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5.気が付いたら婚約破棄を見ていた

その日、学園の卒業パーティの参加者はかたずをのんで見守っていた。

と言うのも、公爵令嬢のロザリー・ベルレアンが婚約者であるレオポルド王子と共に入場しなかったからである。

そして、王子の取り巻きの五人と最近噂の男爵令嬢も入場していたかったことが拍車をかけた。


そんな中、ついに王子が入場してきた。

事もあろうか取り巻き五人の他に男爵令嬢姉妹を伴っていた。

学園主催のパーティには婚約者のいる者は婚約者と共に入場するのが不文律になっていた。


(いよいよ、噂のことが起こるのか・・・。)

(やはり、あの王子はおつむが・・・。)

(あれが後継者だと、・・・この国は大丈夫なのか?)


そんな参加者の考えをよそにレオポルド王子は

「皆一同の者、私はここに宣言する!!」

挨拶もなしにいきなり演説を始めた。


「ロザリー・ベルレアン公爵令嬢、お前の悪行は全て白日の下にさらされた。

よって、おまえとの婚約を破棄する!」

レオポルド王子が公爵令嬢に婚約破棄を告げた。


(((白日の下の悪行って何????)))


この王子、はっきり言って頭が良くない、いや悪い。

更に証拠の提示もなしに宣言するなど、証明責任を無視した上、「自分の信じた者しか信じない」と言う典型的な人の上に立ってはいけない人物である。


ただ、相手の公爵令嬢のロザリーも性格がきついことが有名で、王子には“常に最上を求め失敗を許さない”のである。

多少は王子の気持ちを汲めればよかったのだが、残念ながら同い年であったためか、そこまでは出来なかった。


そんなキツイ公爵令嬢が婚約者なのだから、王子も息が詰まるのも理解できる。

だが、よりによって


(((コゼット・オーランシュは無いだろう!!)))


ここに参加者のほとんどがそう思っていた。

コゼットは尻軽女ビッチで有名で、夜遊び朝帰りの常習犯であるのは有名であった。

それを知らないは王子だけだったかもしれない。


王子と一緒にコゼットが入場した時点でひと悶着あると予想は出来たが、ここまで派手な展開になるとはだれも予想していなかった。

だが、その後の展開は彼らの思考の斜め上を行くものだった。


スパーン!!


小気味のいい音と共に、レオポルド王子かもんどりをうつ。

王子の胸の位置を支点に一回転半ほど回転しそのまま階段下まで転げ落ちたのだ。


(おおおおお、王子に手をあげた!!)


王に次ぐ権限を持つ公爵の令嬢とは言え、その国の王子に手をあげるのは不忠と言われても仕方がない。

周りの貴族の子息や令嬢はかたずをのんで事の成り行きを見守っていた。

王子は階段の支柱に頭を言ぶつけたのかなかなか起き上がらない。

その場にいるほとんどの者が心配し始めた時、


(あ、起きた。)


よろよろと王子は立ち上がった。

取り敢えず大事には至ってないが、何か様子がおかしい。

「・・・最悪だ、最悪だ・・・。」

コゼットの取り巻きや義理の妹のセシリアが心配そうに見ている。


コゼットの妹のセシリアは大人しいが可憐な娘で、将来は美人になるだろうと予想された。

だが、あのコゼットビッチの妹である。

今どんなに純情可憐であっても、姉の影響は避けられない。というのが周りの評価だった。



「では、あなたはそこのコゼット・オーランシュ男爵令嬢を選ぶというのですね。」

ロザリー嬢が涙を浮かべながらレオポルド王子に詰め寄る。

その涙は彼女が王子が憎くて厳しくしていたのではないことを示していた。


(いよいよ佳境だな。でも王子はあれを娶るのか???)

(そもそも勝手に婚約破棄は出来たっけ?)

(ここまで派手に宣言したら破棄するしかないんじゃないの?)


ロザリーかコゼットかどちらを選んでも王子には灰色の未来しかない。

誰もがそう思っていた。



「ふん!コゼットの様な尻軽女ビッチはこちらから願い下げだ!!」


(!!!!!!!!!)

(すげえ、言い切った!と言うより王子。知ってたのか!!)

(もし判っていたのなら王子はすごい策士なのでは!!)

ここに来て王子の株が上昇する。


驚いているコゼットに対し

「私が何も知らないと思っていたのか。」

レオポルド王子はゆっくりと話しかける。

「フェリクスやジョエル、セザール、リシャールと関係を知らないとでも?」

「そ、それは・・・。」


(すげえ、王子、あんたはただ物じゃなかったんだな!)

更の王子の株が急上昇する。


それでもあきらめ切れないのかコゼットが食い下がる。

「では、一体誰を?

共に入場した令嬢は私以外いませんでしたよね?」


王子はため息をつきながら言う

「共に入場してきた令嬢は他にもいるだろう。」

「・・・・・え?」


「私は、このセシリア・オーランシュ男爵令嬢を新たな婚約者に選ぶ。」


「「「「「ええええええええええ!!!!!!」」」」」


沈黙を保っていた一同が一斉に声を上げる。

かぶっていた卒業式用の帽子を皆一斉に放り投げる。


(すげえ!王子。俺達に出来ないことをサラッとやってのける!!)

(そこにシビ略)(あごがれ略)

ここに来た王子の株はストップ高である。


コゼットはセシリアを睨みつけ、今にも掴みかかろうとするが王子が身を挺して守る。


(あの素早さ、本物だ!)

(本物だ!)

(本物だ!)


そして、その場にいた観衆は


一人の可憐な少女が尻軽女ビッチに毒されることは無くなった。


と一様に思ったのだった。


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