Act8-137 ストレス解消
本日二十四話目です。
なんかよくわからないけど、ククルさんとモーレに呆れられてしまっているようだ。
なにかやらかしたわけではないつもりだったのだけど、どうやらさっきの一撃が問題だったみたいだ。
大したことはしていないとは言うつもりはない。
たださっきの一撃はいまいちよくわからないんだよね。
気づいたときにはああなっていたんた。
「刻」属性を用いてもああいう風になるけれど、俺は少なくとも「刻」属性を使った覚えはなかった。
ならなんであのとき時間が止まったんだろう?
よくわからないや。
「さっきの連撃はいつ開発されていたんですか?」
カオスグールの死体を放置して、再び走り出すとモーレがいくらか怪訝そうに言っていた。
口調は怪訝そうだけど、どこか艶っぽい。俺の放った連撃に見とれたとかかな?
……いや、さすがにありえないか。
それくらいで惚れ直しとか、チョロインにも程がある。
少なくともモーレは、俺が知っているモーレはチョロインではなかったはずだ。
「……どうせ、チョロインですよーだ」
急にモーレが体を近づけてきた。なんだろうと思っていたら、すごく低い声で威圧してくれました。
……嫁を怒らすものではない。
毎回思うことではあるけど、今回もしみじみと思ったね。
「いや、あの、言葉のあやでして──」
「ふぅん?」
モーレが俺を見つめている。
仮面越しに見つめられめているのがよくわかる。
わかるのだけど、なんて返せばいいのかがまるでわからない。
「おふたりとも。ここは敵地ですので、イチャコラはほどほどにお願いします」
ククルさんが呆れていた。いや、呆れさせるつもりはないですし、イチャコラなんてそもそもしていないんですけど、と言ってもたぶん聞いてもらえそうにない。
やっぱり俺の周りって本当に俺の話を聞かない人ばっかりだよね。
でも仕方がない。そういう運命だと思えば──。
「待ってください!」
ククルさんが急に立ち止まった。とても焦った顔で周囲を見渡していた。なんか嫌な予感がする。
「……さっきのぶよぶよは、たしかカオスグールでしたね?」
「もしかして、まだいます?」
「ええ。それも辺り一面にです」
ククルさんの精霊が偵察でもしてくれていたのかもしれない。
よく見てみれば、黒騎士たちの死体がなくなっていた。
壁や床には血溜まりがあるのに、肝心の死体がなくなっているし、血溜まりの中を這いずったような痕があった。
その痕はいくつも残っている血溜まりの数だけ存在していた。
全員が生きていたというのは少し考えづらい。あるとすれば、だ。
「……もし、さっきのあれが黒騎士だったものであったら」
「……囲まれてしまいますね」
ククルさんの声を合図にしたかのよう、カオスグールの雄叫びが響き渡った。どうやらあってほしくない可能性が当たってしまったようだ。
「面倒な」
アトライトさんの助太刀をしたいというのに、血溜まりの数の分のカオスグールを相手取るなんてな。
「先に行って下さい。ここは私が」
「いや、でも」
「ストレス解消にはちょうどいいので」
にっこりと笑うモーレ。……怒りは相当に深いようだった。
「……無理しないで、ね?」
「大丈夫ですよ。だって──」
ふっ、と息を吐きながらジールヘイズをいきなり俺の背後へと突き放つモーレ。
振り返るとカオスグールが水溜まりになっていくところだった。
「一撃で潰せますから」
「……了解しました」
敬礼をして、俺はククルさんと一緒に「謁見の間」へと向かって行ったんだ。
これにて十一月の更新祭りは終了です。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
ちなみにこのあと二十四時よりマグネット版の更新となります。
今回はカルディアの素性が明らかにです。
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