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Act8-3 クーデター

 本日十六話目です。

 ちょっとグロイ部分があるので、ご注意ください。

 不意に聞こえてきた大きな声は、「グラトニー」の頂上あたりから聞こえてきた。


 その声に「グラトニー」の街が騒ぎ出したのが、ここからでもわかった。


 俺たちがいまいる丘と「グラトニー」は数百メートルほど離れていた。それなりに離れているはずなのに、その声ははっきりと聞こえてきていた。


「これは?」


「風魔法のひとつ「遠声」ですね。その名の通り、遠くまで声を届かせることができる魔法です。もっともこの通り、遠くまで声を届かせることはできるのですが、届かせられても機密性は皆無になってしまう、なんとも残念な魔法ですね」


「だが、全体の指示を出すにはちょうどいいものだ。特に進軍しているときにはちょうどいい。すべての兵に指揮官の言葉を直接伝えられるからな。もっとも機密的なことは話せないが、それでも伝令を走らせるよりかは手っ取り早い」


「まぁ、そこそこ使い勝手のある魔法というところじゃの。しかしそれを使っているということは」


「……グラトニーになにかがあった可能性は高いね。そもそもいま聞こえてきた声は、グラトニーのものじゃないもの。かと言ってボクらも知らない声だね。あ、いや、知っているような? う~ん?」


 ベルフェさんは途中で言葉を覆して頭を捻っていた。そんなベルフェさんに合わせるかのように、レアたちもまた「そういえば」と言っている。


 なにがあったのかはわからないけれど、グラトニーさんを討ったと相手が言ったということは、これはたぶんクーデターなんだと思う。


 それもグラトニーさん周辺の地位の人しか血を流させないクーデター。ある意味では、ほぼ完ぺきなクーデターとも言える。


 でなければ「グラトニー」から少し離れたここからでも、戦場になった痕跡は見えるはずなのに、そういったものは一切見えない。


 クーデターが起きれば、どうやって戦闘は起こるものだ。


 その戦闘の形跡がない。まぁ、数百メートルは離れているから見えづらいというのもあるだろうけれど、これだけ見晴らしのいいとなると、風もそれなりには吹く。


 その吹き抜ける風には戦闘の名残は一切乗っていない。


 つまり戦闘は一切行われずに、グラトニーさんだけを殺したということになる。


 それはどう考えても完全に国の中枢を抑えこむことができたということを、ほぼ完ぺきなクーデターが起こったという証拠だった。


「蠅の王国」は前々からきな臭いことが起きているという話は聞いていた。でも戦争が起きているという話は聞いたことがない。


 ということは、これは周到に練られたクーデターだったということだ。


 グラトニーさんもきな臭さを感じつつも、そのことに気付けなかった。気付けなかったまま、殺されたということなのだろう。


「……とにかく、いまのままでは埒があかない。この声の主がなにを言うのかを待ちましょう」


 いま俺たちが持っている情報はあまりにも少なすぎる。であれば、情報を得るためにもこの声の主がなにを言おうとしているのかを聞くのはありだ。


 少なくともデウスさんはグラトニーさんが負けたということを聞いていたんだ。


 つまりは今回も似たようなことをこの声の主は言おうとしているんだろうな。


 考えられるとすれば。いや、俺であればやることはあった。それは──。


「これより諸君らが頑なに信じなかったことを、暴君「蠅王グラトニー」の死をお見せしよう」


 声の主はとても楽しそうに言った。その言葉にレアたちから静かな殺意が立ち込めていくけれど、誰もそれを見ないようにして声の主の行動を待った。


「これが証拠だ。暴君「蠅王グラトニー」の首である!」


 不意に空に浮かび上がったのは、デウスさんが「狼王祭」でも空に映し出したモニターを作り出す魔法だ。


 その魔法に映し出されたのは、ひとりのエルフと、卑しい笑みを浮かべたやけに偉そうなエルフと、まぶたを閉じ、首から下を失くしたグラトニーさんの姿だった。

 続きは十六時になります。

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