Act8-30 ド級のシスコンな神獣様
本日二話目で、シスコン注意報です←
「清風殿」のふもとには緑色の髪をした、穏やかそうな女性が立っていた。
身に付けているのは、緑を貴重としたドレスと首筋にかけられている薄緑色のヴェール
ドレスは所々に入っている青い模様がアクセントになっていたし、ヴェールからうっすらと見える肌は透き通っているかのように、とてもきれいだった。
深窓の令嬢というのはこういう人を言うんだろうなと思わせるほどに、その女性はとてもきれいだった。
うん。それ自体は問題ない。
問題なのはだ──。
「うふふ、かわいいですねぇ~。まさかこんなにも母神様そっくりな妹ができるなんて考えてもいませんでした」
──その女性により、現在俺が拉致られているということである。
なんでそうなったのかは、俺にもわからない。
「清風殿」のある「世界樹」のふもとに着いたときには、なぜかいたこの女性。
お待ちしていましたと言うからには、ここの巫女様かなと思ったときには──。
「い・も・う・と・ちゃーん!」
──その女性に「妹ちゃん」と呼ばれてハグされていた俺。
レアやサラさんほどではなかったけど、かなりのブツでした。
いや、そうじゃない。それ自体はどうでもいいんだ。
問題なのは、なぜに俺はハグされているかということなのだから。
「あー、かわいいなぁ。ぎゅーとしたら、いい匂いするし。お肌すべすべで気持ちよくて、髪はすごくさらさらだし。うん、とってもかわいいね、妹ちゃんは」
女性はとても幸せそうに俺を抱き締めていた。
なんだか嫁ズと同じ目を、目の中にハートマークが浮かんでいますし。
……なんだかシリウスがとても冷たい目で俺を見ているんだけど。
妙な勘違いをされているように思えてならない。
俺はこの女性を知らんよ? だから浮気をしていたとか思わないで欲しいな。
いや、もう女性というのはやめよう。
「この人」は声であれば知っている。
最初はわからなかったけど、いまならわかるよ。
「この人」が誰なのかがね。
……本当に同一人物なのかと思わなくもないけれど、状況を踏まえるとそうとしか思えないんだよね。
「あ、あの、ジズ様で合って──」
「お・ね・え・ちゃ・ん」
ニコニコと笑いながら、よくわからんことを言われてしまった。
えっと、誰が誰のお姉ちゃんなんでしょうね? 俺にはいまいち意味がわからない。
「で、ですから、あなたはジズ様で──」
「お・ね・え・ちゃ・ん。でしょう?」
相変わらずニコニコと笑われているけれど、徐々に目が剣呑な光を宿し始めたような?
いやいや、まさかね。
話を聞いてもらおうとしているだけなのに、いきなり怒り出すとかそんなことをするわけが──。
「だからですね。話を聞いてくださると助かるのですが。あなたが風の神獣であるジズ様で──」
「むぅ。お姉ちゃんでしょう? ちゃんと呼びなさい、妹ちゃん!」
そう言ってなぜか俺の頬を掴まれるジズ様。俺の話を聞いていないわけではないだろうし、何度もジズ様と言っているのに、否定をしていないということは、やはりこの人が「清風殿」の主である神獣「風のジズ様」で合っていると思うんだけど、どういうわけか、「お姉ちゃん」呼びを強要してくるんですけど。
「お姉ちゃん」と呼ぶように強要してくるのは意味がわからないけれど、母さんが産んだ存在という意味合いであれば、俺はこの人の妹にあたるというのはわかるんだ。
でもそれでなぜ「お姉ちゃん」と呼ばれたがるのかがわかりません。
そしてなんで俺は「妹ちゃん」と呼ばれにゃならんのだろうね。
とはいえ、いまのままだと平行線であることは明らかだ。となれば、俺が折れるしかないかな。
……なんでこの歳になって「お姉ちゃん」なんて言わにゃならんのかはわからないけれども。
「……えっと、ジズお姉ちゃんで合っておられますか?」
俺がそう呼んだ瞬間、ジズ様の目がきらりと輝いた。これでようやく話が進むと思ったのだけど──。
「か」
「か?」
「かわいいよぉぉぉぉぉーっ! 私をお姉ちゃんと呼ぶ妹ちゃん、本当にかわいいよぉぉぉぉぉ!」
──話が進むどころか、ジズ様の理性がぶっ飛んだ。そこから流れるように頬ずりからのハグをされてしまう。
……いったいなにがジズ様の琴線に触れたのかはわからない。
わからないが、ジズ様が暴走してしまった以上は、いまから話を聞くことができないということだけはわかっていた。
「はぁはぁ、かわいいよ。かわいくてたまらないよ。ああ、次は。次はね。お、お姉ちゃんのお嫁さんになりたいって言ってほしいな。いいよね? 言ってくれるよね、妹ちゃん!?」
目を血走らせながら叫ぶジズ様。そんなジズ様の姿に俺が心の底から恐怖したのは言うまでもない。
そうして俺は四人目の神獣であるジズ様と想像を絶した出会いを果たしたんだ。
神獣にまともな人がいるといつから思って(ry
 




