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Act8-149 その余裕をぶち壊す

 恒例の土曜日更新となります。

 まずは一話目です。

「許さない? あははは、許さないね? 許さなかったらどうすると言うの? おまえになにができると言うの? さっきはたしかに私は油断していた。けれど今回は油断したところで結果は変わらない。どんな過程を経たところで、結果は変わらないの。わかる? おまえがなにを言ったところで結果は変わらないのよ」


 アイリスは高らかに笑っていた。まるで虫けらを見るように俺を見下している。


「うるせえよ」


「だというのに、まるで自分がいればすべてをひっくり返せるようなことを言うなんてね。身の程知らずねぇ。「獅子の王国」のカオスグールとは違う。雑魚とはいえ、あんな無能よりも能力がある素材を使ったカオスグールよ? あのカオスグールにも手も脚も出なかったおまえが、このカオスグールに勝てるとでもいうの?」


「うるせえ、黙れ」


 アイリスが話すたびに怒りが沸き起こる。復讐は意味がない。


 わかっている。そんなことはわかっている。


 だが、いま俺の隣には放心したククルさんがいる。


 普段のククルさんとはまるで違ってしまっている。ククルさんをこいつはそこまで追い詰めたんだ。


 普段のククルさんはとんでもなく意地悪だし、高圧的だし、すぐに俺をエロガキだとか言う。典型的なパワハラ上司だ。


 けれどククルさんは優しい人だ。あれこれとお小言を言うけれど、それはすべて俺を気遣ってくれているから。


 かつての自分と俺を重ねて忠告してくれているんだ。体と心に決して重傷を負わないようにしてくれているんだ。


 そんなククルさんだからこそ、シリウスもカティも「ばぁば」と慕っているんだ。その優しさにあの子たちは惹かれているんだ。


 そんなククルさんをこいつは追い詰めた。アトライトさんを化け物にして追い詰めた。


 俺自身ククルさんに恋愛感情なんてない。だけどククルさんは俺にとっては姉みたいな存在だ。その姉のような人をこいつは傷付けた。


 許せるわけがない。許していいわけがない。そんなこいつが高らかに笑っている。怒りが沸き起こるのは当然のことだった。


「あら、なにかしら? その目は? もしかして私とカオスグールと戦うつもり? やめておきなさいよ。あなたじゃ勝てないどころか、犬死にするだけよ? ふざけたことを抜かしてくれたけれど、それでもあなたは姉様の想い人ですもの。五体満足にしておかないと姉様になにをされるかわかったものじゃないの。だから無駄な抵抗は」


「うるせえって言っているんだよ、このアバズレが!」


 ごちゃごちゃと抜かすアイリスに向かって怒号を飛ばした。


 アイリスの眉間にしわが寄った。その目はあからさまな怒りに染まった。


 だがどうでもいい。もうどうでもいいんだ。アイリスがどういう反応を示そうと俺にはどうでもいいんだよ。


「グダグダうざったいんだよ! さっさと掛かってこい! それともそんな反則を持ち出さないと俺とは戦えないのか!?」


「……姉様の想い人だからって、調子に乗るなよ、虫けらが」


「は、その虫けらにいいように殴られていたのはどこのまぬけだよ!」


「……カオスグール。あの虫けらを踏みつぶせ!」


 アイリスがアトライトさんに命令した。


 アトライトさんは低い唸り声を上げながら、踏みつけて来る。


 ククルさんを抱えたまま、飛び下がると同時に地鳴りのような音と振動が「謁見の間」を襲う。


 その振動の中、どうにか着地した。


 地盤沈下が起きても不思議じゃない。


 それが攻撃ではなく、踏みつけただけなのだから、デカい=強いという単純な公式はどこの世界でも共通しているようだ。


 だからと言って負けるわけにはいかない。ククルさんのためにも、アトライトさんのためにも負けるわけにはいかないんだ。


 アイリスのあの余裕をぶち壊す。「黒狼望」を強く握りしめながら決意を固めた、そのときだった。


「……たしかに、あの余裕はぶち壊したいよなぁ」


 後ろから声が聞こえてきた。振り返るとそこには、ティアリカと戦っていたはずの仮面の騎士が立っていたんだ。

 続きは二十時になります。

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