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Act8-68 やってやろうじゃん!

 本日十二話目です。

 モーレ視点となります。

 消えていく。


 風に乗って消えていく。


 私だったものが風とともに消えていく。


 本来なら見ることもなかったはずのもの。


 でもこうして私は、私だったものが消えていくのを見ることになった。


 自分だったものが風と一緒になっていくのは、なんとも言えないことだった。


 まるでいまの私でさえも風化してしまうかのようだ。


 けれど、私はいまここにいる。


 エレーンとしても、モーレとしてもいまここにいる。


 そう、ここに最愛の人の腕の中にいる。以前とはまるで違う。


 以前は死と隣り合わせの逃避行の最中で、いまはなんの危険もない。


 危険どころか、素晴らしい景色を眺めながら、この人の、カレンちゃんの腕の中にいる。


 ただあの頃とはお互いにいろいろと違ってしまっていた。


 私はハーフフッドから天使になり、カレンちゃんは本格的な半神半人となっていた。


 お互いの置かれている状況はあの頃とはまるで違っている。


 それでも変わらないものはたしかにある。カレンちゃんの腕の中は、あの頃とまるで変わっていない。


 あの頃のまま。まだ異世界からやってきたばかり頃のこの子のままだった。


 でもそれを知っているのは私だけじゃないのが、いくらか腹立たしい。


 というかなんでこんなスケコマシになったのかな、この子は。


 そこんところだけがお姉さんには理解できません。


 ……そういうところも含めて好きというのが、我ながら困ったものだけども。


 惚れた弱みというのはこういうことなんだろうなぁ。


 本当にどうしてこうもイケメンな子になっちゃったのやら。


 もともとイケメンなところはあったけど、よりいっそうイケメンっぷりが上がっているよね。


 そのうえ、私たち全員を幸せにしようとしてくれるのだから、質が悪いよね。


 でもそういうところもやっぱり好きなんだよね。


 どうしてこうもカレンちゃんはカッコかわいいのやら。


 ますますほかの女の子も落としてしまいそうで、お姉さんちょっと心配。


「……なんか不安そうだね?」


 不意に囁かれた声は、ふだんの情けかわいいものとは違って、少し低めでかつ穏やかなもの。その声に胸がキュンとなってしまった。


「……カレンちゃんってこのままだと、またお嫁さんを増やしちゃいそうかなって」


「……あー」


 カレンちゃんは顔をそらしながら頬を掻いた。否定しよう?


 ねぇ、そこは否定するところだとお姉さん思うよ?


 なのになんで否定しないのかな、この子は?


「いや、俺はそんなつもりはさらさらないんだけど、なぜか、その、ね?」


 どうしてお嫁さんがぽこすか増えてしまうのか、カレンちゃんはわかっていないようだ。


 本当に質が悪いよね、この子は。


「で、でも俺はみんなを幸せに、誰よりもきれいな笑顔を、俺が好きなみんなの笑顔を浮かべられるようにするから! だからそれで、いや、それはじゃダメかな?」


 急に弱々しく伺うように見つめてくるカレンちゃん。


 ……本当にそういうところ!


 なんで急にそう言うことを言うのかな、この子は!? 


 きれいと好きとか、平然と言わないでよ、もう!


 たとえそれが私だけに言ったことじゃないとわかっていてもですよ、そんなことを言われたら恥ずかしいっての!


 だというのに、そこからさらに攻めたてるように弱々しいところを見せてくれますかね!? 


 おかげでこっちはカレンちゃん以上に恥ずかしいし、嬉しいんだよ! 


 なのにこの子はそういうところをまるでわかっていない!


 あぁぁぁー、もう本当にこういうところは変わらないんだから!


 本当にそういうところだよ! わかっているの、カレンちゃんは!?


「な、なんかモーレの目が怖い」


「カレンちゃんがそうさせているんですけどぉ!?」


「お、俺がなにを」


「お黙りなさい!」


「あ、はい」


「そしてもっとちゃんと私を抱き締めなさい!」


「え?」


「いいから!」


「は、はい!」


 もうこうなったらやけだよ、やけ! 


 やれるだけやってやろうじゃんか! 


 不退転の決意とやらで私はやれるだけのことをやることにした。覚悟しなよ、カレンちゃん!

 続きは十二時になります。

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