19.気が付いたらまた転生していた。
「ヴィンの浮気者!!」
スッパーン!!!
俺、ヴィンフリートは幼馴染のフレデリカに平手打ちを喰らった。
あまりにも綺麗に入った為よろめいた末、階段を踏み外した。
ガガガガガ、ゴツン!!!
階段を滑り落ちたはずみで階段の踏板に頭をぶつける。
その時、記憶がよみがえってきた。
階段を落ちるのはこれで三回目だ。
どうやら前世の記憶が戻るには階段から落ちて頭を打つ必要があるみたいだ。
現在十五才だから年齢は関係ないようだ。
今回は今までと違って、剣と魔法の世界。
俺は武術全般と全色魔法、(この世界の魔法は色で表され青、緑、赤、橙、黄、白、黒、紫、無の九色)が使えた。
ただ、この全色の魔法と言うのが厄介である一色を極めようとしても別の色が成長の妨げになる為、極めるのはほぼ不可能であった。
剣や槍だけでなく武術全般と言うのも問題で、やはり一つを極めるのは魔法と同じ様に別の武術が妨げになる。
そして魔法職と戦士職は成長の方向が違う。
そう俺はこの世界では何でもできるが何でも出来ない器用貧乏な魔法戦士だった。
(某RPGの赤魔道士と言えばわかるだろうか。)
能力やスキルは十歳になった時に神殿で開示される。
その時から俺は“役立たず”と言われていた。
さて記憶をおさらいしよう。
階段の上で俺をひっぱたいたのは幼馴染のフレデリカ。
同じ村の出身で、冒険者になる為にこの冒険者育成学校、アバロン学園に入学した。
階段から落ちた俺を見て青い顔をしている。
彼女が浮気者と言った原因は昨日、同じパーティのパメラと一緒にいたからだろう。
フレデリカとは婚約者でも恋人でも無いのだがさてどうしたものか・・・。
場所が変わって、ここは四畳半の畳の部屋
「ふむ。記憶の継承は問題が無かったようだね。」
部屋には白髪の老人がテレビ画面を見ている。
画面には階段から落ちたヴィンフリートが映し出されていた。
この者は二回目の転生だが今回はどうだろうか?
二回目に来た時のことを思い出してみる。
「おめでとうございます!」
「はい?」
「あなたは転生試験に合格しました。」
「転生試験?」
「おっと失礼。あなたは二回目なので前回の記憶を一時的に戻しますね。」
思い出した。
俺は前回、ここで同じ様な転生試験を受けた。
確か転生特典でいくつかのスキルを受け取ったはずだが判らないスキルもあるな。
「さて、これから何をするかは記憶が戻っているから判るじゃろう。」
「で、今回の特典は?前回と一緒?」
「好きな種族転生は前回取っておるから、ステータスおよびスキルの簡易解説じゃ。」
「ステータスの解説?今更いるのか?」
わざわざ説明するほどなのだろうか?
「それも最もの疑問じゃが、お主はステータスについてどこまで判っている?」
「?・・・特定の能力の値を示しているのだろう?」
白髪の爺さんは驚くべきことに
「特定の能力と言うのは合っている。」
と言った。
「合っている?という事は値ではないという事なのか?」
「正しくない、と言うより正確ではない。」
「あのスライダーは最大値と習得経験率を表しているのじゃ。
よって、最大値が大きければ習得経験値が少なくなる為、成長の度合いが遅くなる。」
「・・・」
「ついでに、地位のスライダーに意味はない。
生まれた地位の高さは偶然だ。」
はぁー。思い起こせば幼少時の能力の低さはそれが原因か。
剣とか槍とかのスキルは有効だったな。
そう言えば“ライブラリー”のスキルの効果は何だろう?
「スキルはヘルプで分かるようにしていたぞ。」
ヘルプか、見てみるか・・・。
スキル名:ライブラリー
解説:一度見た本などの内容を完全に覚えておく能力。ただし、見ていないものは覚えていない。
専門書を見ていたからよかった物の、見ていなかったらあれ程の事は無かったな。
そういえば、前回のスキルはどうなるのだろう?
「スキルは持ち越しじゃ。あといくつかのスキルが取れるぞぃ。」
爺さんの言葉通り、追加してスキルが取れるようだ。
調子に乗って弓や素手等の武器スキルを取っていったら統合されて武術全般になった。
どうせなら、魔法全般も取っておこう。
ユニークスキルはEXP追加補正。これは解説によるとステータスやスキルの経験点習得量に追加されるようだ。
補正があるなら、ステータスを最大値に、これだと経験点は1/10になる様だ。
ついでに、他のスキル解説も読んでおく。
半日?かかって設定した転生先は万能型になった。
万能ならば問題は無いだろう。
出来ない事に困ることはあるまい。
「・・・と思って彼は転生先を設定したのだろうね。」
結果はお察しである。
「まぁ、今回の人生も苦労の連続だとは思うが、有意義になることを祈っておるよ。」
To be continued?