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Act8-2 世界樹と街

 本日十五話目です。

 これより香恋視点となります。

 デウスさんによって送ってもらった「蠅の王国」の首都「グラトニー」は不思議な街だった。


 俺たちはちょうど「グラトニー」を見渡せる丘の上に転移していた。


 でも転移してすぐにそこが「グラトニー」だとは思えなかった。


 なにせ「グラトニー」は、とても高い大樹だった。


 正確には大樹を利用して作られた街だった。ファンタジーによくあるエルフの街をそっくりそのまま連想させてくれる。


 有翼人たちの街は岩壁をくり貫いて作られた街というイメージだったけれど、実際はそんな街なんてないと言われたのに、エルフの街は想像通りのものというのはさすがに予想していなかった。


 エルフの街も想定外の街になっているんだろうなと思っていただけあって、これはちょっと想定外だった。


「いやぁ、大きな木だなぁ」


「グラトニー」を形成する大樹は、天を衝くんじゃないと思うほどに高かった。


 実際大樹の頂上は見えないほどに高い。雲を通り越してしまっている。


 ファンタジーによくある世界樹という大樹があるけれど、その世界樹を連想させるほどに「グラトニー」の大樹はとても高く、そして大きなものだった。


「世界樹ってこういうのを言うのかな?」


 思わず、口にした言葉は、みんなを追いけぼりにしてしまうものだと思っていた。


「あら、よく知っていますね、「旦那様」」


「え?」


「ああ、「グラトニー」は世界樹を利用して作られた街なんだ。というか「グラトニー」だけではないな。「蠅の王国」における主要な街はたいてい世界樹を利用している」


「もっとも世界樹とはひと口に言うても、あまり大きくならぬものもあるし、幹が細いのもある。ここ「グラトニー」ほどの見事な世界樹はほかになかろうな」


「だよねぇ~。あーあ、この景観はどちらかと言うと、「スロウス」の方が合っていると思うんだよね、ボクは。「グラトニー」もさっさと国の場所を取り換えっこしてくれればいいのにさ。そもそもジズ様の土地に棲むべきはボクら有翼の民だと思うんだよね! だってジズ様神鳥様だもんね!」


「「「無茶言うな」」」


 ベルフェさんがなにやら無茶なことを言っているけれど、そんなベルフェさんに「七王」陛下方が一斉に突っ込んだ。


 でも、うん。無茶だと思うよ? 


 そもそも国の場所を取り換えっことか無茶にもほどがあるっての。


 例えば、「獅子の王国」と「蛇の王国」の場所を取り換えたとしたらひどいことになると思うんだ。


「蛇の王国」は人魚等の海に適した種族たちが棲んでいるのに、それがいきなり海は海でもマグマの海の「獅子の王国」に移住したら、下手したら「蛇の王国」の住人が死に絶えそうだ。


 かといって「獅子の王国」側も困るだろうね。「獅子の王国」は様々な獣人が棲む国だ。


 でもたいていの種族はマグマの熱に耐えられるように体を鍛えている。


 なのに潮風が吹く「蛇の王国」に向かったら、対応できなくなりそうだ。


 そもそも海を見たことがない人たちばかりだろうから、当然カナヅチさんばっかりだろう。


 そして「蛇の王国」の国土はほとんどが海だ。余計に生きづらいだろうね。


 これは「鬼の王国」と「狼の王国」でも同じだろうね。どちらの国の住人に適した土地じゃない。それは「翼の王国」と「蠅の王国」でも同じはずだ。


 だというのに、国の場所を取り換えるとか、無茶以外の何者でもないね。


 あまりのベルフェさんのフリーダムな発言にマモンさんたちだけじゃなく、プーレたちも言葉を失っていた。


「わふぅ。おくにって、とりかえっこできるんだ」


 ただカティだけは、ベルフェさんの言葉を感心どころか、信じてしまったよ。光のない瞳が、きらきらとしているもの。


「……いいかい、カティ。あのお姉さんの言うことを信じてはいけません」


「わふぅ? なんで?」


「なんでもだよ。いいね? ぱぱとの約束です」


「わふぅん。ぱぱが言うならわかったの」


 カティが頷いてくれた。これでベルフェさんがおバカなことを言っても問題はなくなったよ。


 本当に面倒なことをしてくれる王様だな。そう思いながらベルフェさんを睨もうとした。そのときだった。


「「グラトニー」住民に告ぐ!」


 不意に「グラトニー」の頂上あたりから大きな声が聞こえてきたんだ。

 続きは十五時になります。

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