前くらい覚えてよ」
眼鏡がチャーミングなチエちゃんだ。
「あのさ、うん、ワザとやってるよね。まぁ、いいけどさ。それで、兄貴が変なんだよね。別に無視してたらいいんじゃない?」
「違うの! 今になって絡んでくるから鬱陶しいの!」
大人の余裕的なものを感じることもあるし、せっかく気持ち悪く引き籠もっていたのに台無しだ。
「あー、はいはい」
兄貴の様子がおかしいと思った私は親友のチエちゃんと一緒に尾行する。
「私、巻き込まれるんだ」
チエちゃんは口ではそう言っているがノリノリだ。親友の私なら分かる。
「はぁ、付き合うけどね」
そこで私はちょっとした事件に巻き込まれることになる。
「えーっと、巻き込まれる前提なんだね」
そして、そこで私は王子様に出会う。
「いや、王子様じゃないよね。どうみてもただのヤンキーだったよね」
「違うの! ちょっとワイルドなだけなんから!」
「でも、その王子様、湖桜高校だったよね」
「そうそう、これで私が行く高校は決まったんだから! 制服もおしゃれだし悪くないよね!」
「あの人、湖桜高校って呼び方は嫌がってなかった?」
「そう? でも湖桜高校は湖桜高校じゃん。それより、高校だよ!」
「そうだね。でも、そうなるとお兄ちゃんと同じ高校になるよ? お手伝いも断られたんでしょ」
確かにそこは考えものだ。
せっかく学校に行けなくなるくらい閉じ込めたのに、振り出しに戻っている。
気持ち悪くて、どうしようもなくて、卑屈で、最悪で、死んだ方がマシなほど気持ち悪くて、うじうじした最低の兄貴。思い出すだけでゾクゾクする。
ああ、何か次の手段を考えないと……。




