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Act8-36 仮面の下の素顔は?

「わぅわぅ、それで私ね、クルスひぃじぃじの名代としてここまで来たの!」


「あらあら、名代ができるなんて、偉いわねぇ。ふふふ、さすがは私の孫娘ね」


「わぅ、ありがとうなの!」


「もうシリウスちゃんは、本当にかわいいわねぇ」


 サラ様は嬉しそうにシリウスを後ろからハグしていた。シリウスはシリウスでサラ様にハグされて、尻尾をふりふりと振っていた。


 シリウスってば、シルバーウルフへと進化して、少し大人っぽくなってもサラ様には相変わらず甘えているね。


 まぁ「鬼の王国」で進化してからもずっとあの調子で接していたからなぁ。


 いまさら少し距離を取るなんてできないだろうし、そもそもサラ様がそうさせないだろうからね。


 ……本当にうちの愛娘の撃墜率は異常だよなぁ。これでカティまでここにいたら、どうなっていたことやら。


 シリウスだけでもここまで甘々なのだから、カティも加わったら二倍どころか、二乗になりそうな気がしてなりませんよ、俺。


 そして実際にそうなったら──。


「う、うぅ、シリウスちゃんはサラ様の孫娘で、サラ様はシリウスちゃんのお婆様。となるとカティちゃんは──うっ」


「……大丈夫、ティアリカ?」


「気をしっかりと保ってください、ティアリカ殿」


「大丈夫。ふふふ、手前はまだまだ大丈夫でございますよ、ふふふ」


 大丈夫と笑いながらもティアリカの顏は青い。


 無理もないよね。なにせシリウスとサラ様の関係を知ってしまったんだから。


 カティのお姉ちゃんであるシリウスは、ひいてはティアリカの義理の娘でもある。


 その義理の娘の血の繋がらない祖母がサラ様だった、なんて言われれば、普通はこうなるよね。


 むしろサラ様との関係を知ってもなお、平然としていたレアがおかしいのかもしれないけれど。


 というか、堂々とサラ様に喧嘩を売っていたもんね、レアってば。


 うちのお嫁様の胆力のすごさはいったいどういうことなんでしょうね。


 まぁ、ティアリカも無事に嫁となったのだから、いずれはこの状況にも慣れてくれると俺は思うのだけど。


「……慣れろとか無理に決まっていますよ。そもそもサラ様ですよ? 母神様の右腕とされる、あのサラ様が祖母なんて言われたら、誰だってこうなりますよ。そしてそれが」


「あら、もちろん、いずれカティちゃんにも会いに行くからね? シリウスちゃんの妹であれば、私の孫娘ということだもの。ふふふ、早く会ってみたいわ」


「は、ははは、お、お待ちしております。うっぷ」


 ティアリカの不安をあえて煽るサラ様。


 サラ様ってば、わりと意地悪というか、悪戯好きだから、真面目なティアリカはいい標的なんだろうね。


 ……強く生きてほしいね、ティアリカには。


「……それでサラ様。本日はいったいどういうご用件なのですか?」


 やれやれと肩を竦めたエレーンがため息混じりに口を開いた。サラ様は「本当に堅物ねぇ」とエレーンを見て逆にため息を吐いていた。


 いや、エレーンが堅物とかありえないと思うんだけど? 


 だって変態オブ変態ですよ、この天使は。それが堅物とか、笑えないジョークにしか思えないですね、はい。


「だそうよ、エレーン。……あなたもそろそろ仮面を取れば、そんな不名誉なことを言われなくても済むというのに。そろそろいいんじゃないの?」


「……いくらサラ様のお言葉でも、この面を取ることはできませぬ」


「そういうところが堅物なのよ、あなたは」


 サラ様はまた呆れているようだった。


 けれど言われた意味をよく理解できないんだけど。


 エレーンが仮面を取ったら、変態天使とは言われなくなるというのは、どういうことなんだろう?


  そしてその仮面を取りたがらないということもよくわからないな。


 サラ様が外せと言われても決して外さない。


 エレーンが言ったのはそういうことだった。


 守護天使長であるサラ様が言っても外さない。


 それがどういうことなのかは俺にはわからない。


 でもエレーンの仮面の下の素顔にはなにかしらの秘密があることはわかったよ。


 いままではあえて気にしていなかったけれど、サラ様が言っても外さないとまで言いきったことで、急に気になってきたな。


 でも本人が拒否していることを、無理やりするのは憚れるね。いつかは見せてほしいものだよ。


「さて、エレーンの言葉を借りますが、本日のご用件はどういったことなのでしょうか、サラ様」


「私には用事はないわ。ただシリウスちゃんに会いに来ただけだもの。でも用事はあるの。私以外の方が、だけども」


「それって」


「それよりもジズ。試しは終わったのでしょう? であれば、証を」


「承知しております。妹ちゃん、手を」


 ジズ様に促されるまま手を差し出すと、ジズ様は俺の手の甲をそっと撫でながら、詠唱を始めた。


「我が名はジズ。風の神獣なり。この者スズキカレンは我が試練を乗り越えし者。その健闘を我は称える。大いなる母よ。母に与えられし我が力。その一端をこの者にいま与えよう。我は風の神獣。その祝福の証をいまここに」


 詠唱が終わるとバハムート様とガルーダ様の時同様に強い光が俺の視界を覆っていった。そして──。


「ひさしぶりね、香恋」


 ──例の真っ白な空間の中で、久しぶりの母さんの声が聞こえてきたんだ。

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