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Act8-124 勘違いと付き合い

 本日十一話目です。

「やれやれ、ようやく行きおったか」


 エルディード卿がため息を吐いたのは、土下座をさせたおっさんがいなくなってからだった。


 正確にはエルディード卿が「いつまでもそこで寝転がっておる。邪魔じゃ、失せよ」と言ったからだ。


 おっさんは「失礼しましたぁぁぁ」とか言ってそそくさと逃げ去っていった。


 どこまでもテンプレなおっさんだなぁと思ったのは言うまでもない。


 そうしておっさんが逃げ去った後でエルディード卿はため息を吐きながら、佇まいを直してククルさんを見ていた。


 いやククルさんだけではなく、なぜか俺も見つめていたんだけどね。


 なんで俺までと思ったけれど、その理由はすぐにわかった。


「ふぅむ。ククルは年下好きだったのかの?」


「はい?」


 エルディード卿の言葉に、ククルさんは唖然としていた。


 唖然としていたのはククルさんだけじゃなく、俺も同じだった。


 どうやらエルディード卿はとんでもない勘違いをしていたようだった。


「いや、そちらにおるのはそなたの婿殿ではないのかの? まだお若いようじゃが、なかなかの御仁と思ったのだが」


 はてと首を傾げてくれるエルディード卿。


 ククルさんはため息を吐いて頭を押さえていた。


 俺も頭を押さえたい気分ではあったけれど、そうする前に行動してしまった人がいるんだよね。


「うちの「旦那様」を評価してくれるのは嬉しいのだけど、ククルは「旦那様」の嫁ではないよ、エルディード卿」


「こ、これは「蛇王」陛下! お久しゅうございます」


 そう、誰を隠そうレアが行動に出てしまった。


 いや、レア以外にエルディード卿になにかを言える嫁がいなかったということでもあるんだけど、エルディード卿はレアの登場に畏まっていた。


 レアはにこにこと笑いながら、俺の腕を取った。


「この人は私の「旦那様」なの。ククルの婿ではないの」


「じゃ、「蛇王」陛下のご亭主様であらせられたのですか?」


 エルディード卿の態度は一変してしまう。


 それまではどこか探るような目だったのが、いまや畏怖のこもった目で俺を見つめている。


 ……本当にさ、どうしてレアを昔から知っている人は、みんな俺がレアを嫁にしたことを知るとそういう目をしてくれるんだろうね? 


 いや、わかるよ、わかるけどさぁ。これでも幸せなんですよ、俺は。


 言っても信じてくれないかもしれないけどさ。


「……間違ってはいないです」


「さ、左様でしたか。これは失礼を」


「いえ、気になさらずに。レヴィアを嫁として迎えましたけど、お孫さんの部下でもあるので」


「ククルの部下、ですか? それはどのような」


「話せば長くなるんですが」


 エルディード卿が困惑していた。


 まぁ、レアの旦那であり、ククルさんの部下でもあるなんて言ったら、困惑してしまうのも無理もないよね。


 少し長くなるけれど、かいつまんで事情を話すと、エルディード卿は納得してくれた。


「なるほど。しかし、ククルが「ばぁば」ですか。ふふふ、まさか曾孫の顏を見るどころか、玄孫が先になるとは。長生きはしてみるものですな」


 エルディード卿は破顔していた。


 まだ会わせていないけれど、シリウスとカティを玄孫として認めてくれたようだ。


 ますますうちの愛娘ズの地位が向上していくなぁ。


「まだ会ってもいないのに、玄孫扱いはどうかと思いますよ、お爺様」


「なにを言う。そなたが孫娘と思うたのであれば、わしにとっては玄孫ではないかの」


「それはそうですが。そういう問題では」


「なぁに。先ほども言うたが、子は宝なのだ。どのような子であれ、宝は宝であるのだ」


「……本当にお爺様らしいことです」


 ククルさんは笑っていた。その笑顔は昨夜のような無理をした笑顔ではなく、心の底からの笑顔だった。ククルさんらしい笑顔だった。


「ふむ。ご亭主殿。少しよろしいですか?」


「え? あ、はい。大丈夫ですが」


「であれば、少し付き合っていただきたい。「蛇王」陛下もよろしいでしょうか?」


「問題ありません」


「左様ですか。では少しご亭主殿をお借りいたします。では、こちらへ」


 エルディード卿は有無を言わさず、かつ丁寧に俺を連れだした。


 困惑しつつ俺はエルディード卿に連れていかれてしまったんだ。

 続きは十一時になります。

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