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グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


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44 まちがい!

 逃げられた!


 何処にも連中の姿がない。二階には先ほどの騒動の影響か迷惑そうな顔でハンバーガーを食べている人たちしか残っていない。


 それもそうか。


 木刀を持った相手と戦うなんて騒動になったんだもんな。余程の馬鹿でなければ面倒事が起こる前に逃げるよな。


 って、っ!


 俺は慌てて二階の窓から外を見る。


 騒動?


 そうだよ。


 不味いッ!


 急いで階段を駆け下りる。そのまま店の外に出る。


 逃げろッ!


 二階の窓から見えたのはこちらへ向かっている警察の姿だった。そうだよな。騒動になったんだ。警察が来るよな。だが、思っていたよりも早い。いや、もしかすると木刀騒ぎよりも前にハンバーガーショップの二階が子どもに占拠されているって感じで警察を呼ばれていたのかもしれない。


 とにかく逃げよう。


 善良な俺が連中の仲間だと思われて捕まったら洒落にならない。


 逃げる。


 警察に捕まらないように逃げる。


 ハンバーガーショップからある程度離れたところで気配を消す。気配を消して通行人の流れに紛れ込めば、警察が俺を見つけることは――連中の仲間だとは思わないはずだ。


 俺は一般人。ただの通行人。


 前世の記憶が甦る。あー、そういえば、昔、海外で武者修行をしていた時に地元のヤバい連中と揉めて、逃げたことがあったなぁ。その時も、こうやって気配を消して、群衆に紛れて、何とか危機を脱したものだ。


 その時の記憶が生きている。完璧な偽装だ。警察は俺を見つけることが出来ないはずだ。


 にしても、だ。


 せっかくの手がかりに逃げられてしまった。


 竹原、か。くっそ暑いのにロングコートを着たままの変人だ。特徴的な狐目を隠すためなのか、サングラスをつけていたな。ヤツらが例の薬をばらまいた、で間違いなかったようだ。雷人はこのことを知っているのだろうか? まさか、あいつも薬に手を出してないだろうな。


 ……。


 湖桜高校(クラウン)に喧嘩を売ったことを思い知らせてやるつもりだったのに、あの木刀君のせいでッ!


 名前はなんて言ったかな? ……あー、いや、木刀君の名前は聞いてないか。


 確か、市内の進学校の学ランだってことだよな? 進学校のヤツが、こんな騒ぎを起こして大丈夫なのか? 退学とかになるんじゃないか。まぁ、木刀君の心配をして仕方ない。


 俺はどうやって竹原を――連中を探し出すかを考えるべきだ。


 ……。


 はぁ、仕方ない。奥の手を使うか。あまり使いたくなかったが仕方ない。


 !


 と、そんなことを考えている俺の手が何者かに掴まれた。


 まさか警察!?


 俺が振り返る。


 そこに立っていたのは――


「見つけたぞ」

 例の木刀君だった。


 お前かよッ!


「存在感の薄い、普通の感じを醸し出しているから気付かれないと思ったのだろう? だが、着替えなかったのは失敗だったな。服装はしっかりと覚えている!」


 ……。


 何だよ、普通ぽい感じって。


 くそっ、俺の気配消しを見破るとは、この木刀君ただ者じゃないな。


「残りの仲間の居場所を吐いて貰うぞ」

 仲間、だと? くそ、俺が知りたいくらいだっての。


「なぁ、お前、進学校に通っているんだろ? こんな問題を起こして大丈夫なのか?」

「な! だ、だ、だ、大丈夫だ。これは悪を裁くための正義の行い。分かって貰えるはずだ」

 絶対、分かって貰えないって。


「悪を裁くって連中が何をやったんだ?」

「白々しい! お前たちがやったことは!」


 ……。


 あー、そうか。


 この木刀君、俺が連中の仲間だと思っているんだな。どうして、そんな誤解をしたのやら。あー、くそっ、この木刀君がいなければ、今頃は全て片付いてたはずなのに。ヤツらの背後に居る存在だって分かっていたかもしれないのにな!


「いや、知らね。どうも勘違いしているようだけどさ、俺は連中の仲間じゃないぞ」

「嘘を吐くな! せっかく掴んだ尻尾、逃がさない」

「いやいや、ホントだって」

「まだ言うのか!」


 ……。


 はぁ。


 俺は大きなため息を吐き出す。何だか苛々してきたな。


「もう面倒だ。相手になってやるよ。ここでは他の人に迷惑がかかる。移動するぞ」

「確かに。悪のくせに少しはまともなことを言うんだな。分かった、移動しよう。だが、この手は離さないぞ」


 ……。


 野郎と仲良く手を繋ぎながら移動、か。


 まったく最悪だ。


 俺と木刀君、仲良く近くの公園まで移動する。


 遊具がなく、ベンチとトイレ、水飲み場、砂場しかないような寂れた公園だ。ここなら暴れても迷惑がかからないだろう。


「いい加減、手を離せよ」

「ああ。だが、逃がさないぞ」

 たく、さ。


 何で、こんなことになっているのやら。


「俺は有馬太一、湖桜高校(クラウン)の一年だ」

「……安藤優だ。お前と同じ一年」


 俺と同じ一年なのかよ。


 はぁ。


 まぁいい。叩きのめす。


 誰に喧嘩を売ったか思い知らせるだけだ。


 俺は拳を構える。


 木刀君も木刀を構える。

「一本でいいのか?」

「構わない。お前相手にはその方が有利だ」


 さて、やるか。

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