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Act8-95 つかの間の その五

 すみません、更新が遅れました←汗

 

 シリウスは結局三人を許してあげた。


 そのために三人が支払った代償は、まぁ、それなりのものではあったよ。


 たとえばプーレであれば、シリウスが満足する分の肉料理の調理だったり、レアであればカティに買い与えた分以上にシリウスが欲しいものを買わなければならなくなったり、サラさんであればカティにしたのと同じで空中コースターをしたり、と様々な約束をさせられていたね。


「わふぅ、シリウスおねえちゃん、いっぱいままたちとやくそくしているの。ずるいの」


「ずるくないの。これはお姉ちゃん特権だから、あたり前なんだよ」


「そうなの?」


「そうなの!」


 えっへんと胸を張るシリウスに、カティは不思議そうにしている。


 まぁ、姉妹で仲良しなのはいいんだが、俺はいつのまに「お姉ちゃん特権」なるものを認めたのだろうか? かわいいから別にいいけどさ。


 とにかく、そうしてふたりの話し合いは終った。


 カティはいまいち理解できていないというか、納得してなさそうな顔をしていたけれど、シリウスがごり押しで話を終わらせてしまった。


 ……あとでカティを慰めてあげないといけないかもしれないね。


 やりすぎると、またシリウスが拗ねるだろうけれど、それはそれで俺としては問題ない。


 かわいい娘たちと触れ合うのは、とても心が和みます。


「おい、嬢ちゃん。娘たちと触れ合うのはいいんだが、そろそろ俺様のことを思い出してくれんか?」


 プライドさんのため息が不意に聞こえてきた。


「あ」と思わず口にすると、「あのなぁ」とため息を吐かれてしまったよ。


 無理もないかな。俺だっていまのいままで忘れられていたら、呆れるか怒るかだもの。


 その点、プライドさんはさすがに「獅子王」様なだけあって、とてもお心が広くて──。


「ごますりはいいんだよ」


「あ、はい」


 ──うん、通じなかったぜ。まぁ、通じないと思っていたからね。仕方がないね。


「仕方がない」ってなんだよ、とプライドさんがまた呆れているが、そこはあえて気にしないでおこう。


「ぱぱ。このおじちゃん、だれ?」


 すんすんと鼻を鳴らしながら、カティはこてんと首を傾げていた。


 いちいち仕草がかわいいな。


 さすがはカティ。我が愛娘です。


「……どうせカティはかわいいけれど、私はかわいくないってことなんでしょう? パパのバカ」


 ふんだと顏を背けるシリウス。


 どうしてシリウスはいつも俺の言葉を曲解してしまうんだろうか?


 そろそろパパ泣いちゃうよ? 


 かわいい愛娘に嫌われたらと考えただけでパパの胸は傷ついちゃうんだよ? 


 グラスハートなんだよ?


「パパにはそもそもお胸なんてないもの」


「それを言っちゃうのはダメだと思うな!?」


 事実だよ? 


 事実だけどさぁ。


 それは言っちゃダメだとパパは思うな!?


 パパだって、「パパ」と言っているけれど、実際はきゃぴきゃぴの女の子なわけで──。


「きゃぴきゃぴってなぁに?」


 ──腕の中のカティが首を傾げている。


 純粋無垢な瞳が実に痛い。


 下手なことを言うとかえって傷を抉るだけなのは明かだった。


 それでも貫き通さなきゃいけないこともあるんだよ。


「そんなおバカなことは貫き通す必要はないの。そもそもおバカなのはパパとパパの言動だけで十分すぎるの」


 きっぱりとシリウスに言いきられてしまう俺。目頭が熱いぜ。


「はぁ、嬢ちゃんに任せていたら、いつまで経っても紹介させてもらえんな。初めましてだな、ちっこい嬢ちゃん。俺は」


「カティはカティって名前なの。ちっこいじゃないもん」


 ぷくっと頬を膨らませて、プライドさんの方を見やるカティ。


 やはり視線はあらぬ方へと向いているが、だいだいでプライドさんを見ている。


 しかしプライドさん相手にもこの物言いとは。


 将来大物になるね、カティは。


「がははは。俺様相手にその物言いか。嬢ちゃんの娘なだけあるな! うむ、気に入ったぞ!」


 そしてそんなカティをプライドさんは大いに気に入ったようだ。


 なんというか、カティの後ろ盾が徐々に凄まじいことになっていくような気がしてならない。


 いまだって「七王」陛下のうち、レアからは娘として愛されて、プライドさんには気に入られている。


 この調子だとマモンさんたちにも気に入られるだろうね。


「七王」陛下方のうち五人が後ろ盾とか、カティの将来って安泰どころの話じゃないような気がしてならない。


 そしてそれはシリウスも同じなわけで。


 うちの愛娘ズの将来の安泰さは、この世界一と言ってもいいのかもしれない。


 愛娘たちの安泰さに安心しつつも、婿選びとか絶対に大変なことになるだろうなと考えてしまうのは秘密だ。


「がははは!」


「がはははなの!」


「わぅ~。恥ずかしいの」


 いつのまにかプライドさんに抱っこされて、プライドさんの物まねをするカティとプライドさんにかつてのように肩車されたはいいが恥ずかしがるシリウスをぼんやりと俺は眺めていた。

 続きは明日の十六時予定です。

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