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8.気が付いたらロマンの代償の課題があった

騒乱の卒業パーティから開けて次の日、俺は父トリスタン三世国王に呼び出されていた。

謁見の間には王の他、宰相や大臣達の他、ロザリーの父であるユーベル・ベルレアン公も同席している。


「さて、此度の事、何か申し開きはあるか?」

王であるトリスタン三世はレオポルドに対して詰問する。

学生のパーティであるが公式の場で公爵令嬢との婚約を破棄したのは良くなかったようだ。


「何もありません。わが身の不徳の致すところであります。」

ここは迂闊に言い訳すると禄でもない結果にしかならないだろう。

神妙にして沙汰を待つしかない。


「ふむ。左様か。」

「しかし、公式の場での婚約破棄は由々しき問題ですぞ。」

ベルレアン公に属する大臣が発言する。

「そうなると、王族である王子に暴力沙汰を起したロザリー殿も問題にせねばなりませんな。」

今度はベルレアン公と対立するバスティード公の配下が発言する。

ベルレアン公が王家に貸しを作ることで宮廷内の勢力をベルレアン寄りにすることを阻止しようとする。


だが俺は知っている。

この後宰相が出て和解案、“両者不問”にするという事が決まっている。

会議と言うものは、決定した事柄を確認するだけの舞台に過ぎないのだ。

それでも例外は起こることがあるが、今回それは無いだろう。


ここで宰相が挙手する。

「ブリオン宰相なにか?」

王が発言を促す。

「確かに王子には落ち度があった、だが・・・」

宰相は落ち着いた様子で話を続ける。

「公爵令嬢の王子に対する暴力行為を考えるに、公爵令嬢の方にも落ち度が無いわけではない。」


「両者には性格の不一致があったと考えるべきであろう。」

「ふむ」

「性格の不一致か・・・。」

「仕方あるまい。結婚前にそれが判るだけでも僥倖と言うべきか・・・。」

「冷え切った夫婦生活は世継ぎ問題に発展しないとも限りませんからな。」

会議は予定通り、“両者不問”で終わりそうである。


「では、王よ。裁定をお願いいたします。」

宰相は頭を下げながら王に願い出る。

「相判った。」


王はしばらく沈黙したのち、

「王子も公爵令嬢もどちらにも落ち度があり、両者不問といたす。

あと、王子は残るように。」

「では、御前会議はこれまでという事で。」

宰相の合図で俺と王以外の全員が退出する。


まぁ、苦肉の策だったのだが思いの他、うまくいった。

宮廷内の権力バランスがベルレアン公に傾きかけていたのが幸いしたのだろう。


父である現国王、トリスタン三世は

「さて、もはやここには其方とワシしか居らぬ。」

と話しかけてきた。

どうやら、俺の口から理由を聞きたい様だ。


「ロザリーは性格がきつすぎるし、コゼットは王妃に不適格である。

それならオーランシュ男爵の顔を立てる上でもセシリア令嬢を教育した方が良いでしょう。

10才ならばまだ教育に間に合う年齢ですし、何より彼女は大人しいたおやかな性格です。

きっと、王を立てる立派な王妃になってくれると確信しています。」

と言い切った。


「王子よ・・・。」

「はい」

「好みの王妃を育てる。それもまたロマンよな。」

そう言うと王はニャリと笑う。


「だが、それだけではそなたたちを認めるわけにはいかぬ。」

王は目を閉じ、いろいろ考えている様だ。

「王子よ。新たな婚約者としてセシリア・オーランシュ男爵令嬢を欲するなら、五年以内に何らかの成果を上げよ。その間、彼女には王妃としての教育を受けてもらう。」


五年以内、つまりセシリアが成人するまでに何らかの成果を上げなくてはならない。


さてどうしたものか・・・。


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