Act8-84 相変わらずの「獅子王」様
「いやぁ、久しぶりだなぁ、嬢ちゃん。小さい嬢ちゃんもいつのまにか大きくなって。子供の成長ってのは早いもんだよなぁ」
がははは、とプライドさんはいつものように豪快に笑っていた。
最初はきーやんの背中に乗っていたのだけど、俺たちを見つけるや否や即座に飛び降りてきた。
それなりの高さだったはずなのに、何事もなく着地するプライドさんはやっぱり規格外だなぁと思わせてくれた。
そうしていまプライドさんは、豪快に笑いながらシリウスの頭を撫でている。
シリウスもシリウスで「わぅわぅ」と鳴きながら、されるがままになっている。
若干プライドさんの目がいつもとは違うけれど、理由がわからないわけではない。
というかさ、たしかに子供の成長は早いけれど、シリウスのこれは成長ではなく、進化したからなんだけど。この人シリウスが狼の魔物であることをすっかりと忘れていないか?
「シリウスは狼の魔物ですよ?」
「あ~、そう言えばそうだったな。見た目が狼の獣人とほとんど同じだから、ちょっと勘違いしていたぜ。許せよ、嬢ちゃんたち」
そう言って、がははは、とまた笑いだすプライドさん。
本当にこの人は変わらないなぁ。
……まぁ、いまのもたぶんわざとなんだろうけれど。
実際はシリウスを見て、カルディアと見間違えたんだろうな。
でもそのことを言うわけにはいかないから、あえて忘れていたというふりをしていたんだろうな。
相変わらず気遣いの人だな。そういうところが国民の皆さんからも愛される所以なんだろうな。
一見空気が嫁なさそうなタイプに見えるけれど、実際は細やかな気遣いを忘れない人だ。
そんなこの人を国民は愛さずにはいられないんだろうね。
それを当然と思わず、常に国民のためになにができるかを考える。
それがこの人を「獅子王」として立たせている要因なんだと思う。
……豪快な物言いや性格が災いしているところも多少はあるけれどね。
「しっかし、驚いたなぁ。おまえまで嬢ちゃんの嫁になったとはな。いまはヴァンではあく、ティアリカだよな?」
「ええ。いまはティアリカとしてここに」
「そうか。だが、あのおまえが嫁なぁ。レアが嫁入りしたことも驚いたが、おまえまでもが同じ相手に嫁入りするとは考えてもいなかったぜ。うちの部下たちに散々セクハラをかましていたのに」
「……そのことは忘れてくださいね?」
ティアリカは顔を紅くしていた。
ヴァンさんだった頃は、セクハラ鍛冶王という字をつけたくなるほどだったけれど、あれはお兄さんのまねをしていただけだっだようだし、実際のティアリカはとんでもない奥手だった。それこそ──。
『あの頃はまさに笑うしかない存在でしたからね。くすくす。初心なくせにセクハラなんて。ちゃんちゃらおかしくて』
「あ、あなたは黙っていなさい!」
『なぜです? 主ティアリカは昔もいまも膜ありのままで』
「だ、だから黙りなさいぃぃぃ!」
ティアリカが叫ぶ。ミドガルズさんとのやりとりは今日もティアリカが叫ぶことになってしまった。
まぁ、「鎮守の森」までの一週間では日常茶飯事だったし、いまやもう慣れたものだ。
「ははは、これを慣れるとはな。さすがは嬢ちゃんだ。大物だぜ」
がはははと豪快に笑うプライドさん。はたしてそれを褒めていると取っていいのかはわからなかった。
「まぁ、とにかくだ。ここで会ったのもなんだ。俺様と行かないか?」
「行くってどこにです?」
「あん? そんなのは決まっているだろう?」
にやりと不敵に笑うプライドさんを見て、とても嫌な予感がした。そしてそれは的中しました。
「「首都」を陥落すのさ」
プライドさんははっきりと言いきった。




