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17.気が付いたら根回しされていた。

初日の会議が終わった後、諜報部の活動が活発になる。


「アルファーよりオメガへ。ロマール公王はランソール王と会見する模様。」

「オメガ了解。アルファーはデルタと合流。動向を探れ。」

「Yes、Sir」

「イオタよりオメガ。ジスティル王は西方諸国を集めている模様。」

「オメガ了解。イプシロン、ツェータと合流。エータはガンマに廻れ。」

「Yes、Sir」


「状況はどうか?」

「これは宰相閣下。全て想定通りです。」

「そうか、それは良かった。」

(危うく私も失態をするところだった。あの教本を読む機会があって運が良かった。)



事は一月前にさかのぼる。


レオポルド王から大陸同盟の構想を聞かされたが、大国のジスティルとグースは仲が悪い。

反目しあっていると言っても良い。

その二国を含めての同盟を成立させるより、どちらかだけと同盟を結び、もう一方を倒す方が効率的だと思えた。

(わざわざ手のかかる方法を取るレオポルド王の真意は何処にあるのか・・・)


そんな折、息子のネイサンが

「父上、見てください。期末テストの算数と理科の二教科で百点が取れました。」

ネイサンは内縁の妻との間の子供で、とても頭が良い。

内縁の妻と言っても、某男爵令嬢の様な貴族ではなく、平民なのだが気立ても良くしっかり者なのだ。

某男爵令嬢の様に思わせぶりな・・・おっと、いけない。過去の話はどうでもよい。


「よく頑張ったね、ネイサン、父はお前を誇りに思うよ。

ところで他の教科はどうだったのだい?」

「国語が九十点で社会が八十点です。」

「ふむ。では間違ったところを再度勉強し直して、次は間違えないようにしないとね。」

今は間違えても次同じ間違いをしなければよい。


「はい。父上」

そう返事をすると、ネイサンは質問をしてきた。

「父上は宰相であるので王国については詳しいのでしょうか?」

「そうだね。宰相であるから、それなりには知っているよ。」


ネイサンは社会の教本を手にある部分を示しながら訊ねた。

「ここに書かれている王国を統べる王国とはどの様な国なのでしょうか?」

この瞬間、私は雷に打たれた様な感覚を味わい理解した。

教本はレオポルド王自ら書かれた物である。

ここに王の望みが書かれているのであると。



「残りはグース教国の動向ですが・・・。」

「あの教国は我々に協力するさ。」

「それはどの様な理由で?」

「教本の戴冠の項目を見たまえ。」

「・・・・・これは!たしかに、グースは協力しますね。」

「うむ。」

(これも全てが教本にて示された通りの事である。

陛下はどちらか一方ではなく、すべてを手中に収めるおつもりなのだ。)


「後はもう一方の方だな。」

そう呟くと席を離れた。

「閣下。どちらへ?」

「ジスティルの宿泊施設だ。」




「王よ、主だった西方諸国は集まったようです。」

ジスティル王の部屋には西方諸国と言われる、エッシャー王国、サルバドール公国、アメディオス王国、ヴイトリオ王国の四国が集まっていた。


「集まってもらったのは他でもない、今回の大陸同盟についてだ。」

「ふむ。元より西方諸国とジスティルとで同盟を組み大陸制圧する予定であったが・・・。」

「この国、シャムロックを見た後ではそれは夢物語でしかありませんな。」

「国力の差が多少ならば想定内であったが、ここまで圧倒的な差があるとは。」

「ジスティル王はどう思われますか?」


ジスティル王、ヴァルデマール・ジスティルⅦ世はその考えを伝えた。

「シャムロックは大陸すべての国を敵に回しても圧勝するであろう。」


その場にいる者はやはりそうであるかと言う顔をし、反論のある者はいない様だ。


「この教本に書かれている国を統べる国、帝国についてだ。」

「私もそれを見ました。この国は間違いなく帝国となるでしょう。」

「そうですな。もはや動かしようが無い事実であろう。その証拠に自国の教本に載せている。」

「問題は、その教本の内容通りだとするとグースの影響が大きくなる。」

「教本?・・・これは!!!」

「そこで私はこの国の宰相殿に面会を申し込んだ。」

「なるほど、さすがジスティル王ですな。この国の宰相と繋がりを持つことでグースの影響を抑えるわけですな。」

「で返答のほうは?」

「この後、ここに来てもらう手はずになっている。」

「おお、流石。抜け目がないですな。」


彼らが会話している間に召使の一人が最初の到着を告げる。

「閣下、宰相殿が到着いたしました。」

「ここへお通しするように。」



「ようこそ、ご足労いただきありがとうございます。」

「この度はお招きいただきありがとうございます。」

リシャールとジスティル王は握手する。

そして会談は始まった。


「この教本によると、就任時に皇帝に王冠を被せる役目は聖職者の長。

つまり、グース教国の教王で間違いないのですね。」

「はい。就任の際はそのような手はずになるでしょう。」

「だがそれだとグースが後々まで影響を及ぼすことにならないか?」

「あなた方の意見はもっともです。ですがご安心ください。対応策はあります。」

「おお。」

「ついてはジスティル王にはレオポルド王の皇帝就任の推挙をお願いしたい。」

「グースが先に推挙する可能性は?」

「その点はご心配に及びません。会議の進行は議長である私によって行われます。

最初にジスティル王に挙手をお願いします。次に意見を求めますので、その時に推挙いただければ問題ないと考えます。」

「グースに推挙する時間を与えないという事か。」

「はい。我々としても一国に特権を与えすぎるのは避けたい事項なのです。」


宰相以下、諜報部の活躍で全ての根回しが完了した。




レオポルドは考えていた。

(どうして同盟会議で俺が皇帝になることになっているんだ?

ジスティル王が皇帝に推挙してきたがこれを受けるべきか?

大陸での同盟を形成することで長い安定を考えていたが、帝国として統一しても同じことではないのか?

ジスティル王の推挙によって皇帝となり、グース教国の教王により冠を授かる。

東西のバランスが取れている状態ともいえる。)

(この間、約1秒)


(よし!決めた。少し熟考したふりをして・・・。)


「謹んでお受けしよう。」


かくして、レオポルド・ルブランは皇帝となった。


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