表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

故に彼女は

「う、宇宙人……?」

 システィさんの言葉に、俺は動揺した。したが……それと同時に、俺は意外なほどに落ち着いていた。メルティの例があるからなのかもしれないが、それだけではない気がする。思えば、システィさんの言動は、出会ったときからどこか妙だった。それも日本語に不慣れゆえだと思っていたが、彼女が宇宙人だとすれば納得がいく。

「はい。メルティ様と同じ、地球外生命体ですわ」

「……は?」

 だが、続く言葉を聞いて、さすがに冷静ではいられなくなった。どうしてメルティのことを……いや、彼女は正確には宇宙人と地球人のハーフなのだが、中途半端に言い当てられたことが余計に俺を混乱させる。

「メルティ様の気配は、明らかに地球人の方々と違いましたわ。どちらかと言えば、わたくしと近いもの―――彼女も、地球外生命体なのでしょう?」

 システィさんはどうやら、宇宙人特有の感覚のようなもので、メルティを同類と判断したようだ。こうなってくると、どう説明したものか……。いや、それはそれとして、彼女には言わないといけないことがある。

「そ、それよりさ」

「はい?」

「服、そろそろ着て欲しいんだけど」

 話を誤魔化すためというわけではないが、俺はそう指摘した。依然としてシスティさんは半裸のままだ。しかも背中から翼を生やした今の彼女の姿は、俺の性癖にドストライクである。その刺激的な格好を早く何とかしてくれないと、俺の理性が毎秒ゴリゴリ削られていく。

「はぁ……分かりましたわ」

 俺の要望に、システィさんは渋々といった感じで、脱いでいた体操着を着直してくれた。何故、残念そうにするんだろう……?

「これで問題ありませんわね」

 服を着直したシスティさんは、翼も仕舞っており、こうして見ている分には普通の人間にしか見えない。

「それで、メルティのことだっけ?」

「はい。メルティ様と同じく、わたくしも地球外生命体なのです」

 俺の確認に頷くシスティさん。彼女は誤解を続けたままだ。だが、果たしてこの誤解は解くべきなのか? システィさんには半分ほどばれているとはいえ、態々事情を全部話してしまう必要はないんじゃないか?

「それなんだけど……メルティにこのことは、システィさんの正体については話さないで欲しいんだ」

 結局、俺は状況を保留することにした。システィさんはメルティと仲良くしてくれてるし、お互いに隠し事はなしのほうがいいとは思う。でも、メルティはまだ精神的に幼い。今のところは秘密を隠せているけど、いつ彼女が自身の正体を漏らしてしまうかという懸念がある。そんな状態で、システィさんの秘密まで抱えさせたくない。

「それと、言うまでもないと思うけど、メルティの正体のことも他言無用にして欲しい」

「そうですか……ハルヒコ様が仰るのならば、そう致しますわ」

 幸いにも、システィさんは素直に俺のお願いを聞いてくれた。理由を聞かれたら困るところではあったが、それもしないでくれた。

「当然だけど、俺もシスティさんのことは内緒にするから」

「そうして下さると助かりますわ」

 俺の言葉にシスティさんはそう答える。けど、今までの彼女の言動を考えるに、ちゃんと自身の正体を隠す気があるのか怪しいような……。いやまあ、実際、俺も本人の口から聞くまで気づかなかったから、それでも問題ないのかもしれないが。

「でも、どうして俺にそのことを?」

 だけど、まだこの疑問が消えてなかった。……何故彼女は、俺に秘密を打ち明けたのだろう? メルティのことがあったからつい口止めを優先してしまったけど、本来なら先に尋ねるべきだったな。

「ハルヒコ様は、地球外生命体の存在を知る地球人ですわ。現地協力者としては、これ以上ないくらい最適な人材ですわ」

 俺の問い掛けに、システィさんはそう返した。……さっきの話では、彼女は一人で地球に来たらしい。となれば、確かに協力者が欲しいところだろう。それだって、誰でもいいというわけではない。彼女の正体を知っても問題ない人物、となれば、既に宇宙人の存在を認識している俺が適任というのも頷ける。それに、システィさんとは友人なのだから、頼み事もしやすいだろう。

「分かった。俺で良ければ、協力するよ」

「かたじけないですわ」

 俺がそう答えると、システィさんは丁寧にお辞儀をしてきた。

「早速で恐縮なのですが……一つ、お願いしてもよろしいですか?」

「ああ、いいよ」

 システィさんのお願いに、俺は快く頷いた。

「では。ハルヒコ様、わたくしとデートしてくださいまし」



  ◇



「なるほど、この薬局ではポイントがつく分、食材の買い出しもお得なのですね」

「でも、品揃えは良くないし、物によっては高いから、スーパーと使い分けたほうがいいと思う」

 放課後。俺はシスティさんと街を散策していた。彼女の言うデート―――つまりは、こちらに来て日が浅いシスティさんに、街を案内していたのだ。いつもならメルティもついて来るのだが、夏海と隣町まで遊びに行くらしく、不在だ。デートというから身構えたが、色気もへったくれもない内容で、ちょっと安心した。

「地図情報は把握していますが、やはり現地住民による生の情報というものも大切ですわ」

 俺の言葉を細かくメモしながら、システィさんはそう言った。随分と勉強熱心なようだ。

「やっぱり、この辺に住んでるのか?」

「はい。近くに部屋を借りていますわ」

 俺が尋ねると、システィさんはそう答えた。……宇宙人である彼女は、どうやって部屋を借りているんだろうか? 学校に通えているのも謎だが、深く追求しないほうがいいのだろうか? もしかしたら、俺以外にも協力者がいるのかもしれない。

「資産が心許ないので、節約は大切ですわ」

「生活費、どうしてるんだ?」

「手持ちの貴重品を換金して活動資金を作りましたが、それもあまり持ちませんわ。早めにアルバイトを探さなくては」

 今すぐ生活に困窮するというほどではないようだが、それでも余裕はないみたいだな。

「どこか、いいバイト先が見つかるといいけど……」

 生憎と、俺はバイト経験がないので、その方面ではあまり力になれそうもない。冬樹か夏海辺りにでも相談してみるか。

「出来ることならば、飲食店がいいですわ」

「やっぱり、賄いが出るから?」

「それもありますが、この星の食文化には興味がありますわ」

 半ば冗談で返した俺に、システィさんはそう答えた。

「わたくしの故郷では、食事は効率化されていましたわ。短時間で沢山の栄養を摂取することに重きが置かれ、食事を楽しむという風習がありませんでした」

 食事の効率化……より安価で手軽に、沢山の栄養を摂取出来るように、文化が発達していったということなのだろう。食事は栄養補給のための作業であり、楽しむものではないのだろう。俺の身近な人で言えば、叔父さんも似たような考えの持ち主らしく、安価で高カロリーの食事であれば、味は最悪でも気にせず食べていたな。

「その点、この星の食文化は興味深いですわ。元々は限られた食材を長期保存するための技術が、見た目や味を重視するように発展する。わたくしたちの星では考えられないことですもの」

 システィさんは目をキラキラと輝かせながらそう語った。……彼女はもう、故郷には帰れない身だ。乗っていた宇宙船が大破して、地球では修理も出来ないらしい。篠原山で出会ったのはその直後だったとか。そんな彼女は、この星に永住するしか選択肢がない。

「出来ることならば、学校の食堂ではお目にかかれない料理も食べてみたいですわ」

 そんなシスティさんだけど、地球で暮らして良かったと思えるような、幸せな人生を送って欲しい。俺はそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ