表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/66

34 いわかん!

 ペラペラとファイルをめくり新聞を確認する。


 分かっていたけど、結構、大変だな。数が多すぎる。一日でも結構な枚数だ。一日の分量が一枚で済む訳がないからな、当然か。テレビ欄やスポーツ欄などは飛ばして大丈夫だろうけど、うーん。それほど大きな事件扱いはされていないだろうから、一面を飾ってるってことはないよな。その辺も飛ばして大丈夫か。


 探す。


 大体の日付は分かっている。年数も覚えている。探せるはずだ。


 パラパラとめくる。枚数が多いからな、早くめくろう。


「あのー、大切に扱ってね」

 途中で受付のお姉さんから注意が入る。って、あ、まだ、残っていたんですね。すいません。


 手を止め、少しだけ、気持ちゆっくり、丁寧な感じでめくる。早くめくろうと思った瞬間、これだからなぁ。


 ……。


 黙々と探す。


 そして、見つける。


「あった」

 小さな記事だ。


「え? なになに、何があったの?」

 お姉さんがこちらをのぞき込んでくる。いや、だから、何で、まだ残っているんですかねー。


 俺はお姉さんを無視して記事を読む。


『無職の男性、トラックに潰される』

 衝撃的だが簡単過ぎる見出しだ。無職の男扱いなのが泣けるなぁ。


「あ、土地開発の? 話題になったよねー」

 いやいや、俺が探していた記事はそこじゃないから。だから、何で、このお姉さんは残ってるの?


 無視しよう。


 読む。


 記事の内容に目新しい情報はなさそうだ。以前にネットで調べた情報と殆ど変わらない。新聞だからこその情報を期待していたんだが、アテが外れたかもしれない。


 それでも読み進める。


 無職の男性、遠野虎一(三十二歳)……つまり俺がサイドブレーキを引き忘れたトラックに挟まれ死亡したって内容だな。安彦(ヤス)の名前は何処にも書かれていない。事故扱いだ。


 ん?


 ちょっと待て、トラックの運転手の情報が書かれている。運送会社と運転手の名前だ。ネットにはなかった情報だ。


 何でネットにはこの情報がなかったんだ?


 あー、そうか。


 この当時の新聞だから、か。


 今ほど個人情報についてうるさく言われなかった時代だったからな。だから、名前が書かれてしまった。残った。今だったら考えられないな。運送会社のマイナスイメージも大きいしな。


 何処の運送会社か分からないような写真を使ったり、モザイクが入ったりしそうだよなぁ。まぁ、今でも公開される時があるから、一概には言えないけどさ。その線引きなんて俺には分からないけど……とにかく、この事件は本来は公開されない事件だった訳だ。


 ただ、これでネットにはない情報を手に入れることが出来た。


 来た甲斐があったな。


 しかし、どういうことだ? 安彦(ヤス)の名前は、ヤツの本名である岩美安彦の名前は何処にもない。そうだ。ヤスの名字は岩美だったよな。その名字が欠片もない。運送会社やその運転手だって前世の俺とは関わり合いのなかったものだ。


 ……。


 まさか、本当に事故だったのか?


 考えられるのは……?


 平行世界。


 俺は同じ世界だと思っていたが、実は違う世界だったとか。俺の記憶は似たような他の世界の記憶だったとか。前世の記憶が甦るなんて馬鹿みたいなコトがあるくらいだ。


 あってもおかしくない。


 いや……。


 俺は首を横に振る。


 ないな。


 考えすぎだ。


 それに、だ。


 サイドブレーキの引き忘れ?


 あそこはそんなトラックが突っ込んでくるほどの急斜面だったか? しかも、トラックがピンポイントでビルに突っ込む? 突っ込んできたトラックに気付かないほどの間抜けか?


 この事件は色々とおかしすぎるだろ。絶対あり得ないとは言えないが、あり得ないことが多すぎる。


「どうしたの?」

「あ、いえ、調べたいことは終わったので帰ります。ありがとうございました」

 受付のお姉さんに頭を下げる。


「はい。それじゃあ、ちゃんと片付けてね」

「あ、はい」

 新聞の入ったファイルを片付ける。後片付けは大切だよなぁ。


 あ、四コマを見忘れた。ま、それは良いか。そこまで重要なコトじゃない。


 にしても、だ。得られることはあったな。


 今日はもう帰るとして、今後、どうするか、だな。


 トラックが突っ込んだ、俺が住んでいたビルがどうなったかを確認する。今の俺が無意識に避けていたことだな。知ることを恐れていたことだ。

 もう一つは運送会社に行って話を聞いてみる、だな。古い事件過ぎて、当時のことを知っている人がまだ働いているかは微妙だが、何かの情報が得られるかもしれない。


 ……。


 まぁ、焦らずゆっくりとやろう。


 これは俺が、俺自身が納得したいだけの行動だからな。


 俺自身の本業は学生だ。学校生活を楽しむのが一番だ。前世のことは二番だな。いや、体を鍛えるのが二番だから、三番目か?


 まぁ、とにかく急ぎじゃない。


 行くのは今日みたいな放課後じゃあなく、休日だな。今度の日曜日にでも行ってみよう。


 俺は図書館を後にする。


 にしても、何で受付のお姉さんはずーっと残っていたのかな。もしかして俺が新聞を破ったり、乱暴に扱ったりしないか見張っていたのか?


 ……。


 ありえそうだなぁ。


 湖桜高校(クラウン)のことを知っていたみたいだしさ。湖桜高校(クラウン)の評判は悪いだろうからなぁ。まぁ、仕方ない。


 それが湖桜高校(クラウン)だからな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ