Act8-96 つかの間の その六
ちょっぴり香恋が気持ち悪いので、ご注意を──え? いつも通り? ……否定できない←
「わぅ~。恥ずかしかったの」
「わふぅ? たのしかったよ?」
「それはカティだからだよ。お姉ちゃんは恥ずかしかったの」
「そうなの?」
「そうなの!」
恥ずかしがるシリウスと首を傾げるカティ。
対照的なことを言うふたりではあるけれど、シリウスだって少し前まではカティみたいにプライドさんのまねをしていたんだけどなぁ。
当時は真似をしちゃいけませんとか言っていたけれど、言っても意味がないことをシリウスで学んだから、もう好きにさせている。
だからと言って、カティのことがどうでもいいわけじゃないからね。そこだけは注意していてほしいな。
「つまり私はどうでもいいと──」
「もうそれはいいってばよ!?」
どうしてシリウスはそうもパパの言葉を曲解したがるの!?
なに、これもパパ遊びですか? これもパパ遊びの一環なのかい、シリウスちゃんや!?
「……わ、わぅ~」
「吹けていない口笛でごまかされるとでも?」
明らかに目が泳いでいるシリウスの肩をがしっと掴みながら、顔を近づける。
……傍から見ると幼女相手に迫っているようにも見えるが、問題はないはずだ。
だって俺は女の子でかつパパだもん! ゆえに問題は──。
「……問題あると思いますが、「旦那様」」
ティアリカが困ったように苦笑いしている。
いやいや、問題あるってどこに問題があるのさ? これはパパと娘の健全なやりとりです!
「いえ、でも、傍から見るとシリウスちゃんに無理やりキスをしようと迫っているようにも見えるので」
そっと顔を反らしながらティアリカは言ってくれた。
なにをバカなことを言うのかな、ティアリカは。
俺はパパだぜ? 娘相手にそんなことをするわけが──。
「ごめんなさいなのです」
え? ちょ、ちょっとプーレ、さん?」
「さすがに否定はできないかとぉ~」
「さ、サラさんまで!?」
「……大丈夫ですよ。私は「旦那様」がそういうお趣味をお持ちでも、問題はありませんからね」
「レアもなにを言っているの!?」
え、なに、この四面楚歌? 嫁たちからあらぬ疑いをもたれてしまっているよ、俺!?
いや、待て。まだ嫁はいる。そう、モーレが。モーレであればきっとわかってくれて──。
「……申し訳ありません、主様。私もそういう風に見えてしまいます」
「エレーン!?」
──まさかの裏切りでした。
ローマの人が「おまえもか」というのがわかるくらいの裏切りっぷりでした。
……そんなにダメかな? 娘の肩を掴んで顔を近づけるって。そんなに変態っぽいかな?
それとも俺の雰囲気がそう見せているのかな?
それって俺が変態ってことかな?
……いかん、否定ができん!
いや、でもさ、人間ってみんな変態じゃん!? だから別におかしくないと思うんだよね!
「……それを堂々と言うのはどうかと思うんだがなぁ」
プライドさんも若干呆れているようだ。
……なんだろう。ここに味方はいないのか? まさしく四面楚歌なのか?
「ぱぱ。カティはぱぱがへんたいさんでもだいすきなの」
「……ありがとう、カティ」
うん、本当にありがとう。とどめをさしてくれて。純粋無垢な瞳がいまは胸に痛いです。
「とりあえず、さっさと離して、パパ。キモいの」
「……はい。ゴメンナサイ」
本当のとどめはシリウスがさしてくれました。
言いながら俺の手を払うし、俺が掴んでいた場所を手で払っているし。
俺ってばどうしてここまで娘に嫌われているんですかね? 意味がわからないの。
「シリウスおねえちゃんは、いじっぱりさんだから気にしないほうがいいとおもうの。シリウスおねえちゃんもぱぱがだいすきだもん。ううん、カティよりもぱぱがだいすきなのをカティしっているもん」
「か、カティ!?」
シリウスが慌てている。慌てている姿もかわいいね。
しかし慌てているということはそういうことですよね?
「ぱ、パパも大好きだよぉぉぉぉぉ!」
「わ、わぅ!?」
シリウスを全力でハグした。
シリウスは目を白黒とさせているが、尻尾がふりふりと振られているところを見るかぎり、喜んではいるみたいだ。
だが、待ってほしい。このままではカティがいじける! であれば、やることはひとつ。
「カティ。カティもおいで」
「いいの?」
「いいよ!」
「わふぅ!」
カティは目を輝かせながらジャンプした。
目が見えていないはずなのに正確に俺に向かってジャンプするとか、どうやったんだろうという疑問はあるけれど、細かいことはいいんだよ!
ジャンプしたカティをキャッチすると、そのままシリウスごと全力でハグした。愛娘ズサンド最高っす!
「……レンさんは相変わらずですねぇ~」
愛娘ズサンドを堪能していると、タマちゃんの声が聞こえた。
でもいくらか調子が悪そうだ。なんというか、声に元気がなかった。
見れば壁に手をついて、真っ青な顔をしたタマちゃんが廊下の奥から姿を見せていたんだ。
タマちゃんが体調を崩しました。




