日常その8
捨てられたココア
...目が覚める
覚めた場所は保健室のベッドの上だった
どうやらあの後眠ってしまったみたいだ
近くにココアが置かれていて、先生は丁度今いないようだ
許可無く飲んだら痛い事をされるかもしれないからとりあえずそのままにしておいて
ベッドから身体を起こし脚をぷらぷらさせる
「ココア~...ココア~」
軽く鼻歌を歌う
...?
私はこんな音楽知っていただろうか?
音楽なんて音楽の授業以外に聞いた覚えがない
クラスの人たちが歌っているわけでもないし、不思議だ
でもこれを歌っていると不思議と落ち着くから歌ってみる
ガラガラ
保健室の扉が開く
「枯葉ちゃん、今日一日休んでいたみたいだけど大丈夫?」
クラスの女子が三人来たみたいだ
「大丈夫だよ」
そう返す
「そう....」「...?」
女子のうちの一人が何かに気づいたらしい
「ちょっと、もしかしてここでサボってココアを飲んでたの?」
どうやらココアという物を飲むのがいけない事だったらしい
「え、う、うん...ごめんなさい」
「いいよ、ごめんね、なんでもないや行こ」
そういい三人は出て行く
外では保健室の先生が驚く声がした。多分急に出て行った三人に驚いたのだろう
三人を見て思ったが、何か死んだ虫を見るような目をしていた気がする
よくパパとママが私を見る目に似ていた
「どうしたの枯葉ちゃん?」
「いえ、なんでもないです」
「...そう」
先生は何か見透かしたような目で私を見た
きっとあの三人との会話の内容が大体分かっているのだろう
「...すみません」
「あなたは...とても賢いのね」
「そんな事はないです」
他愛もない会話が続く
「枯葉ちゃんは辛い事とかない?」
「...」
「枯葉ちゃん?」
話したくないと思った
パパとママから言うなと言われているのもそうだが、話したら何かが壊れそうな
そんな気がしたからだ
「ないです」
「...枯葉ちゃん?」
先生は見透かしたような目で見てくる。けど証拠はないのだから誤魔化せばいい
「ないです」
「......そう...」
先生も諦めたみたいで、話題を変えようと思ったのかココアに目をやる
「あら、冷めちゃったわね」
と、ココアを捨てる
「...」
勿体無いなぁ。とは思うがそれがいけない言葉かもしれないから留めておく
「枯葉ちゃん、また明日来るのよ」
「先生」
「どうしたの?」
「...いえ、なんでもないです」
クラスの女子達がしていた目つきと考えについて言おうとしたがさっき隠した事を
思い出して言わないでおく
「そう」
「いいわ、ゆっくり行きましょう」
ゆっくり行くという意味がよく分からなかったが、帰らなければいけないようなので
下校する
あぁ
また今日も痛いのがあるんだろうな
枯葉が与えられたもの、与えられるものと奪われたものの比率はとても釣り合わないだろう