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Act8-6 カティアまま

 本日十九話目です。

 転移した先には、やはり大樹があった。


 でも「グラトニー」ほどに大きくはない。頂上は雲よりもだいぶ低い。


 それでもざっと見た感じスカイツリーよりも高そうだ。


「これも世界樹なんですか?」


 陛下方に尋ねると、それぞれに頷いてくれた。


「うむ。これも世界樹じゃな。もっとも「グラトニー」のものよりもだいぶ小振りではあるがの」


 デウスさんが手を翳しながら世界樹を見上げている。


 下から見上げても世界樹の全容までは見渡すことができない。


 それくらいに目の前の世界樹は大きいけど、「グラトニー」の世界樹を見たあとだと、少し拍子抜けする。


 逆に言えば「グラトニー」の世界樹が、それほどに大きいという証拠だった。


 そんな世界樹を見上げていると──。


「わふぅ? あしおとがきこえるの」


 カティがぴこぴこと耳を動かした。


 だが俺の耳には足音なんて聞こえない。それは俺だけじゃなく、シリウスやあのいけ好かない女以外の全員が同じだった。


 ただカティを含めた三人には聞き取れていたようだ。


「ひとつ、ふたつ、みっつ……。ふむ。最低でも十名ほどですかね?」


「わぅ。ひとつだけ馬の足音がするね」


「わふぅ? いっこだけちがうのがおうまさんなの?」


「わぅ。そうだよ、これが馬の足音だよ、カティ」


「わふぅ、おうまさんのあしおとって、ふしぎなおとなの」


「ふふふ、そうですね。馬には蹄というものがありまして、それがこの音なんですよ」


「ひづめ?」


「ええ。人で言うと爪に当たる部分ですね。それが地面に触れると、ぱこんという音になりまして」


「わふぅ、そうなんだ」


 ……なんだろう? このなんとも言えない寂しさは。


 あのいけ好かない女さんさぁ?


 なんでそんなにカティにすり寄っているわけですか?


 なに?


 俺からぱぱの座を奪おうってか!?


 よろしい、戦争だ! スケコマシには相応の罰を──。


「パパ、盛大なブーメランになっているよ?」


 何気ない愛娘の言葉が胸を突き刺す。


「ぱ、パパはスケコマシじゃないよ!? そもそも意味を理解して──」


「ぱぱみたいに、おんなのひとをいっぱいはべらしているひと、だよね?」


「カティ。いつのまにそんな言葉を知ったの?」


「わふぅん。ひみつなの!」


 えっへんと胸を張るカティ。ヤバいくらいにかわいいね。うちの嫁ズも一斉に音を立てて口元を押さえているし。


 シリウスも悔しそうな顔で「く、かわいいの」と言って、カティの頭を撫でてあげているし。


 シリウスに頭を撫でられてカティは心地よさそうに尻尾をぱたぱたと振っている。


 ちなみに現在カティはあのいけ好かない女に抱っこされていた。いやそれどころか──。


「カティアまま、カティアまま」


「はいはい、なんでしょう?」


「わふぅん。よんだだけなの!」


「ふふふ、おいたはダメですよ、カティちゃん」


「わふぅ。カティ、いけない子?」


「ふふふ、まさか。カティちゃんはとってもいい子ですよ? ただあまりおいたはしちゃダメですよ?」


「わふぅん。わかったの!」


 ──気づいたときには、「カティアまま」とかあの女を呼んでいたよ!


 なんなんだよ、あの女は!?


 どうしてこうも俺の癪に障ることばかりしてくれやがりますかね!?


 百億歩譲って抱っこは許そう!


 だが、なんだよ、「カティアまま」って!?


 あの女、俺からカティを奪い取ろうってか!?


 やはりここは戦争しか──。


「カティアままをいじめちゃめだよ、ぱぱ」


 カティが頬を膨らまして俺を見ていた。


 ……まぁあくまでも俺の方をなんだけど。やはりあらぬ方を見ているし。


 それでも俺に対して言っていることはわかったよ。


「で、でもカティ。その女は」


「むぅ。女じゃないの。カティアままなの!」


「だ、だけど」


「……カティアままにいじわるするぱぱ、カティきらい」


 頬を膨らまして顔を背けるカティ。その言葉に俺は崩れ落ちた。それと同時に──。


「……これはどういうことですかな? レヴィア様?」


 ──なんか見覚えのあるダンディーなエルフのおじさまが十人ほどの兵士を連れて現れたんだ。

 続きは十九時になります。

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