1.気が付いたら婚約破棄をしていた
「ロザリー・ベルレアン公爵令嬢、お前の悪行は全て白日の下にさらされた。
よって、おまえとの婚約を破棄する!」
それは学園の卒業パーティで起こった。
この学園、シャムロック王国にある王立学園では毎年、卒業を祝い盛大にパーティが執り行われる。
学生の身分であるが貴族の子弟が通う学園らしく、豪華絢爛な物でありそれに参加することは一種のステータスシンボルになっていた。
会場は学園の広間を使って行われており普段は朝礼や式典に使われる場所である。
広間の奥にはステージがあり、そこではピアノやバイオリン等の楽器でダンスの為の演奏を行っていた。
ステージの正反対には階段があり、それを数段上がった位置に入場口が作られている。
その為、入場口から入る順番は身分の低い者から行うのが慣例である。
騎士候、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵と続き最後が王族という順番なのだ。
今回の卒業パーティは不穏な空気が流れていた。
公爵令嬢であるロザリーが入場しても、レオポルド王子の取り巻きの五人の他、噂の男爵令嬢姉妹がまだ入場していないのだ。
そんな空気の中、ロザリーが入場後、しばらくしてレオポルドたちが入場してきた。
「レオポルド王子、ご機嫌麗しゅう存じます。」
ロザリーは婚約者である王子に挨拶しながら一礼する。
そんな状況の中レオポルド王子が広間の階段の途中から高らかに婚約破棄を宣言したのだ。
その後ろには取り巻き連中、最近うわさされている男爵令嬢姉妹が共にいた。
次の瞬間、
スパーン!!
小気味のいい音が鳴り響き、婚約破棄を宣言した王子レオポルドが張り倒される。
あまりにも綺麗に入ったためか、はたまた階段の途中に足をかけたバランスの悪い体勢だった為か、王子はもんどりうって階段から落ちる。
ガガガガガ、ゴツン!!!
階段を転げ落ちたはずみで頭を階段の支柱にぶつける。
その時、記憶がよみがえってきた。
(いててて、ロザリーめ。何という無礼な、王子を何だと思っているのか。
ん?ロザリー・ベルレアン?どこかで聞いたことがあるような?)
混濁する頭で必死で考える。
(確か、姉がやっていたゲームにそんな名前のライバルが・・・。)
見覚えのない風景と人の顔、それと今見える景色が交差する。
(確か、雪の日アパートの階段で頭をうって・・・それからどうなったっけ?)