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Act8-49 殺し合いより殴り合い

 本日五話目です。

 モニターを見やると、そこにはアホエルフたちへと注がれていたはずの攻撃の痕跡が、無惨な状態になった「世界樹」の麓の光景が映し出されていた。


 地面は抉れて「世界樹」の根のひとつが露わになっていた。


 根の太さは、数人分の胴体を合わせたくらいか。


 これほどの大樹の根であれば、そのくらいの太さはあって当然かもしれない。


 周辺にあった木々は例外なく抉れて倒れていた。


 おかげで少し鬱蒼としていた「世界樹」の周辺には日の光が差し込んでいたが、そのおかげでより麓の悲惨さが強調されてしまっていた。


 なによりも俺たちがサカイさんの背に乗ってきた湖は、一番ひどい。


 なにせサウたちの死骸どころか、連中に攻撃を仕掛けていた鳥たちの死骸が浮かび、死骸から流れ出る血によってその周囲だけ湖面は紅く染まってしまっていた。


 あの一帯だけを見たら、死の湖ともいうべき惨状だった。


「……酷いものですね」


 ティアリカが顏を顰めている。


 嫌がらせを始めたのはこっちからだ。


 けれど最初にやらかしたのはあっちだ。


 子供の喧嘩じみた言い分ではあるけれど、間違ってはいない。


 そもそもあの調子に乗って分相応を忘れているあのアホエルフがジズ様に喧嘩を売り始めたのが、すべての始まりだ。


 いや、あのアホエルフがクーデターなんて起こしたことこそ、かな? 


 こっちの対応も褒められたものではないのはわかっているが、元凶はすべてあいつだ。


 であれば、ある程度の仕返しは黙認されるべき。


 だがあいつ、正確にはアイリスは攻撃してきたすべての存在を殺しつくしたようだ。


 それも息ひとつさえ乱さずにだ。それほどの実力差があった。


 それはアイリスが一番わかっていたことだろうに。


 それでもなおサウと鳥たちをあいつは殺しつくした。


 殺すのであれば、見せしめとして少しだけでいい。


 それだけで攻撃はやんだはずなのに、あいつは。


「……ひどく残忍な少女のようですね、彼女は」


 鳥やサウたちの返り血を浴びたアイリスは、怪しい笑みを浮かべると艶かしく舌で血を舐め取っていた。


 まるで見せつけるかのようだ。


 いや、見せつけているのかな?誰に対してなのかはわからないけど、唇がわずかに動いていた。


 読唇術はできないけど、なにを言っているのかはなんとなくわかる気がした。


「次はおまえだ、そうですよ」


 ティアリカが伝えてくれたのは予想通りの言葉だった。


 それが誰に対してなのかは、依然としてわからない。


 けど、なぜかアイリスは俺を見ている気がする。


 俺に向かって言っているような気がしてならなかった。


「……上等だ」


 モニターに映るアイリスに向かって首をかっきるポーズをした。


 伝わるわけはない。それでもやらずにはいられなかった。


 モーレに諭されたばかりだけど、あいつがしたことを俺は許すことができなかった。


 でも許せないとはいえ、いままでみたく是が非でも殺してやりたいとまでは思っていない。


 ただあいつの澄ました顔を張り飛ばそうとは決めている。


 男が女の顔を張り飛ばすのは問題だけど、同じ女である俺が張り飛ばすのであれば問題はない、はずだ。


「……まぁ、殺し合いをするよりかは、喧嘩の方がましかな?」


 モーレが静かにため息を吐いていた。シリウスは苦笑いで「パパらしいの」とか言っている。


 とりあえず嫁と娘の許可は取ったようなものだし、これで問題はない!


「「旦那様」らしいですね」


 ティアリカが口元を押さえて笑っていた。


 笑うティアリカに目をやりながら、俺はアイリスへの宣戦布告をしたんだ。

 続きは十時になります。

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