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11.気が付いたら識字率をあげていた

そして三年の歳月が流れた。


セシリアも十六歳となり王妃として申し分ないという事でレオポルド王子の戴冠と同時に婚儀が執り行われた。

国を挙げての祝賀会が一月の間行われた。


国王となってからの日々は休む暇もない・・・と言う訳ではなく、ほとんどの事案は採決を待つ段階で国王の前に提出されるようになっている。

最終的に俺が確認し、問題なければサインし事業計画を進めるだけなのである。


従って、それが終われば時間は出来る。

その時間でセシリアとの親睦を深めたり(夫婦的な意味で)、前世の知識をこの世界の知識に直し本にする。

出来上がった本はビニスティ副主任に渡し、チェックをしてもらっている。



「主任!レオポルド王から新しい書物が届きました!」

ビニスティは副主任になってもあわただしい。

だがそれも無理は無いのだ。

レオポルド王が記した書物は実に革新的な内容で研究者にとっては垂涎の物となっていた。

「前回は化学書。その前は物理学書。今度のは何だね?」

「今回は少し薄いのですが・・・見てください。」


「・・・青カビから薬効成分を抽出する方法か。で、この成分は・・・何とある種の感染症に有効と!」

「感染症に?それは本当ですか!?」

「うむ。これが本当なら今感染症で苦しんでいる患者を救えるかもしれぬ。」

「こっちは天然痘の予防方法です!」

「そればかりか、黒死病の予防方法もあるぞ!」


この書物を契機に医学に従事する者の服装が改められることになった。

医療現場においても同様で、常に清潔に保たれた。

その結果、この国での病気の死亡率は著しく低下することになった。




レオポルド王が即位してから五年の歳月が流れた。

王の執務が無い時は王妃のセシリアと息子のガブリエルや娘のアデールと過ごしていた。

「父上、来ていたのですか?」

「うむ。ガブリエルやアデールに会いにな。」


退位してから王宮を離れ、ルマン湖の湖畔に建てられた離宮に移りめったに姿を見せなかった。

だが、孫が生まれてからと言うもの日を置かずにやって来るようになった。

子供には厳しく孫には甘い爺さんそのものである。


「ところでレオポルドよ。」

「はい、父上?」

「ガブリエルやアデールの相手は考えておるのか?」

「アデールやガブリエルは幼いのでまだ早いので考えておりません。」

「そうか、ならばその役目。わしに任せてはくれぬか?」


父は国政にも熱心にかかわってきた。

それが無くなったので何かと暇を持て余しているのだろう。

「無論、ガブリエルの希望に沿うようにするつもりだ。だめか?」

「いいですよ。」

「おぉ、そうか!早速、候補を選び出さなくては・・・。」

そう言うと父上は慌てて飛び出していった。


まぁ、候補選びでしばらくは大人しくしているだろう。

そろそろガブリエルも勉強が必要な時期に来ている。

小学生自分の教科書を参考に教本を作るか。

語学の本は・・・英語の本を参考にすればいいかな。

あれが出来ているから何冊か作れるな。




そして、その一月後。

王宮の会議室で各地の開発状況等の報告を受ける。

人口も徐々に増えてきており、住居が足りなくなりつつある。

「さて、次の議題ですが。」

リシャールも宰相補佐が板についてきた。

今だに結婚せず遊び歩いているが、能力が高いので問題にされることはない。


「各家での諍いですね。ビゼー家の元領主とブリュネ家の元領主、カーン家とクレティアン家、・・・」

「多いな。原因は何だ?」

「次期領主の嫁候補の取り合いです。」

「そんなに対象が少ないのか?」

「そうですね。家によっては最低限の教育が必要になります。その教育を受けている者の人数が少ないのだ。」


「なら、教育を受けてない者にも受けさせればよいではないか。」

「!陛下それは!」

「どうせなら、国民すべてに教育を受けさせるのもありだな。学校も必要になるな。」


「「「「「!!!!!」」」」」


(前の世界ではみんな一度は学校に行っていたから問題はないよね。)


「で、では、この議題は後日持ち帰り検討という事で・・・。」

リシャールが珍しく慌てている。

結局、今日の会議はそのまま終了となった。


「あ、ビニスティ。この教本の確認をしておいてくれ。」

と言ってビニスティに書き上げたばかりの教本を渡す。

「陛下、これは?」

「ああ、ガブリエルぐらいの年齢の子供用の教本だよ。」

それを聞いたビニスティは教本の確認をする。

「それは確認をして問題が無ければ、何冊か印刷しておいてくれ。」




ビニスティが研究室、いや、開発部に教本を持って帰ってきた。

「ビニスティ主任お帰りなさい。どうされました?」

「おお、ブリエ君。丁度良かった。陛下からこれを預かってな。」

「陛下から?何ですかこれは・・・これは初心者向けの教本。」

「それと、陛下の考えでは国民すべてに教育を受けさせる考えなのだ。」

「たしかに、教育を受けていない中にも頭の働きの良いものがおりますからな。」

「しかし、それは本当に実行されるのですか?」

「陛下はこの教本を“確認後印刷せよ”とお命じになされた。」


「では、その教育の場所を含めて」

「検討をする必要がある。」


それから程なく、この国、いやこの世界初の全国民教育機関が発足された。

この教育機関の元、全領地に初等学校、中等学校が作られ、識字率はおろか教育度が著しく上昇する。

それは多くの研究者の誕生を意味していた。


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