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グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


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13/66

13 かいけつ!

 俺は金髪野郎の肩に手を回し無理矢理屈ませる。コイツの方が俺よりちょっとだけ背が高いからな。

「先輩、ちょっと一緒に行きましょうや」

「くっ、この野郎がよぉ」

 俺はそのまま無理矢理金髪野郎を引っ張っていく。端から見えれば肩を組んで仲良しだ。


「離しやがれ。おい、こらよぉ、聞いてるのか。おい、お前のお友達がどうなっても良いのかよぉ、えぇッ!?」

 金髪野郎は騒いでいるが無視する。

「まぁまぁ、先輩、静かに静かに」


 そのまま金髪野郎を引っ張り、校舎裏へと連れて行く。


 うんうん、俺の記憶と校舎のデザインは変わっているが、ここは変わらないな。静かで、人目が殆どない場所だ。変わってても変わらない場所がある。


 懐かしいなぁ。


 さて、と。


「いい加減、離しやがれ。くそッ、なんで外れねぇんだよぉ」

 金髪野郎が肩を動かし暴れる。だが、離さない。俺は離さない。金髪野郎はただ肩を掴んでいるだけにしか見えないのに振りほどくことが出来ない事が不思議なようだ。


 何も不思議じゃないぜ。


 この金髪野郎が力を入れたタイミングを見て、それを流しているだけだ。肩を組んでふれあっているからな。力の流れを把握しやすいからな、これくらいは可能だぜ。


「お、おい、分かってるんだろうなぁ。お、俺にこんなことをすれば、あの野郎が……」

 何か喋っている金髪野郎の肩に上から腕を回し、そのままその肩関節を外す。ばっきりとな。鍛えてないからかあっさり外れたな。


「あがッ! 痛ぇ、痛ぇ、腕があああ!」

 肩を外したくらいであんまり叫ぶなよ。人が来たらどうするんだ。


「お、お前よぉ、この、この、どうなっても良いのかよぉ」

 金髪野郎は涙目だ。


 だが、容赦しない。


「先輩、ちょっと手をお借りします」

「お、おい、何をするつもだぁぁ」

 金髪野郎の手を持つ。そのまま捻る。そして、膝を蹴り、転がす。


「あがッ!」

 金髪野郎が声にならない声で叫び、地面を転がっている。だから、叫びすぎだっての。


「あー、先輩。肩が外れて大変ですね。俺が治しますよ」

 倒れている金髪野郎の上体を起こし、その肩を無理矢理はめる。

「ひ、ひぃ、ひぎぃ」

 無理矢理はめたら痛いよなぁ。分かる、分かる。その痛みは俺も知っているからさ。


 そして、その肩をもう一度、外す。こう、上から下にきゅっとな。


 人間の関節は簡単には外れない。外れないように出来ている。だが、コツがあってさ。いやぁ、昔、海外に喧嘩遠征した時に習った技がこんなところで役に立つなんてなぁ。まぁ、(ぼく)が実際に遠征した訳ではなく、その記憶があるってだけなんだけどさ。


「あ、あ、あ」

 金髪野郎は涙目になって嗚咽を漏らしている。もう叫ぶ気力もないようだ。

「あー、治しますよ。あまり肩をやっていると癖になるらしいですかぁら大変ですよね」

 もう一度、金髪野郎の肩を無理矢理はめる。靱帯が大変なことになっているだろうな。これ以上は、本当にやばいかもしれない。


「やめ、やめ、やめ……」

 金髪野郎は怯えた目で俺を見ている。

「俺、言いましたよね。これ以上やるなら容赦しないって」

 金髪野郎は怯え、涙目で何度も頷いている。

「それを続けたのはそっちだよなぁ。分かってんのかよ!」

 金髪野郎は頷き続けている。


「わか、分かった、分かったよぉ、やめ、やめて、ぐれよぉ」

「分かってくれれば良いんですよ」

 俺の言葉を聞いて金髪野郎があからさまにホッとしたような顔を作る。まだ余裕がありそうだ。


「分かって貰ったところでもう片方も外しておきますか」

「え、ひぅ」

 金髪野郎のもう片方の肩を外す。鍛えていないからか、簡単に外れるなぁ。ちゃんとご飯食べてないんじゃないか。


「あ、あ、あ、あ、あ」

 金髪野郎は信じられないものでも見るような絶望の表情でこちらを見ている。だが、容赦しない。


 容赦しては駄目だ。


 こういう手合いはさぁ、手加減したり、弱いところを見せたりしたら調子に乗せるだけだからな。昔も今も変わらない。こういう手合いは逆らう気が起きないほどの痛みと恐怖を教え込むだけだ。


 金髪野郎が這うように逃げようとしている。


「治してあげますよ」

 逃げだそうとした金髪野郎を掴まえ、無理矢理肩をはめる。

「え、え、え、えぅ」

「さて、もう一度、外しますか」

 金髪野郎の目がうつろなものに変わる。ここらが限界かな。


 俺もここまでやるつもりはなかった。こんなのはさ、喧嘩の範疇を超えている。だが、こういう手合いを許して、放置して、それで自分以外を狙われたらどうする? 今でも雷人を人質に取っているくらいだからな。


「ま、待って、謝るから、もう許じで」

「えー? 先輩、誰が謝ってくださいって言いました? 俺はもう止めるつもりだったんだよ。続けるって言い出したのはそっちだよな」

「ちが、ぢがうから、もう止め、止めで」

「俺はさ、もう関わるつもりはなかったんだぞ。分かってねえなぁ」

「もうじません、もうしませんから」

 やり過ぎたか? いや、これくらいはやらないと駄目だよな。


「あん? だけど、先輩の仲間がまたちょっかいをかけてくるんじゃあないですかね」

 金髪野郎が首を横に振る。何度も横に振る。

「お、俺から言っておくから。言っておくから!」

 割と元気になってきたかな。痛みになれてきたのかもしれないな。


「それを信じるとでも? 今、集まってるんでしょ。案内してくださいよ。先輩が直接言ってくださいよ」

 金髪野郎が何度も頷く。


「で、場所は何処です?」

「体育館裏にある器具室だよ……です」

「分かりました」

 俺が助け起こそうと金髪野郎に手を伸ばすと、情けない悲鳴を上げ、逃げ出そうとした。まったく……。

 俺は金髪野郎の首筋を掴まえ無理矢理立たせ、逃げないように肩を組む。そのまま器具室に向かう。


 器具室の前には見張りらしき二年の先輩が立っていた。

「あ、紙屋君。っと一年坊主じゃん」

 俺は金髪野郎の方を見る。

「先輩、お願いしますよ」

 怯えた顔の金髪野郎が頷く。

「お、おい、通してくれよぉ」

 弱々しい声だ。


 器具室の扉の前に立っていた先輩は、良く分からないという表情だが、それでも横に避ける。


 俺と金髪野郎は仲良く肩を組んで器具室の中に入る。


 そこで待っていたのは十人ほどの先輩と顔にあざを作り紐でぐるぐる巻きにされた雷人だった。熊のような猫屋の姿はない。病院に行っているのかもしれないな。


「おー、来たな。こいつを助けに来たのかよ、だけどなぁ……ん?」

 とんがり野郎だ。またコイツか。


 そのとんがり野郎の言葉が途中で止まる。一緒に来た金髪野郎の様子を見て、違和感を覚えたのかもしれない。


「うひゃひゃひゃ、雷人、情けない姿だな! 何、勝手に捕まってるんだよ。雑魚か、雑魚なのか?」

 俺は笑う。雷人の情けない姿を見て笑ってやる。


「う、うるせぇ、デブイチが!」

 雷人は元気そうだ。随分と痛めつけられたようだが、まだまだ余裕があるな。だけどさ。うん、そして、これで四度目だな。お仕置き四回だぞ、分かったな。


「お、おい、そいつを解放してやってくれ」

「あ? 紙屋君、何を言って……」

「良いから、早くしてくれよぉ。お、俺が殺される」

 とんがりと金髪が仲良く会話している。


「先輩。いや、そいつは別にどうでもいいっすわぁ」

 雷人を助けに来たと思われるのは不味いからな。俺の弱点になってしまう。


「え? へ?」

 俺は金髪野郎が逃げ出さないように、その肩を強く掴み笑いかける。

「それよりも、ここの皆さんに説明してくださいよ。さっきお願いしましたよねぇ」

 金髪野郎が慌てたように頷く。

「お、おい、話を聞いてくれ。もう、コイツには関わるな。コイツは悪魔だよぉ」

「誰が悪魔っすか」

「ひ、ひぃ。殺さないで」

「殺さないですよ。殺したら警察のご厄介になるじゃないですか。死んだ方がマシだと思うくらいにいたぶるだけですよ」

「ほ、ほら、コイツは本気なんだ。助けてくれ。俺を助けると思って、もうコイツに関わらないでくれ。殺される」

 金髪野郎が涙目のまま仲間たちに必死に呼びかけている。


 うんうん。これで平和的に解決出来そうだ。


「じゃ、そういうことで。紙屋先輩、説明頼みますよ。もし、今後! 同じようなことがあったら紙屋先輩の責任ってことでさっき以上のことをしますからね」

「ひ、ひぃぃ」

 金髪野郎が情けない悲鳴を上げる。


 それを見て俺は小さなため息を吐き、その金髪野郎を解放する。


 これでやっと解決か。


 掴まっている情けない雷人も見られたし、まぁ、良しとしよう。


 ボールペンは……まぁ、これ以上、コイツらと関わるのも面倒だ。その件は特別に許してやろう。


 俺の心はとっても広いんだぜ。

2019年7月2日誤字修正

何、勝手に掴まって → 何、勝手に捕まって

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