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Act8-5 「七王」たちの怒り

 本日十八話目です。

「……はっ、ずいぶんと面白い妄言を吐く小物じゃのう」


 デウスさんが笑っていた。でも笑いながらもその目は鋭かった。


「そうだな。ああいう大言を、平然と言い放てる胆力は目を見張れる」


 マモンさんはため息を吐きつつも、アホエルフを見つめている。その目はやはり鋭かった。


「……簒奪したばかりだから、ちょっと調子に乗っちゃっているんだろうね。まぁ、若いうちにはよくあることだよね」


 ベルフェさんも笑っていた。笑っているけれど、その目は怪しい光を宿していた。


「……そうね。いまは立ったばかりだからこそ、ああして自分の強大さをアピールしているんでしょう。立ったばかりの若い王には、ああいうことは必要だからね。そういう意味では、しっかりと自分の立ち位置を理解していると言えなくもない」


 それまで俺の胸の中で泣いていたレアが、ゆっくりと顔をあげる。


 紅く腫らした目元が痛々しい。


 でもその痛々しささえも凌駕するほどにいまのレアからは怒りを感じられた。


 それはレアだけじゃなく、マモンさんたちにも同じことが言える。


「でも、いまそれは言うことじゃない。いえ、私たちに聞かせるべきではなかった。それだけははっきりと言いきれる。だって、あの坊やの行く末はいまこのときを持って決まったのだからね」


 レアが笑った。笑っている。笑っているのだけど、その笑みはただただ恐ろしい。本当にレアがブチ切れてしまっているのがはっきりとわかる笑顔だった。


「さて、そうなるとどうするかの? おそらくはプライドめもまっすぐにこちらへと向かって来ているであろう。となればじゃ、あやつとも早めに合流したいところじゃの。というか、そうせんと妾たちの出番さえもあれがすべて奪い取ってしまうからの」


 レアの言葉にデウスさんが笑った。たしかにプライドさんのことだ。いまの宣戦布告を聞いたら、単騎で「グラトニー」に突っ込んでいきそうだな。


 いくらプライドさんでも「グラトニー」に単騎で特攻なんてしないとは思うんだけどね。あの人であれば、単騎で特攻しても、あのアホエルフをしばき倒せるとは思うけれども。


 でも相手はグラトニーさんを討ち果たした相手だ。どういう隠し玉があるかもわからないいま、プライドさんを単騎で特攻はさせられない。


 ここはプライドさんとの合流を目指すべきだ。とはいえ、そのプライドさん自身がどこにいるのかはまったくわからないんだけど。


「……とりあえずは移動しようよ。いつまであの坊やの声を聞いているのは、そろそろ不快だ」


「だな。とりあえずは声が聞こえないところに移動したいな。とはいえ、あれの性格では、「蠅の王国」中に聞こえるようにしている可能性は高い。一度「竜の王国」に退くか? 国境付近であれば、プライドと合流もしやすいと思うが」


「そうね。ここまで来てなんではあるけれど、いまは退きましょう。ただし撤退ではない。あれを葬るための情報を得に行きましょう」


 レアを含めた四人の「七王」陛下方の意見が揃った。一度退くべきだった。まだなにもわかっていない状態で、「グラトニー」に特攻をしかけるわけにはいかない。


 めちゃくちゃ悔しいけれど、いまは退くことも重要だった。


「ふむ。そうなると「竜の王国」との国境付近にまで退くかの。たしかあのあたりにも街があったはずであろう?」


「ええ、そこそこの大きなの街がある。あそこの領主とはちょっとした知り合いだから、情報を得やすいとは思う」


「では決まりじゃな。みなまた近寄ってくれ」


 デウスさんが手招きをする。全員がデウスさんのそばによると、デウスさんの詠唱が始まり、大きな魔法陣が地面に描かれた。魔法陣の光を眺めつつ、俺はあのアホエルフをじっと見つめていた。


「……憐れな奴だな」


 どう考えても言うべきではないことを言ってしまったあのエルフは、したくないが同情してしまう。なにせ「七王」の残りすべてに喧嘩を売ったんだ。


 ただで済むわけがない。それとも残りすべての「七王」に喧嘩を売っても勝てるだけのなにかがあるというのか。


 わからない。いまはなにもわからない。でも、あいつの運命は決まってしまった。それを憐れに思いながら、俺たちは「グラトニー」の周辺から転移したんだ。

 続きは十八時になります。

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