Act7-ex-7 天の怒り
本日十三話目です。
信じられないことが起こるもんだ。
まさかグラトニーが負けるなんてね。
彼が敗北を喫するなんて、数千年ぶりじゃないのかな?
そう、彼は決して無敵というわけじゃない。
むしろ、数千前はよく負けていた。あくまでもボクらが子供だった頃の話ではあるけど。
でも子供の頃のことであっても、負けは負けだ。
ぶっちゃけると彼はボクらの中で一番負けていたんじゃないかな?
特にヴィヴィには一回も勝てたことはなかったはずだ。
……まぁ、ヴィヴィに勝てなかったのは、単純にヴィヴィに毎回見とれていて勝てなかったってだけなんだろうけども。
カレンちゃんにも言えることだけど、あんなタチの悪い狂戦士のどこがいいんだろうね?
魔法の腕はボクらの中で最強のくせして、実態は肉弾戦メインの狂戦士とか、意味がわからないよ。
……まぁ、ヴィヴィはとびっきりの美人さんだし、スタイルだって抜群だから見とれるのも無理はないかな?
一目惚れしたら、あばたもえくぼになってしまうんだろうね、きっと。
実際、グラトニーはヴィヴィに一目惚れしたみたいだったし。
でもヴィヴィにとっては、グラトニーは戦友というだけ。それもヴィヴィ自身はグラトニーに思われていることもわかっていない。
まぁ、ヴィヴィへの気持ちにけじめをつけて、グラトニーは結婚しちゃっているからね。
ヴィヴィは余計にグラトニーの気持ちに気づけないんだろうなぁ。
まぁ、どっちもどっちとボクなら言うけどさ。
でもそのグラトニーが負けるなんてね。
いったいなにがあったのかな?
あのグラトニーが負けるなんて、いまのグラトニーが負けるなんて、ボクには想像できないよ。いったい「蠅の王国」ではなにが起こっているんだろう?
ああ、頭の中がぐちゃぐちゃだよ、まったく!
ぐちゃぐちゃになっていても、ボクがするべきことは決まっている。いや、ボクの行動原理なんていつも同じだもの。
そう、報復だ。
相手が誰であろうと、ボクの仲間に手を出した。それは許されないことだ。いや許しちゃいけないことだ。そう、彼が、ベルセリオスが教えてくれたんだ。
「いたずらに力を振るうだけじゃ意味がないよ。その力をどういう風に揮うかが大切なんだ。その点、いまの君はてんでダメだ。なにも考えなさすぎている。もう少し考えろ。その無駄に大きな力はなんのためにある? 君が思うままに力を揮うためか? 癇癪を起したり、暇つぶしだったり、と意味もなく使うためのものなのか?」
彼は当時のボクをぼこぼこにしてくれた。ボクよりも強い奴なんかいない。そう思っていたボクにとって、彼はまるで突如として現れた壁だった。
それもただの壁ではなく、胸を痛ませてくれる壁だった。当時のボクはなにも考えていなかった。そんなボクにも彼の言葉はただただ響いた。
あれからどれだけの日々が流れただろう?
ボクは無暗に力を揮わなくなった。
ボクが力を揮うのは、ボクが守りたいと思った者たちのためだけだ。
そしてその守りたいと思った者たちの中でも、当時の仲間たちに危害を加えるのであれば、それはなんであろうとボクの敵だった。
敵はすべて滅ぼす。天よりの怒りの一撃はすべてこのときのためだけに鍛え続けてきた。
「誰であろうと、ボクの仲間を傷付けるのであれば、容赦はしない」
さぁ、行こう。ボクの仲間を手に掛けた愚か者を葬るために。戦場に天の怒りをいま一度轟かせよう。
これにて第七章は終わりです。
次回十三時更新より第八章となります。




