Act8-ex-6 先代と継嗣~死にゆく宿命~
本日八話目です。
無事にすんだみたいだった。
「我が君」たちは無事に帰ってきてくれた。
……「我が君」はいくらか憔悴しているみたいだったけど、プーレママとデートをすることで気分転換にもなるだろうし、プーレママの機嫌もよくなるはずだ。
「我が君」が戦に出られてからというもの、プーレママはどうにも機嫌が悪いというか、妙に考え込んでいた。
でもそれも「我が君」とデートすることで上向きになるはず。
まぁ、ママが多すぎるというのも理由なんだろうね、やっぱり。
とはいえ、私もそれを楽しんではいる。ママが増えるのは問題はない。
倫理的には問題かもしれないけども、ママたちが幸せであるのであれば、それでいいと思う。
その点、「我が君」はさすがだ。
ママたちを幸せにすることへの手腕は素直にすごいと思う。
今回だって戦から帰って来たばかりだというのに、プーレママを気遣ってのデートだ。
本当にそういうところはスゴいなと思う。思うけども、少しはその手癖の悪さを矯正してほしいものだ。
「ふふふ、そういうところも妹ちゃんの魅力でしょう?継嗣ちゃん」
「むぅ。反論はできない」
たしかにそういうダメなところも含めて、「我が君」の魅力ではあった。
……もう少し自重してほしいとは思うが、「我が君」はそこんところ無自覚なのが困る。まぁ「我が君」らしいことだ。
「ふふふ、本当に継嗣ちゃんは素直じゃないね? 大好きなパパさんなんだから、もっと素直になればいいじゃない」
「……あなたに言われる筋合いはないぞ、五の。というかなぜまだここにいる? それも人をいきなりこんな場所に引きずり込みおって」
せっかくサラママとデートしていたというのに、サラママの隙を衝いて路地裏に連れ込んでくれるものだから、てっきり人拐いかなにかかと勘違いしてしまった。
もっと方法があるだろうに、相変わらず神獣は常識が通じないな。
サラママに見つかるまえに話を終わらせたい。
いまだって私を探しているようで遠くから声が聞こえている。
あまり心配をかけたくはないんだけども。
「……その点は謝るよ。ただ早めに伝えた方がいいかなと思ったの」
「伝える?」
なにを伝えようというのか?
五のに伝えらてもらうことなどないはずなのだが。
「……そうだね。本当なら伝えることはなかった。けど、知った以上は言った方がいいと思ったんだ」
「わぅ?」
なんだ?
五のの様子がおかしいぞ?
なにか大事なのだろうか?
「……世界という意味であれば大したことはないよ。無数にあるうちのひとつ。七のであればそう言うだろうね」
「七の? なにか彼女が」
『五のよ。教えてしまうのか?』
不意に先代が割り込んできた。先代が割り込んでくるのはいつものことだ。
けれど様子がいつもとはまるで違っていた。……嫌な予感がした。
「伝えないままだと、きっと後悔させてしまいますよ、兄上」
『だがのぅ』
「先代、いや、五の。いったいなにがあった? 教えてほしい」
『……後悔すると思うぞ?』
「知らない方が後悔すると五のは言った。五のがどういう人なのかは知っている。彼女がそういうということは」
『……そうさな。ならば知らせよう。五のよ、頼めるか?』
「はい、兄上」
先代は五のに説明を任せたようだ。
先代からは言いづらいことなのかな?
いったいどういうことなんだろうか?
冷や汗が伝っていくのを感じていた。
「プーレリア・フォン・アクスレイアの命が残りわずかなのは知っていて?」
「……え?」
なんて言われたのかわからなかった。プーレママの命が残りわずかってどういうこと?
だってプーレママは「我が君」の巫女に──。
「……遅すぎたのよ。妹ちゃんができたのは延命だけ。あの子を助けることはできなかった。その延命ももうじき終わることになる」
「うそ」
「……嘘ならどんなによかったかしらね。でも本当なの。あの子は──」
「嘘だ」
「プーレリアはあと──」
「やめろ! 嘘を吐くな!」
「……プーレリアはあと二週間後、妹ちゃんの誕生日に死ぬの。あの子自身、七のに宣告されているはずよ。妹ちゃんの十六歳の誕生日に死ぬと、ね」
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁっ!」
プーレママが死ぬなんて嘘だ!
しかもあと二週間後? 「我が君」の誕生日に死ぬ?
それをすでに知らされている?
嘘だ。
知っているならあんな笑顔ができるわけが──。
「……強い子よね。自分の死を伝えられても笑っていられるのだから。本当に強い子よね」
五のが泣いていた。
五のがこんな嘘を吐くわけがない。
でも信じられない。
プーレママがもうすぐ死んでしまうなんて信じられるものか!
「……プーレママに聞いて──」
「……やめなさい、シリウスちゃん」
不意に声が聞こえた。そこには真剣な顔をしたレアママが立っていたんだ。
続きは八時になります。




