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俺が何度も時空を超えて、恋を成就させる話。  作者: 呼ばれた魚
第1章 邂逅編
4/6

制約②

こんな内容書いといてなんですが、作者はメイドカフェには一度も行ったことがありません。

もし、「実際のメイドカフェはこんな感じじゃなくて〇〇だよー」といった間違いがございましたら教えていただけると幸いです。

「「「お帰りなさいませ、ご主人様!!」」」


扉を開けた瞬間、こんなセリフがたくさんの桃色の声で告げられた。


「お、オレたちに対してだよな……?」

「……まぁそうだろうな」


ともあれ、俺たちはメイドカフェなど初見……しかも、それだけでなく、こういった所謂「オタク」の店に入るのですら始めてだ。……悠介は知らん。


と、そんなわけで、入り口付近でただ店内をぐるりと見渡し、固まっていた俺たち。


「……ん?」


ふと、店の奥、厨房のあたりに見たことがあるような髪型があった。

数週間ぶりのデジャヴ。

だが今回はスリップなどしていないし、そもそもスリップ関係なくここに来るのは初めて。


「気のせいか……?」


俺は考えるのをやめ、悠介の方をちらっと見る。

……視線が合った。

やっぱ、感じてることは一緒か……。


そんな初心な恥ずかしさにくれていると、出迎えてくれたメイドさんたちのうち一人が、空いている奥のテーブルへ案内してくれた。


そこからメニューを手に取り、さて何を頼もうか……と考えている時だった。


「……なあ、海斗よ。オレ、こういうとこ、やっぱ抵抗あったんだけどさ……」

「……ど、どどどどうした悠介。まぁ俺は別に……」


心なしか、声が少し震える。

ここここれも慣れない環境だから、だろうな。きっとそうだろう。


「なんか……わりと、その……」


そんなもじもじした様子の悠介。

俺もだんだん恥ずかしくなって、少し悠介から目を逸らした。

もう一度店内を見渡してみると、やはり客としては「そういう方たち」が多いようだ。

興味本位で来ている客も多少はいれど、俺たちもやっぱりそういう目で見られてるのか……?


や、やっぱりやめよう。

せっかくお金払って来たんだから、働いてる人でも……。


そう思って、近くの厨房へ目をやると。




「……あ」




そこには、クラスメイトの萩坂(はぎさか)結華(ゆいか)がいた。


メイド服を着て髪型も多少変えているから分かりにくいが、間違いない。


「……え、えー、……うーん……」


俺が奇妙な状態のままじっと見つめていたからか、向こうも気がついたようだ。


客が呼んでいる、とでも思ったのだろうか、いかにもそれらしい表情を俺に向けたのだが……それからがマズかった。


「……へ」


喧騒の中でも、そんな気の抜ける声が聞こえてきた。


……非常にマズい。

まさか、こんなところで対面してしまうとは……。


心臓がこの上ないほどバクバク言っている。

冷や汗が背中から滝のように流れる感触がし、ゾクッという身震いのあとに鳥肌が立った。


ある種にも似た恐怖。戦慄。俺はぎこちない様子だったのに、急にこのようなもので支配されてしまった。


──何がマズいのか。

百歩譲って、彼女がここでバイトだろうか、働いていることが互いに知られるだけだったらまだよかった。

しかし場が場。

ここはメイドカフェ。


つまりどういうことかというと、俺たちは休日にメイドカフェに足を運ぶ、「そういう人種」として見られてしまった。


ただでさえクラスメイトにバレるのだってこれからの社会的地位が危ないのに、()()()()()()萩坂さんとは……。


……こんな対面、消してしまいたい。

来るんじゃなかった。

突如としてそんな後悔が俺を襲った。


……スリップ、できるか?

ここへ来なければいいのだから、今朝へ、何ならファミレスで断っていればよかったから30分前。

そこまででいい。


頼む、遡ってくれ──!






ぐにゃり。






二度目の感覚だった。

そして傾いていく体。


「!?大丈夫か海斗!おい!」


心配する悠介の声。それから……


「ど、どうしました、ご主人様!?」


近くでオーダーを取っていたメイドの声。

しかしそれは萩坂さんのものではない。


暗くなりゆく視界のなか、何とか捉えた萩坂さんは……


不安げに見守るも、その瞳にはやはり、「村本くんはこんなところに来るような人だったんだ……」といった衝撃、軽蔑。

そんなものが色濃く伺えた。


……ああ、俺はやはり失敗したのか……。


30分前の決断。

今ここでやり直せれば、きっと萩坂さんは……



プツリ、とそこで意識が途切れた。

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