Act9-17 最大の敵
ん~、遅くなりました←汗
気づいたら眠っていました。
その結果、こんな時間に←汗
レンさんが笑っている。
希望の偽物と一緒に笑っていた。
ああ、本当にそっくりだ。そっくりだけど違う。
あの子じゃない。あの子の笑顔じゃない。
見れば見るほど、話せば話すほど、これが希望ではないことがわかっていく。
そのたびに沸き起こる怒り。頭の中が真っ白になるほどの怒り。我を忘れてしまいそうなほどの怒り。その怒りに突き動かされてしまいそうになる。
けれど突き動かされるわけにはいかない。
これを始末することは、いまの私であればできるだろう。
元の私でもできることではあったけれど、かなり難しかった。
というよりも私には制限があるのだから。私はレンさんと希望と同じように「異世界の旅人」ではある。
けれどその存在は大きく違う。同じ「旅人」であってもあり方がまるで違っていた。
レンさんと希望は制限のない力を転移した特典として貰っている。
まぁ、レンさんの場合はやや質がおかしなものではあるけれど、それは娘という特権があるからこそ。
だからこその通常の「旅人」とは室に大きな差が生じている。
希望もレンさんほどではないけれど、かなり質のいい特典を貰っていた。
もっともその特典をあの子は理解することのないまま攫われてしまった。
通常の「旅人」はレンさんと希望ほどの力はもらえない。
よくある「異世界転移」ないし「異世界転生」とは違い、チートと言える能力なんてもらえない。
そんなものをくれるほど、スカイストという神様は優しい神様ではないのだから。
そしてそれは私の場合も同じだ。私が得られた力は強力ではあるけれど、使い勝手の悪いものだった。
というか時限爆弾のような能力だった。
戦えば戦うほど私は死に近づいていく。
それも全力に近い力を出せば出すほど加速度的に死に近づくという、ゲームであれば外れスキルとも言える能力。
最初からこんな力を持ったキャラを引いてしまったとしたら、私であれば最初からキャラクターを作り直すでしょう。
……あ、いや、作り直さない、かな? うん、作り直さないな、うん。
実際レンさんと出会ったあのゲームのキャラだってそうだったし。
あれは二重三重の理由があって作り直す気がなくなってしまったんだっけ。
いま思えば若かったな、というか、お得感に騙されてしまったなと思う。
まぁ、ゲームの話はいい。
私に与えられた力はとにかく使いづらい。その分出力がある。
しかし命を削ってしまうという困ったデメリットを内包するという、こんな力をくれたあの女神を恨みたくなるようなものだ。
というか、なにを考えてこんな外れスキルをくれやがるんでしょうね。
……自分からスカウトしたくせに、こんな外れ能力にするとかなにを考えているんだか。
さすがはレンさんのお母様としか言いようがない。
でもまぁその外れスキルであっても、物は使いようだ。
実際頭を使えばどんな外れであったり、ランク詐欺のようなものであったりしても一級品にはできるんだ。それはこの外れ能力でも同じこと。
とにかく。こんな外れ能力であっても、速攻で勝負を決めればこの偽物にも勝てる。
逆に速攻で決められなければ私の負けは濃厚だった。
しかしいまの私は違う。いまの私であればこの偽物を潰すことはそこまで難しくない。
寿命という問題はどこぞのお節介な女王様に解消してもらえたのだから。
その反面、面倒事になった気もするが、まぁ、些事です。
希望を助けられるのであれば私はそれでいいのです。後のことは後になって考えればよろしいのですよ。
いつもそうやって解決してきたのですから、問題はなにもありません。たぶん。
「あ、見えてきましたよ、まりも姉さん」
希望の偽物がとある建物を指差した。
見たところお屋敷です。でもそこにはこの世界でいう冒険者ギルドの紋章が描かれた旗が、黒地に剣を持った女神が描かれた旗が風にはためいていた。
ここがレンさんが立ち上げた冒険者ギルド、か。相変らずとんでもない人だこと。
「……レンさん、一からここまでの規模の組織を」
「まぁ、俺ひとりではないけれどね」
さっきまでとは違い、少し口調から硬さが取れていた。いいことではあるのだけど、ギルドの正面に立っているひとりの人物がまずそうだ。
なにせギルドの正面にはさきほどシリウスちゃんに追い払われたはずのアルトリアという少女が立っていた。
その少女を見た瞬間、私はいままでにない危機感を憶えた。それだけアルトリアという少女は危険だった。それほどに強い。
さすがは三姫将筆頭だった。そして希望を攫った張本人。私の最大の敵。
絶対に許さない。燃え盛るような怒りを抱きながら、私は正面に立つアルトリアを見つめていた。
タマちゃん視点でした。
次回は、今夜十二時更新です。あ、でも、特別な更新はしません。ただいつもの十六時を零時更新にするだけですのであしからず。




