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18.気が付いたら帝国になっていた。

皇帝への即位が決まってからの一年は休む間もないぐらい忙しかった


同盟の会議は皇帝選定会議とされ、それに参加した十二王家は選帝王とされた。


次に首都が選定に移ったがここで問題が発生した。

大陸全土に命令を発するにはシャムロックの王都は狭すぎた。

新たに十一王家の屋敷を作る必要があるためだ。


その対応策として、一から都市を作ることとなったのだ。

場所は海から近い場所で、人の住まない入り江が選ばれた。

皇帝の居住する帝城、十二選定王の屋敷を設計し、第一城壁を設計する。

その周囲に騎士団の区画、商業区画、居住区と設計していった。


帝都を設計するに当たって、シャムロックの他、各国の王都を参考にした。

その時、気が付いたことがあった。


シャムロックの王都にだけ学校が存在するのだ。

各国に学校に近い物もない。


これは?


シャムロックに学校が出来たのは今から七十年前である。

時の王、トリスタン一世の指導により行われたと王国の図書館にはある。

どの様な人物なのだろうか。

(ひょっとしたら、父上なら何か知っているかもしれない)

レオポルドは引退した父、トリスタン三世に尋ねることにした。


「父上、お久しゅうございます。」

「おや、レオポルド。仕事の方はいいのか?」

「おかげさまで。無事帝都の設計も終わりました。

今日は他でもない父上にお尋ねしたい事があってやって参りました。」

「ほほう、これは珍しい。して何だね?」


「ご先祖のトリスタン一世の事についてです。」

そう言うと、父は少し驚いた顔をしてこう言った

「一言で言うと、天才じゃな。」

「天才ですか・・・。」


「お前と同じ様に今まで聞いたことの無いような知識を持っており、それで騎士団を整備し、ジスティルやグースに対抗したと聞いている。」


道の知識に学校。

どうやら、ご先祖様のトリスタン一世は俺と同じ転生者だったらしい。

他にないかと考えれば、グース教国は女神マリーデルを祭っている。

過去に奇跡を起こし人々を救った人物が女神という事で祭られている。

その内容は、高度な医学知識を持った転生者を連想させる。


(この世界すべての住人は記憶を持たない転生者かもしれない。)

時分の事を考えるとそう思えるのである。




その後、在位二十五年で七十歳になった俺は皇帝を引退し、ルマン湖畔の別荘で執筆活動に勤しむこととなった。

この十年はいろいろ記憶している事をこの世界の言葉に直し本にしている。


特に転生者向けの本には日本語で書くことにする。

ただでさえ習得難易度の高い言語なのに、対比表の無いこの世界では解読できる者はいない。

出来るとしたら日本語が出来る転生者のみである。


どうせ判り難い様にカタカナも交えて描いておこう、転生者を“テン生しゃ”とか。

関係のない事も書いて何が書いてあるか判り難いようにするのも良いかもしれない。


例えば、リシャールの出した本にある


「二人を追うと一人も残らない」

「追わずに追わせよ」


コゼットの本の


「一線を越えずに引付ける百の方法」

「軽く見られても軽くなるな」


等、入れておけばまず判別はつかないだろう。


どうせならビニスティの


「数学概論」


とか、ペンタクール兄弟の


「諸国食べ歩き集」

「諸国童話集」


アルベールは残念なことに本は出していないが、隣国のロマールの公女との話は戯曲になっている。

これも入れておこう。



色々訳の分からないものになった。

これなら、何が書いているか判らない。

後は王宮の図書館の隅に収めるよう執事に指示する。


今日はもう疲れた・・・休むとしよう。





レオポルド・ルブラン


アルカディア帝国千年の歴史の基礎を築いた人物。


シャムロック歴147年

帝国歴元年、皇帝に即位。


彼は在位中、数々の事業を行った。

その一つが大陸を一周出来るほどの鉄道網である。

そして、大陸の命名である。

大陸名はそのまま帝国名となり、名前をアルカディアとなった。

注)命名については、レオポルド皇帝の「青春の~」との言葉が残っているが、現在でも真偽のほどが疑われる。


また数々の名著があり、「数学」「物理」「化学」等、科学の基礎を築いたと言える。

教育にも力を入れ、各種学校のみならず教育用の教本も手掛けた。

剣術、槍術の腕前も大陸一、二を争うものであり、正に文武両道の鏡である。


彼自身、初めから強かったわけではない。

幼少の頃は他よりかなり劣っていたとの記録がある。

だが彼は不断の努力により文武の高みにたどり着いたと言えよう。


晩年はルマン湖畔の別荘で過ごした。

享年八十歳。


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