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Act8-74 騒ぐ心

 本日十八話目となります。

「じゃあ、妹ちゃんはこの部屋を使ってね」


 ジズ様が楽し気に「清風殿」の中を先導してくださっている。


 手前たち、いえ、「旦那様」が「清風殿」に滞在するのが嬉しいのでしょうね。


 ジズ様の「旦那様」への溺愛っぷりは凄まじいものがあります。


 それこそ「旦那様」がシリウスちゃんとカティちゃんへの溺愛っぷりとそん色ないほどには。


 ……そういうところはたしかに姉妹だなぁと思わせてくれますね。


 もっとも「旦那様」とジズ様は形式上での姉妹にしかすぎないみたいですが。


 ジズ様は母神様が生み出された神獣で、「旦那様」はその母神様が産み落とした娘。


 たしかに母を同じくするという意味合いであれば、姉妹となりますが、実際は姉妹というよりも将来的には主従関係になるのでしょうね。


「旦那様」は母神様のご息女であらせられるのですから、いずれは母神様の跡を継がれて、次代の母神様としてこの世界を統べられるのでしょう。


 ……「旦那様」がその気であれば、ですがね。


 とにかく、「旦那様」を溺愛されているジズ様は、「旦那様」が一晩だけとはいえ、「清風殿」に滞在されることを喜ばれているようです。


 さきほどからずっとスキップをなさっているのが、その証拠でしょう。


 そんなジズ様の後に続いているのはすでに手前と「旦那様」だけでした。


 すでにシリウスちゃんとエレーン殿は別の部屋に宛がわれています。


 残るのは手前と「旦那様」だけ。


 その「旦那様」の部屋もいま決まりました。


 ただその当の「旦那様」は顏を引きつらせておいでですが。


 無理もないでしょうね。


 なにせジズ様がご用意してくださった部屋は──。


「ジズ様。ここどう見てもジズ様の私室にしか思えないんですけど?」


 ──そう、ジズ様が「旦那様」にご用意されたお部屋は、誰がどう見てもジズ様のお部屋でした。


 なにせ壁いっぱいに「旦那様」の似顔絵等が貼られていますし、ベッドには「旦那様」をデフォルメされたぬいぐるみがいくつも置かれていますし、しまいにはお召し物をだいぶ肌蹴られた「旦那様」を描かれた、えらく縦長な枕が置かれているのです。


 これでジズ様の私室ではないというのはありえないでしょう。


 むしろジズ様がこの部屋を他人に使わせるはずがないと思うのです。


「そうだよ? ここはお姉ちゃんと妹ちゃんの愛の巣で──」


「あ、そういうのはいいんで、普通の部屋をお願いします」


 ぽっと頬を染めたジズ様のお言葉を「旦那様」はさらりと受け流されました。


 受け流されてはいますが、お顔が少し痩せこけているような。


 ……ほんのわずかな時間なのに、とてつもない心労を得たんでしょうね。


 おいたわしいかぎりです。


 ですが、この光景を見て心労だけですんでいるのが、「旦那様」のすごいところですね。


 手前であれば、発狂していそうですよ、これは。


「むぅ~。どうしてお姉ちゃんにはそんな辛辣なの、妹ちゃんはぁ」


 ちぇ~と唇を尖らせて、不満をあらわにされるジズ様ですが、こんなことをされて辛辣で済んでいることがありえないことだと手前は思うんですがね。


「とにかく、さっさと俺の部屋に案内してください、お姉ちゃん」


「はぁい。いい案だと思ったのになぁ」


 ぶつぶつぶと文句を言いつつも、ジズ様が案内されたのは、ジズ様のお部屋からほど近いお部屋でした。


 お部屋の中はジズ様の私室とは違い、ごくごく普通の宿屋の一室とでも言えばいいのか、簡易テーブルと少し古ぼけた木のベッドとこじんまりといたランプが天井から釣り下がっていました。


「こういうのでいいんですよ、こういうので」


 やれやれと肩を竦められながら「旦那様」は、ジズ様を見やりましたが、当のジズ様は「だってぇ~」と不満げです。


 ……このやりとりだけを見ていると、妹への溺愛がすぎる姉とそんな姉に辟易としつつも姉を大切にしている妹という風に見えますね。微笑ましいとも言えるものです。


「じゃあ、俺はここを使います。ティアリカは」


「あー、ティアリカはティアリカで案内するから、妹ちゃんは休んでいてね」


 ジズ様はそういうやいなや、手前を連れて「旦那様」のお部屋からそそくさと出て行かれました。


「また後で、「旦那様」」


「うん。また後でね」


 お部屋を出る際に「旦那様」とそう告げ合うので、精いっぱいでした。


 このあと少し遅めの夕食になるので、その際にという意味合いでした。


「旦那様」は疲れておいでのようでしたが、いつものように穏やかに笑われていました。


 笑われながらも御召し物の隙間からは、小さな赤い虫刺されのような痕がありました。


 その痕をあえて意識しないようにしながら、手前は旦那様のお部屋を後にするのでした。

 続きは十八時になります。

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