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俺が何度も時空を超えて、恋を成就させる話。  作者: 呼ばれた魚
第1章 邂逅編
5/6

制約③

少しでも面白いと思って下さったら、ブックマークや評価、レビュー等をしてもらえるとすごく有難いです!

ゴソリ。


重い布がずれる音がした。


「ん……」


スリップ成功したのだろうか、俺は()()から目覚める。


……暖かい。

それにさっきの音……


「──ここは」


瞼をゆっくりと開けると、そこにはいつもの見慣れた部屋の風景が。

そして俺は──ベッドの中。


「部屋か。……時間は」


枕元の目覚まし時計を確認すると、短針は8を指していた。

つまり午前8時。

俺がメールを受け取って出かけた1時間前。

移動時間も含めて、およそ2時間程度スリップしたということか。


「……なんで今回は成功したんだ……?たまたまだったのか、それとも……」


まだ偶然である可能性もある。

というか、そもそもの話スリップが故意だとか偶然だとか、そんな次元ではないのだが……


まぁ、それはいい。

とにかく戻ってこれたのだから、あとは9時に届くメールへの返信を変えてメイドカフェへ行かなければよい。

そうすれば晴れて、俺への萩坂さんの好感度は下がらない。


「……日付も8/6、ちゃんと遡ってるな。とりあえず9時までは、やる気出たし課題でもやっとくか」


自称進学校の新木高校(通称新高(あらこう))は、進学実績キープのために長期休みには膨大な量の課題を出す。

いくらかは進んでるとはいえ、夏休み中の部活がない俺でもなかなか骨が折れる量。


気まぐれでやる気が出たので、ひとまず転轍点の9時まで宿題をやることに決定。

そのまま机へ向かってドリルを開き、ひたすらに進めた。







ブーッ。


「……お、鳴ったか。もう1時間経ったのか」


10ページほど進めたところで、入り口付近の本棚の上で聞き慣れたバイブ音が。

ベッド上の時計を見ると9時になっているし、これは悠介からのメールで間違いなさそうだ。


『今日暇か?また駅前で遊ぼうぜ』


全く同じ文面だった。

2度目の後にはまだ悠介と干渉していないから、それもそうか、と思い、携帯を開いて返信する。


『悪い、今日は都合が悪いんだ。また今度誘ってくれな』


別に行ってもよかったが、折角行って断ったところで悠介にも悪いし、別の行くあてもあんまりなさそうだから今日は断っておく。


次回のスリップが成功する確証は全くないが、今度もまたメイドカフェへ誘われたらもう一度スリップすればよい。

まぁ断るのも場合によってはあり、か。


すると2、3分ほどしてまた返信が来た。


『そうか、分かった。ならまたオレの部活がないときにでも、な』


悠介はバドミントン部に所属しており、夏休みも合宿を中心としたストイックなスケジュールとなっている。

今日暇だったのはたまたまオフの日だったからなのだろうな。


……とりあえずきりが悪いし、このドリル、英語だけ終わらせとくか。


そう決めて、俺 萩坂さんの好感度下降回避とスリップ成功の喜びを噛み締めながら、俺は再び机へ向かった。









そして時は過ぎ、8/17。

この日は年一度の家族旅行、みんなで京都に行く計画だ。

今年も実行には何ら障害はなく、夕方にホテルのチェックインを済ませた俺たちは、夕方までの時間、金閣寺の余韻を味わいつつ各々が思い思いにくつろいでいた。


「すごかったねー、金閣……お兄ちゃんは来るの初めてだっけ?」

「いんや、中学の修学旅行で1回だけ。でもその時来て一番金閣が興奮した思い出があってな、今日また来れて楽しかったよ」

「へー……。なんかさ、金閣自体もすごいんだけど、そのまわりの池とか木とかがさらに引き立てているというかなんと言うか……」

「お、俺も同じこと思ってたよ。やっぱまわりの風景あっての金閣だよなー」

「だよねー!」


旅館の一室で足を広げて畳の上に座りながら、俺たち兄妹は金閣について語り合っていた。

今日はあいにく高速道路が混んでいたせいで渋滞に遭い、予定していた京都駅土産巡りはカットになったが、それでも金閣の衝撃というのはやはり凄かった。

個人的に金閣が好きなのもあって、高校生になった今でも感動を覚えるほどだった。


「そういえば家族で撮った写真、お兄ちゃんの携帯に送っておこうか?」

「あ、助かる。頼んだよ」

「おーけー。……それ、送信、っと」


未玖は送信コマンドを押し、俺の受信を待った。

しかし。


「……あれ?なんか遅いね、お兄ちゃん?」

「送ったのってメールだよな?添付機能で」

「そうそう。いつもだったらすぐ届いてるはずなんだよね」

「ちょっと確認してみるよ」


着信のバイブが鳴らないのを俺たちは不審に思い、部屋の端っこに置いてあったバッグの中を漁る。


……あれ?


「?どうしたの、お兄ちゃん」

「いや……携帯がないんだ」

「えっ!?どっかに落としたの?」

「んー、そんなはずはないと思うんだけどなー……。確か、入ってから、お土産屋があるとこを通って、ベンチで未玖のトイレを待ってて……あっ!」


しまった。

そういえばそのとき、携帯を……!


「え、まさか」

「……未玖、ごめん、そのまさかみたいだ。ベンチに携帯置いてきた」

「えーっ!でももうこんな時間だし、もうすぐご飯と入浴だから車出してもらっても取りにいけないし……どうする?」


俺は一瞬悩み……一つの答えを出した。

賭けてみるか。

前回は2時間のスリップだった。

今回もとりあえず、そのくらい遡れればよい。出来るだけ、条件を成功例に近づけておきたい。


「未玖、1分だけ目瞑っててな。音が立っても何も動かないでくれ。それで解決するかも知れない」

「えっ?そんなことで?……まぁいいや、……これでいい?」

「ああ、助かるよ」


これで俺が倒れて、スリップに失敗しても隠蔽はできる。

あとは成功するかどうかだが──


頼む、2時間前、あのベンチにいたときにスリップしてくれ──!








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「……ん」

「お兄ちゃん、着いたよ、金閣!何寝てるの!」

「……ここは」


体を起こし目を開けると、俺の顔を覗き込む未玖の顔。


ここは……車内!

さっきのセリフから察するに、ちょうど金閣についたとき!


助かった!

スリップ成功だ!


……しかし、なぜこんなに立て続けに成功したのだろうか。

夏休み中盤、20回近く検証して一回も成功しなかったのに。


何か、制約でもあるのだろうか……?

金閣には作者も1度だけ修学旅行のときに行ったのでまだメイドカフェよりはマシな描写ができると思います。

それでも詳しい方は、もし間違いを見つけたら指摘してくださると助かります!

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