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Act8-18 態度で示す反省

 朝から散々な目に遭わされてしまったよ。 


 まさか朝から全力疾走をさせられるはめになるとは。


 おかげで詰め所に着いたときには、汗だくでしたよ。


 衛兵の先輩方からは奇異なものを見る目で見られてしまったし。


 でも気持ちはよくわかります。


 俺が同じ立場であれば、きっとそういう目で見るだろうし。


 そうして初仕事からある意味注目を浴びることになった俺だけど、いまは昼休みになり、こうして家に戻っていた。


 食卓には、ティアリカさんとあのいけ好かない女が用意したという昼食が所せましに並べられていた。カティはティアリカさんの膝の上で尻尾をフルスロットルで振っていましたね。


「わふぅ! ごはん、ごはん、ごっはっん!」


 リズミカルに「ごはん」を連呼するカティは、とても愛らしかった。そんなカティの姿に食卓を囲む全員が頬を緩ませていたよ。


「わぅ。カティ、お行儀が悪いの。パパが「いただきます」をするまで、じっとしているの」


 でもシリウスだけはカティを諌めていた。さすがはお姉ちゃん、と言いたいところだったけれど、俺は知っている。


 というか見えていた。シリウスの尻尾もまたフルスロットルに振られていたことを。


 ……お姉ちゃんの自覚を持ち始めたみたいだけど、やっぱりシリウスはシリウスだなぁと思う瞬間だった。

「こほん。それでは、いただきます!」


 娘ふたりの姿になごみつつ、俺は手を合わせてお辞儀をした。そんな俺に合せて、みんなも同じようにして手を合わせた。そうして昼食は始まった。


 ちなみに今日のメニューは冷凍保存してあったバンマーの肉の薄切りを甘辛いタレで焼いたものを、ご飯で巻いた肉巻きおにぎりっぽいものとビッククラブの身を使った海鮮あんかけとご飯をパリパリに焼いたおこげご飯。そしてクルッポの卵を使った自家製プリンだった。


「シリウス様は海鮮ものがお好きだと聞きましたので、腕を振るわせていただきました」


 いけ好かない女は穏やかに笑っていた。いったいどこでそんな話を聞いたのやらと思いつつも、あの女が作った海鮮あんかけとおこげは、とても美味しかった。


 それこそシリウスが夢中になって食べてしまうほどに。


 ちなみにカティはティアリカさんが作ったという肉巻きおにぎりをもりもりと食べていた。口元に甘辛のたれをべったりと付けながらね。


 愛娘たちの食欲旺盛な姿に俺が頬を綻ばせたのは言うまでもない。


 そうして和やかな食事が終わると──。


「さて、お説教のお時間ですよ?」


 ──レアたちによるお説教の時間が始まりました。


 いや、わかるよ? わかるんだよ? レアたちが臨戦態勢になるのもわかるんだよ?


 でもさぁ、ティアリカさんは俺の嫁じゃないんだから、別にそこまで怒ることもないと思うんだよね。あんなの社交辞令と思えば──。


「浮気者には三枚下ろしなのですよ?」


 ──うん。嫁ズの言いたいことももっともだよね。


 いくら気持ちが通じ合っていても、ああいうのはダメだよね?


 うん。今回は全面的に──。


「今回も、の間違いですよぉ~?」


 ──あ、はい。今回も俺が全面的に悪うございました。


 なんか本当に、ね?


 毎回お嫁様方を不安にさせることばかりして申し訳がないです、はい。本当に反省を──。


「言葉だけの反省など無意味ですよ? 態度で示してくださいませ、「旦那様」」


 ──態度で示す反省ってどうすりゃいいんでしょうか?


「「「自分で考えてください」」」


「あ、はい」


 うん。そりゃそうだよね?


 態度で示す反省なんだから、自分で考えなきゃダメだよね?


 でも本当にどうすればいいんでしょうね。


 どうしたらお嫁様方の怒りのボルテージを下げることができるんでしょうか? 香恋ちゃん、マジわからん。


 わからんけれど、そんなことを言ってもうちのお嫁様方が納得してくれるわけもない。


 ……どうしていつも詰まされているんだろうね、俺ってば。


「わぅ。パパは本当にどうしようもないの」


「わふぅ? ぱぱはどうしようもないの?」


 ぐさりと愛娘たちの何気ない一言が胸を突き刺さる。パパ泣きたいよ。


「泣いている暇があったら、態度で示してくださいね?」


「そうなのです。態度で示すのですよ」


「ですねぇ~。そこからですよぉ~」


 でもそんな俺をまるっと無視してお嫁様方は笑っています。その笑顔が半端なく怖いよ。


 でもなにを言っても通じない。俺にできるのはどうすれば態度で反省を示せるのかを考えることだけだった。


 でも結局昼休み中に考え着くことはできず、仕事終わりまでの宿題とされてしまったんだ。

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